訓練
アリスさんと私はテラスで他愛もない話をしていた。
アリスさんのこと、ルターニャのこと、魔法のこと。
そしてこのアリシア島は魔法の無い世界であるということ……。
「私は闘ったことないから凄く怖かった……。
いつもルタが助けてくれたけど、自分で自分の身をしっかりと守れるようになりたい……。
役に立たないならせめて足手まといにはなりたくない……。」
「穂、君は強くなれる。私が思うに人間の強さは勇気にある。
恐怖に打ち勝つその心が背中を押してくれる。
魔法の根本はきっと勇気のはずだ。
しかし、笑ってしまいたくもなるだろう。
魔法を持たない技術屋がこんなことを語るなんてな。」
翌日、私はアリスさんに呼ばれた。
このアリシア島はルターニャの保有する私設軍隊の街だそうだ。
アリスさんの口利きで訓練に参加させてもらえるのだという。
戦い方は学ばなくてはならない、追いつけなくても追いかけること自体はできるんだ。
私は二つ返事で参加することにした。
兵士が一人、私を迎えに来た。
アリスさんは一体何者だろう……兵士はアリスさんに敬語で恭しく接していた。
しかしそんなことを考えている場合ではない、車に乗り込んで訓練場に向かった。
これは本当に訓練場なのだろうか?
壁に囲まれた中にも街があり、市街地戦、屋内戦が訓練出来るのだという。
建物は全て宿舎となっているそうだ。
この敷地内に入ってから私の訓練が始まるのだと思うと高揚感と若干の不安が私を駆け巡った。
アリスさんからは毎日、まだルタは起きないという報告を受けながら訓練をし続け一か月は経った。
剣術はまだ上手く出来るわけではないが銃の扱いには大分慣れてきたと思う。
どんな風に動けばいいのか、どう狙っていけばいいのか。
宿舎から見える夕陽はいつもの帰り道に重なるようで私は少し寂しさも感じた。
あれからどれくらい経ったのだろう、私は随分変わってしまったように感じる。
魔法というものへの憧れがあった幼き日の私が今の私を見たらどう思うのだろう。
アリシア島での生活にも馴染んできた三か月目、アリスからルタが起きたという連絡が入った。
ベッドにはいないということで街に散歩にも出かけているのだろうと彼女は言う。
教官は私に教導隊の離任許可をしてくれた。
荷物をまとめて急いで屋敷に戻り、バイクで街へと繰り出し直した。
街のどこへ向かっても彼はいないことに少なからず焦燥感を覚える。
諦めて戻ろうとすると屋敷前の道路がせり上がり、地下への道が出来る。
こんなところに道などあっただろうか、と思いつつもこの先は屋敷の真下ということもあって入っていくことにした。
一番奥まで辿りつくと翼を折りたたんだ一機の戦闘機が鎮座している。
以前、教官から教わったことがあるが実物を間近で見るのは初めてだ。
エア・フォースと呼ばれる垂直離着陸高速戦闘機だという。
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