06
「子供達だけで遊んできたら?」
王妃の言葉で、四人はテーブルから少し離れた芝生へと送り出された。
「ねえ、リリー」
先を歩いていたフレデリックが振り返る。
「リリーは僕のお嫁さんになるの?」
「えっ?」
「母上がそう言っていたんだけど」
唐突な言葉に瞳を丸くするリリーの目の前に立つと、その顔を覗き込む。
「え、ええと、ごめんなさい私は…」
「嬉しいなあ、可愛い子で」
瞳をキラキラさせながら、フレデリックは後退ろうとするリリーの手を握りしめた。
「リリーは嫌がってるだろ!」
パンッと音を立ててルカはフレデリックの手を振りほどくと、その身体を二人の間に割り込ませた。
「嫌?」
フレデリックは不思議そうに首を傾げた。
「どうして?」
「どうしてって…」
「プッ…あはは!」
ふいに響いた笑い声に振り向くと、ロイドがお腹を抱えながら笑い転げていた。
「フレッドになびかない子なんて…初めて見たよ!他の子は見られるだけで顔を真っ赤にするのに!」
「ロイド」
「顔色一つ変えないなんてすごいなあ———面白いね、君達」
ようやく笑うのを止めると、ロイドはリリーに向いた。
「フレッドはほら、王子様だから。今まで自分が拒否された事がないんだ」
「ああ…はい」
「本当に君はフレッドには興味ないの?」
「興味がないというか…そうね、殿下のお妃になりたいとは思わないわ」
「へえ!本当に面白いね。———だってさ、フレッド。この子は諦めたら?」
きょとんとした顔で会話を聞いていたフレデリックは、ふいにその顔を曇らせた。
「僕の事…嫌いなの?」
「…嫌いじゃないわ、でも…お妃とかそういうのは…」
「リリーを困らせるな」
「どうしても駄目?」
「リリーは駄目だよ!」
フレデリックとルカの応酬にロイドが再び笑い出し、収集がつかなくなりそうだと感じたリリーは決意するように息を吐いた。
「あの、殿下」
リリーを見たフレデリックの瞳を見つめ返して笑顔を向ける。
「お友達になりましょう」
「…友達?」
「ええ、お妃にはなれなくても友達にならなれるわ」
「ふーん。いいんじゃない?フレッド。とりあえずそれで」
「———そのうち気が変わるかもしれないしさ」
ロイドが耳元で囁くと、やや考えるように頭を巡らし、フレデリックは頷いた。
「分かった。じゃあリリー。ルカ。よろしくね」
王子様スマイル全開でフレデリックは手を差し出した。
「僕の事はフレッドと呼んでね」
「ええ、ロイドもよろしく」
「うん」
「…よろしく」
「あら、すっかり仲良くなったみたいね」
「本当に、良かったですわ」
子供達を遠目に眺めながら、母親達は嬉しそうに顔を見合わせた。
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