第四停車駅

アリス

「君が穂か。傷についてはルタが治療したから意識が戻るまで時間の問題かと思っていたが思ったより時間がかかったな。


 まあいい。君の頭には疑問がいくつかあるだろうが、まずはゆっくり休むことだ。」


 疲れからか目を開けることは出来ず、声だけが耳に伝わってきた。


 女の子の声だ……私たち一行はどこかへ運び込まれたが、ルタの知り合いだろうか。


 ここはどこなのだろう、温かい布団、そして波の音……。


 眠っている間に見た事故の夢を思い起こす。


 私の両親はその時死んだ。


 一緒にいたはずの私は煤汚れはあったものの無傷で助け出されたそうだ。


 そしておばあちゃんに預けられた。


 目を開けて体を起こすと潮風が入ってきた。


 海辺の建物にいるようだ。ソファで寝ているクリューが私に気が付いて声をかけてきた。


「穂さん……よかった……。記憶はどこまでありますか?」


「えっと……ルーザスに捕らえられたところまでかな。


 あの後、意識を失ったんだけど……。」


 クリューが何があったのかを説明してくれた。


 どうやら私は剣で体を貫かれたという。


 いつもは穏やかなルタが激昂し、使うことを控えていたシンプレックスという改札鋏をも用いてその場を収めたのだという。


 魔力を使いすぎたからかルタは倒れ、コルックスがエマージェンシーチケットを使ってここ、アリシア島まで連れてきたのだという。


「普通、魔力は感覚強化をすることでしか見えないんだけれど、あの時のマエストロは魔力が目に見えるほどだった。


 赤く見えたから全身から血が滲み出るほど強力に魔力を放出したんだと思う……。」


 それほどのことが起きていたなんて……しかしながらまだルタは眠っているとのことだった。


 体力も魔力も大きく消費したことで休息が必要なのだろうとクリューは話す。


「穂、目が覚めたか。


 ここは私がルターニャから管理を任されているアリシア島と呼ばれる場所だ。


 気分はどうだ?」


「ええ……大丈夫です。


 それよりルタは大丈夫なんですか?


 クリューは大丈夫と言っていますけど……。」


「君は自分の心配をするといい。


 ルターニャは大丈夫だ、長時間の睡眠を必要とはしているがマナ核の枯渇も無いだろう。


 彼は無尽蔵と言えるほどの魔力を有しているからな。


 本当は魔導具などいらないほどに。」


 私より見た目の齢は幼い白衣の少女は再びドアの向こうに消えていった。


 忙しい人なのだろうか。


 クリューは彼女のことをあまりよく知らないという。


 しばらくはここ、アリシア島で過ごすことになりそうだ。


 外を見てみるとここは市街地からは離れた丘の上にあるようだった。


 市街地は私のいた世界にもよく似ているが空を見上げれば多くの飛行機が飛んでいる。


 魔法よりも科学の世界なのだろうか、好奇心が止まらない。


「私のことはアリスで良い。ルターニャも含めて多くの者が私をそう呼ぶ。」

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