不覚
「穂、足止めすることだけを考えるんだ。俺が何とかする。」
コルックスは私にそう告げて扉の前で防戦を展開した。
私は射線に気を配りながらコルックスの隙間からアサルトボルトで足止めをしていく。
しかし圧倒的に数が多い。
他の場所から集合してきているのだろうか、このままではもたないかもしれない。
「マエストロ!まだなのか?早くしてくれないとマジで侵入されちまうぞ!」
「あぁ、わかってるわかってる。大丈夫だ、もうすぐだ。」
足止めしきれなかった一体が入り込んだ。
接近戦を許してしまえば私に勝ち目がない。
足が震える、失敗に怯える体をそっと風が吹き抜けていった気がした。
私は気が付いた時には敵の懐に潜り込み、グラディウスのチケットで出した剣で足を切った。
風が背中を押してくれている、ルタに絶対に近づけさせない。
「よし!これで上手く行ったはずだ!」
ルタはそう叫ぶや否やアサルト・シュラウドを一刀両断してみせた。流石の太刀筋だ、ルタの両脇に残骸が倒れこむ。
しかしながら一段落したわけではないようだ。
暴走した一部の機体は未だ止まっていないようだ。
「研究所内だけで済むならいいが、こいつらが外に出てしまって街で暴れるようならかなりまずいことになる。
俺たちの役目はここできっちり抑えることだ。
既に人損被害も出ている、最悪な状況を回避しに行くぞ。」
私たちは急いで研究所内の機体を片付けに回る。
通路には血を流して倒れている研究員が何人もいる、今すぐに彼らをどうにか出来るわけじゃない心苦しさを感じるも前に進まなければならない。
格納庫に辿り着くと軍部も介入して戦闘していた。
闘うことのできない研究者たちはどうやら無事に避難が出来たようだ。
私たちも戦闘に参加して鎮圧を急ぐことにした。
大型のアサルト・シュラウド、防戦一方になるがもう小さい機体は出てこないだろう。
そう予測を立てて立ち向かおうとすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「いやぁ、大変そうだね。
魔装機兵って強いもんねぇ……しかしまぁ、こんなところにもマエストロがいるとは思わなかったよ。
いやはや、予想外っていう事態はいつでも起こりうるものなのだね。」
「ルーザス、あの時俺はお前に情けをかけたのが間違いじゃなかったと思いたいぜ。」
大型の機体が向かってくる、私はコルックスと共に食い止めることにした。
しっかりと間合いを取りながら戦っていたが――。
「マエストロ、君は敗北宣言をした方がいいんじゃないかい?」
「俺はお前のそういうところが嫌いだったから院長に話してたんだよ。」
私はルーザスに捕らえられてしまった……。
失態だ、ルタの足を引っ張ってしまっている。
どうにかしなければならないが、身動きが取れない。
「うっ……」
何が起きたかわからない。
意識が遠のいていく。
ルタの叫ぶ声が木霊する。鋭い痛み、遠のく意識、叫び声、強い魔力……眠いな。
意識が戻ると私は大きな列車事故の現場にいた。
覚えがある……あれは私?それも幼い頃だ……。
誰かが近づいている……ルタのようにも見える……。
走馬灯にしては何だか妙だ……そう思っていると私の意識は再び落ちてしまった。
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