第3話 金色の魔力

目映い光が収まると、ボクはゆっくりと目を開けた。

そして、わが目を擦ってもう一度見た。


あり得ない?!、そんな馬鹿な!

何故、何故、何故、何故、前世のボクの実家があるんだ?!


兵士A「なんだ、今の輝きは?!」

兵士B「わ、わかんねぇ!魔法か?お、ありゃ、捜してるお嬢様じゃねぇのか?」


「?!み、見つかった!」


茂みを掻き分けて、二人の兵士が此方を覗いている。

もう、だめだ。

でも、死ぬなら夢にまで見た前世の実家の側で死にたい。


ボクは、足を引きずりながら家の門を抜けて、なんとか玄関の扉に手が届くところまで辿りついた。


兵士A「いたぞ、捕まえろ」

兵士B「な、なんだ、この変な屋敷は?」


只今戻りました。

父さん、母さん、了、兄ちゃん、今、帰ったよ。

学校帰りに、道に飛び出した子供が暴走トラックにひかれそうだったから、飛び込んで子供を道から弾き出した。

その時、激しい衝撃と痛みがあって真っ暗になったとこまでが、前世の記憶だった。

たぶん、その時に死んだのだ。

気がついたら、こっちで赤ん坊になってたんだからね。


父さん、母さん、了、また、先に逝くけど許してね。

さようなら、ボクの家族。


ボクは、すぐ目の前に来た兵士達を見ながら、ナイフを振り上げた。

そして、自分の胸に向かってまっすぐ振り下ろした。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



◆カキオストロ伯爵 視点


ある社交場で、ラーセン男爵を名乗る男から借金の依頼を受けた。

私が金貸しをしている事を知っているとは、表の人間ではないのか?

ふむ、私が聞いていたラーセン男爵は、堅実かつ実直な男と聞いていたが、存外噂は宛てにならぬな。

まあいい、また、いつものように借金漬けにして、その資産を根こそぎ奪ってやろう。


それから僅か一年とたたず、ヤツは借金の金利さえ滞るようになった。

そろそろ刈り入れ時か、私はラーセンの資産を確認する為、借金の督促を装いヤツの屋敷を訪れた。


思ったより資産が少ない、ち、外れだったか。

なら、この男から全てを奪うだけだ。


む?!、私の魔道具であるメガネが何かに反応している?

この魔道具は、魔力を持つ人間に反応し、その魔力の特性まで見抜く。


私の本当の仕事は、金貸しではなく奴隷売買だ。

そして奴隷の中でもっとも価値がある奴隷は、❪魔力持ち❫だ。

魔力持ちは、数千人に一人、さらに、魔法を使える者は、1万人に一人、だ。

だが、魔力持ちはそのほとんどが貴族、王族に集中する。

たいていは、その血すじに発現するからだ。

平民にも稀に発現するが、たいていは貴族に囲われる。


しかしこの魔道具、ここ十年反応がなかったが、腐っても貴族というわけか。

どこだ?どこにいる?


「この子達が、私の息子と娘になります。さあ、挨拶を」


「ハンスです、どうぞお見知りおきを」

「ジニーですわ、伯爵様」


ぬう、魔力などまったくない。

デップリと肥えて、いやらしい目つきのガキどもだ。

まったく、父親そっくりだ。


「こちらは、妻のグリアです」

「ほほほ、ご機嫌麗しゅう、伯爵様」


酷い女だ、醜いし無駄に豪華なドレスに宝石をゴテゴテと、あとで全て返してもらおう。

「男爵殿、ご家族はこれで全てですかな?」


「はい?そうですが、何か?」


「いや、特にはない」


「?」


おかしい、魔道具は反応がある。

この屋敷に、魔力持ちがいるのは明らかなのに?!む?

魔道具は、中庭の方から反応している?

「男爵殿、中庭が見たいのだが、構わないだろうか?」


「はあ?、構いませんが、物置小屋しかありませんよ」


「なら、見させていただく」


私は、中庭に直ぐに向かった。

中庭は、なんの変哲もない庭だが、花壇の花はよく整えられていた。

ふむ、こんな見栄えしない中庭でこれだけの花壇を維持するのは、それなりの腕の庭師だろう。


私は、魔力の反応を確認する為に、魔道具を

中庭に向けた。

「な?!!!」


「どうされました?」


く、男爵がボケた顔で、私の視界の邪魔をする!

「どけ、邪魔だ!!」

「は、はい?!」


あり得ない?!

私は、王都でもっとも魔力に優れた王族を、この魔道具で確認している。

そして、魔力の特性は王族は火だ。


魔法の特性は通常、火、水、風、土の4種類だ。

だが、身体強化などの、どの特性にも入らない無属性のものもある。

そしてこの魔道具は、特性を魔力の色で現す。

火▶赤色

水▶青色

風▶緑色

土▶橙色

無属性▶白色


そして、魔力の大きさもある程度、判るようになっている。

その人物の背後に、魔力の大きさによって特性の色の量が見えるのだ。


だが、この魔力量はなんだ?

王族の3倍、いや、これは今、見えているものだけだ?!

しかも、こんな色は見たことも、聞いたこともない。

こんな、金色の魔力なんて?!い、いや、ある!一度だけ、王立図書館の文献を閲覧した事がある。


◆『世界に厄災が満ちる時、一人の乙女が現れる。

金色の魔力を纏いしその者は、銀髪、蒼き瞳を持ち、誰よりもその全てが美しい。

そして、その者の魔力は全ての厄災を祓うだろう。

人々は、その者を❪聖女❫と言った。』◆


ま、まさか伝説の聖女がここにいるのか?!

魔力は、あの物置小屋から出ている!


私は、迷いもなく物置小屋に向かった。

だが、鍵がかかっている。


「男爵、ここを開けろ!」

「ここは、何もない物置小屋で」


開けろ!」


「は、はいぃ!」

ガラッ


むう、少し埃ぽいがなんだ?清浄な空気を感じる。

ぬ、奥に小さな人影がある?!

灰色髪の子供、かなり薄汚れているが少女か?!

ぐ、ま、魔道具がこの子供に、強烈に反応している!

私は改めて、魔道具で子供を見た。



◆◆◆



私は、直ぐ様、男爵と契約書を交わして今、帰りの馬車に乗っている。

馬鹿な男だ。

僅か七百枚の金貨で契約とは、本当に見る目がない。


間違いない、あれは掘り出し物だ。

王宮に連れていけば、金貨10万枚以上の価値になる。

これで、私にも運が回ってきた。


く、く、く、く、ハハハハハハ

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