第2話 彼は彼女

 俺はあらたが女ーーーえーっと思いながら、口走ってしまう

   「スカート!」

   「えっ」

新か反応する、再び母が俺の頭を殴り

   「こんなバカは放っておいて食事にしましょ、新ちゃんまだでしょ。」

   「叔母おばさま、手伝います。」

と新が母について中に入って行く。

 居間のテーブルの上に寿司が並べられた。

 母が持ち帰り寿司を買ってきたらしい。

 俺は新の件が気になって寿司の味が分からない、う~ん、もったいない。

 食事が終わると母が切り出す

   「たまる、お前どうしたんだい?新ちゃんのことわすれたの。」

俺はどう切り出すか悩み

   「子供の頃、ズボン履いていたよね。」

   「はい、よく履いていたわ。」

新は答える、引き続き俺は

   「かあさん、いとこに新が二人いるんじゃない?」

   「どこまで馬鹿なんだい、さては新ちゃんのこと男と思ってたね。」

母に図星ずぼしを言い当てられる、俺は思わず

   「ずーと、男と思ってたんだ、今さら女なんて言われてもーーー」

新が突然、立ち上がる。

   「女って証明すればいいんでしょ!」

大声で言うと服を脱ごうとする、母があわてて止めながら言う

   「早く謝りなさい!なんてバカなこというの!」

俺は女子の裸に興味がないわけではないが、ここでストリップショーをされるのはまずい

   「ごめん、新が女ということを疑っている訳じゃない、ただ急なことで心の整

    理がつかないんだ。」

あやまる、新はストリップショーをやめ

   「どういうこと?男と思っていたの?ひどい。」

今度は泣き始めた。

 俺は母ににらまれ、完全に悪者だ、できるのならここから逃げ出したい。

 母が新をなぐさめる、しばらくして、新が泣き止む。

 それからしばらく沈黙が続く、俺にとって針のむしろだ、何とかしたいが何も思いつかない。

 そして、新はぼそっと言う

   「たまる、約束おぼえている?」

約束!えっ、え~と、俺は頭を必死に回転させて思い出そうとするが、何の

記憶もない

何てことしてくれたんだーーー子供の俺

俺は覚悟を決める

   「記憶にごさいません。」

土下座どげざをする、新の反応が怖い、命だけはありますように、普段、信じていない神様にお願いする。

 新はうつむきつぶやく

   「私がどんな思いで・・・」

そして、顔を上げると怒っていた、しっかりと

   「なんで忘れるの~」

   「子供の時のことですから」

俺は小声で言い訳をする、母をチラッと見るが新の味方のようだ。

   「約束は約束でしょ!」

   「はい、おしゃる通りです。」

   「私が何で瀧脇高校たきわきこうこう受けたと思ってるの?」

   「たまるが最初、鳴滝高校なるたきこうこうを受けるて言ってた時、家族に反対されて諦めた

    わ、でも瀧脇高校ならって家族も渋々認めてくれたの。」

新は度々母と連絡を取って、俺の情報を得ていたらしい。

   「約束・・・ずーっと一緒にいるって、私は瀧脇高校に通学して、たまると同

    居して、約束守ったわ!」

   「今度は、たまるに約束守ってもらうわ。」

俺は、美女と一緒ラッキーと思ってしまったが、静香のことを思い出す

   「今、彼女がいるんです。ごめんなさい。」

再び土下座をする、そおーっと新の顔を見ると目がすわっている

   「何ていう子、名前。」

俺は新に威圧され抵抗できない

   「若宮静香わかみやしずか

   「その子も瀧脇高校なんでしょ。」

   「はい」

   「分かれてもらいます。」

俺は最後の勇気を振り絞って

   「それはできません。」

そこで母の笑い声が割って入る

   「はははぁーーーこの子にそんな度胸があったなんて、彼女、おかしいわー」

   「叔母さま。」

新が不満げに言う

   「新ちゃんにとって彼女なんてこれまでに比べたら大した障害じゃないだ

    ろ。」

   「叔母さまは私の味方ですよね。」

