巨人

 ルーザスとルタが組み合った状態の最中、自爆と聞こえた。


 まずい、このままでは私たちも列車も吹き飛んでしまう。


 どうすればと悩んでいたがルタが窓からルーザスと共に飛び降りた。


 爆発音が聞こえ窓を見下ろすもルタの姿は見えない。


 主を失った列車で私たちは闘うしかなかった。


「穂さん!」


 クリューの叫び声が聞こえたと思ったら私は強い力で吹き飛ばされ、列車の外に放り出されていた。


 一体何が起きたのかわからない……。


 ゆっくりゆっくりと私の体は宵闇へと沈んでいった。


 目が覚めると大聖堂のような建物の前で私は横たわっていた。


 ここがどこだかわからないけど直感的に不安定な場所と認識することはできた。


 どうすることも出来ないような気がしたが、今は一刻も早くクリュー達と合流しなくてはならない、それだけはわかっていた。


 大きな地響きと共に大聖堂が崩れ落ち、巨人の化け物が姿を現した。


 私は何故かこの巨人を知っている気がする、どこかで見覚えが……。


 怖くて逃げだしたいがルドルフを構え直す。


 足元を風が吹き抜けた。


 巨人の攻撃は早くはないが強烈な一撃だろう、私は避けながらボルトを打ち込んでいった。


 しかし手応えを感じられない。


 どうすれば……。


 それでも諦めずにボルトを打ち込んでいたが、集中力を切らしそうになっていた私は巨人の蹴りを避けきることが出来ずに吹き飛ばされた。


 こんな化け物……ルタじゃないと勝てない……私じゃどうにもできない……。


 頭の中でそんな考えが渦巻く。


 しかし痛みでその考えすらかき消される。


 もう駄目だ、そう思った。


 私の全身を風が吹き抜けた。


 地面から吹き荒び、私の体を立ち上がらせた。


 全身に痛みを感じるも私は無意識だったのか左手を強く握りしめていた。


 蹴られた時の衝撃でルドルフを手放してしまったが、チケットを呼び出していたようだ。


 翼の模様が描かれた、仄かに温かみを感じるチケットを握り締めていた。


 私はこれを知っている。


 このチケットに込められているのは祈りだ、そして私の背中をいつも押してくれていた勇気だ。


「力を貸して!お願い!」


 どうすることもできない、それでも今立ち向かわなければならない。


 そんな混沌とした気持ちの中、私は声にならない叫びを上げた。


 眩い光が両手を包む。


 私の両手にはフラクタルとシンプレックスが握られていた。


 私は迷うことなくチケットをフラクタルに差し込み改札した。

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