02
「ここがローズ学園…」
白い壁に色とりどりのバラが絡まる豪華な正門。
その先には白い石を敷き詰めた並木道が連なり、奥には白亜の城のような学び舎が建つ。
…スチルで見たのとそっくりね。
心の中でリリーは呟いた。
「緊張してるの?リリー」
「それはするわよ」
「知ってる顔触れが多いんだから、大丈夫だよ」
隣に立ったルカがそう笑ってリリーの顔を覗き込む。
「フレッドやロイドだって一緒に入学するんだし」
学園に入学するのは十五歳からとなっているが、あくまでもそれは目安であり、家の都合などで数年遅らせたりする事も珍しくない。
リリー達よりひとつ年上のロイドも、王子のお目付役を兼ねるために一緒に入学する事になっていた。
教えられた教室へ入った視界に淡い花色の色彩が入り、リリーは思わず息を飲んだ。
———いた。
ウェーブがかかったストロベリーブロンドの髪に、海のような青い瞳。
その愛らしい容姿はゲーム『ローズガーデン』のヒロイン、マリア・テイラーそのものだった。
既に席についていたマリアが顔を上げた。
リリーとその後ろのルカを見ると、驚いたようにその瞳を大きく見開き、サッと俯く。
———あら?
今の反応は…。
ふいにある可能性がリリーの頭によぎった瞬間、ドアが開くと教室内の空気が一変した。
「リリー!ルカ!もう来ていたのか!」
相変わらずの王子様スマイル全開のフレデリックに、女生徒達の間から騒めきとため息が溢れ出す。
「…フレデリック殿下。三年間よろしくお願いいたします」
スカートの裾を摘み、淑女の礼を取るとフレデリックの後ろにいたロイドがくっと喉を鳴らすのが聞こえた。
「…何だ、他人行儀だな」
「初日なのですから」
不満顔のフレデリックに意識して優美な笑みを作り、返す。
「ここは礼儀を学ぶ場所なのでしょう?」
「ははっ、リリーらしい」
「さっきまで緊張するとか言っていたのに」
「いやだわルカ、バラさないでよ」
友人達と話をしながらリリーはマリアの様子を伺った。
仲の良さそうな四人の姿をチラチラ見るその青い瞳に困惑の色が浮かんでいるのをリリーは見逃さなかった。
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