   「そりゃ、知らない子より、新ちゃんの方が良いに決まっているよ。」

俺の知らないところで新は何と戦ってきたのかと思う。

 午後は新の部屋の片づけの手伝いをすることになった。

 もちろん俺がそそうをしないように母の監視かんし付きだ。


 夜、俺の部屋で、親友の克樹かつきに電話する

   「新が女って知っていたか?」

   「なんだそれ、男に決まっているだろ。」

克樹は答える

   「スカート履いていた。」

   「なっ、おかまか?」

   「美人だ。」

   「う~ん、男の子ってやつだな。」

俺は少しイラっとして

   「女だったって言っている」

   「俺たち勘違いしてたのか、信じられない」

俺は忠告する

   「その手の言葉、禁句だから、本人の前で言うなよ。」

俺は質問する

   「俺、新と何か約束してたか?」

   「えーっと、新とずっと一緒にいるだったかな。」

克樹も覚えていた、約束は本当のようだ。

   「それより若宮さんどうするんだ、もう学校始まるぞ、いとことはいえ女子と

    同居はまずくないか。」

克樹が心配する

   「事態はもっと深刻だ、新は俺と同じ高校へ行くために瀧脇高校を選んだん

    だ、母さんも一枚かんでいるらしい。」

   「両手に花じゃないか、うらやましい。」

   「代わるか、地獄だぞ。」

克樹は真面目に話始める

   「逃げ道はないから、すぐに若宮さんに事情を話せ、どちらを選ぶかは、たま

    る次第だな。」

俺は礼を言って電話を切った、そしてベットに仰向けになり気持ちを落ち着かせ頭の中を整理する。

 すると、ドアがノックされ

   「どうぞ」

と言うと新が入ってきた、俺は反射的に部屋の床に正座した、新は俺の前に正座すると

   「昼はごめんなさい、ちょっと言い過ぎたわ、でもたまるのこと思っている

    し、あきらめないから。」

一方的にに言うことを言うと

   「おやすみなさい。」

と言って出て行った、部屋には新の甘酸っぱいような香りが残った。

 俺はしばらく、落ち着けずに苦悶くもんする。


 俺は、死刑台に上るような気持ちで電話をかける。

   「どうしたの、電話で?」

静香が出る、俺は話を切り出す

   「大事な話があるんだ、この前、いとこが同居するって話したよね。」

   「ええ、聞いたわ、もしかしていとこがイケメンで私を取られちゃうと心配に

    なった?」

   「私はたまる以外にはなびきませんから安心して。」

静香が克樹のような反応をするなと思いながら

   「違うんだ、いとこが女だったんだ。」

   「え?」

   「俺が勝手に男だと、勘違いしてたんだ。」

   「それで、美人なの?」

   「うん」

俺はしまったと思ったがもう遅い、静香の声色が変わる

   「へ~、美人なんだ、それでいとこに乗り換えたいと・い・う・こ・と。」

   「違う、違います、静香聞いて、俺には彼女がいるって言ったんだ。」

必死に誤解を解こうとすると静香の声は明るいものに変わり

   「言ってくれたんだー、なら問題ないわね。」

   「いや、俺、昔、一緒にいるって約束したらしいんだ、それでいとこは俺と同

    じ高校へ行くため瀧脇高校を受験し、同居して、一緒に通学するつもり

    だ。」

静香の声のトーンが下がり

   「それどいうこと、ちゃんと断ったんでしょうね。」

   「あきらめてくれなかった。」

俺は正直に言った

   「で、私とはどうするの。」

   「好きです、このまま付き合ってください!」

電話口の向こうから、ため息が聞こえる

   「私、戦う、その子何て名前。」

   「間瀬新ませあらた

   「分かったわ、入学式が楽しみだわ、お休みなさい、たまる。」

   「お休み、静香。」

電話切った後、俺はドッと疲れが出た、それに静香があんな好戦的態度をとるとは思ってもみなかった。






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