勇気の風
私の全身を風が包み込んだかと思えば、私はまるで魔術師のようなローブを身にまとっていた。
そして声が聞こえる気がした。
沢山の人が私を心配して祈ってくれている声だ。
私に勇気が溢れてくる、蹴られた痛みなど構うものか!
本当は怖くて仕方ない、今すぐ逃げ出したい、お家に帰りたい。
それでも足は震えることなく、目は真っすぐと巨人を捉えている。
今ここで、私は立ち向かわなければならない。
強い風が吹き、私は巨人へと駆け出した。
グラディウスのチケットを改札し、巨人の足に斬りかかる。
それでも大木のようなその太い足に薄い切り傷をつけただけだった。
「ふと心配になったのです……私たちの村を救ったあなた様のことが……」
私の為に祈る声が聞こえた。
私は両手に力を込めた。
風の魔法が私を後押ししてくれる、勢いよく剣を叩きつけると巨人のすねを一刀両断出来た。
倒れこむ巨人、上がる粉塵。
それでも攻撃の手を止めてはならない。
立ち上がる前にもう一方の足に向かって切り込む。
巨人は声にならない唸り声を上げた。
耳がつんざくような、けたたましく大きい音だ。
それでも私は怯えることなく立ち向かった。
巨人は首を垂れているが腕を振り回している。
これじゃあ近づけない。
腕をどうにかしなければと考えていると一枚のチケットがフラクタルに刺さっていた。
私は知っている、これは精霊の力だ。
あの時私に手を貸してくれた精霊たちがもう一度助けてくれようとしている。
改札すると柔らかな光が私を包み込んだ。
すぐにアサルトボルトに切り替える。
「人間よ、借りを返しに来た。」
見えなくても感じる、あの時の精霊竜だ。
私は頷いてボルトを打ち出していく。
反動なんて感じられないがさっきよりも深く深くボルトが刺さっていく。
しかしながら腕を切り落とすには力が足りなさそうだ。
そう思っていたが、打ち出した矢が煌々と光始めた。
腕からは血しぶきが上がり、裂けたその隙間からは生々しい巨人の肉と骨が見えている。
そうか、精霊たちが切り落とそうとしてくれているのか。
私は同じように右腕に集中してボルトを打ち出していく。
そうして精霊竜の咆哮と共に腕は遂に切り落とせた。
「人間よ、あれは異界を壊すモノ、ここで始末しなければならないモノだ」
精霊竜がそう教えてくれた。
異界を壊す……しかしその意味を今考える必要はない。
やることはただ一つ、目の前の巨人を倒すことだけだ。
両足を斬り落とされ、片腕も引き千切れるかのように失った巨人は動きを鈍らせていた。
私の全身を再び風が吹き荒び、前へ前へと足を推し進めていく。
首を斬り落とさなければならないはずだ。
精霊竜の加護なのだろうか、私には今、翼があるような感覚だった。
飛んで近づき、私は首に急降下して叩き切る。
しかし刃が通りにくい、堅牢な首に剣が負けてしまいそうだ。
それでも私は押し込んだ。
みんなの祈りが聞こえる、私の中に勇気が溢れてくる。
勝たなくちゃならない、絶対にここで負けちゃいけない。
私は心の底から雄叫びを上げた。
声が掠れるほど、今までに叫んだことのないほどの力強さで。
気迫だけで勝てるものではないとしても、それでも私の心が、体が反応した。
剣が精霊の力に、みんなの祈りに、私の勇気に応えてくれたのか光を纏って大きな剣となった。
私は剣を引き抜き、今度こそという思いと共に巨人の首へと振り下ろした。
大量の血飛沫と共に巨人の首は転がった。
ぴくりとも動かない巨人を見て私は勝利を確信した。
体はボロボロで私は今にも倒れこみそうだったが風がそうはさせてくれない。
精霊竜が私に助言をしてくれた。
今の私なら自力で異界渡が出来るのだという。
私は咄嗟にフラクタルの引き金を引いて転移した。
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