第五停車駅

無人の列車

 客車は誰一人いないのが不思議だ。


 今までは人を乗せて走っていたこの列車、私はそれに慣れ親しんでいたのだから。


 それでも危険なところにお客様を連れていくわけにはいかないのだから当然のことだろう。


「おい!まずいことになるぞ!」


 コルックスが叫んだ、ルタとクリューは臨戦態勢を取る。


 私もルドルフを握り締めた。


 窓の外には禍々しい何かがひしめき合っている様に見えた。


 どこから来るのかわからない恐怖感と不安感が私たちの中を駆け巡る。


 後部車両から爆発音が聞こえた、そこを足掛かりにここを占領するのだろう。


「穂、無理はするなよ?」


「何のために三か月間、体動かしていたのかわかってないようだけど、こういう時の為だよ。」


 ルドルフを握り締める右手に強い風が吹いた気がした。


 骨と皮だけの奇妙な化け物が迫ってきた。


 ルタとコルックスが応戦し始める。


 窓にも張り付いて車体を揺らしている。


 誤射が怖いから私は窓に張り付いた化け物をクリューと一緒に応戦することにした。


 アサルトボルトで化け物の頭を打ち抜いていく、しかし一発では致命傷にならないようだ。


 どうすれば……そう思いながら左手を開くと風のチケットが握り締められていた。


 風の魔法を纏ったボルトは化け物の首を刈り取っていく。


 致命傷を与えることができるようになった、とにかく張り付かせないようにしなければ。


 とはいえ数が多い、どうすればいいのかわからないが防戦していくしかなさそうだ、無事とは言えなくとも目的地に着くためには……。


 しかし、どうやら敵は私たちをここでどうにかしたいらしい。


「やぁやぁ、マエストロ。随分と苦戦をしているようだね。


 可愛い物だろう、僕が生み出した魔法生物さ。」


「ルーザス、この前の礼をたっぷりしてやらないとって思っていたところだ。」


 ルタとルーザスが斬り合う、その目にも止まらぬ速い太刀筋は周囲に何人たりとも近づけさせないようでもあった。


 それでも私の目にはルタが押されているようにも感じた。


「随分と強い魔力だ。俺も本気を出さなきゃな。」


 ルタに突風が吹き荒れたように見えた、一枚のチケットを改札すると彼は鎧に包まれた。


 武器を出すことは出来ても、彼が防具を身に着けているのは見たことがなかった。


「穂、いつかお前もファロスの力を使えるようになるだろう」


 私に向かってそう言うとルーザスと再び斬り合い始めた。


 今度は押している、勝てるはずだと私は思った。


 しかしルーザスから不気味な雰囲気が漂っているように感じられた。


 私は化け物を列車に寄せ付けまいと闘いながらも嫌な予感が拭い切れない。


「マエストロ、奥の手っていうのはこういうことだよな」


「クッソ、自爆する気か!」

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