第三停車駅

風の運び屋

 私はその名前に聞き覚えがあった……そう、酒場で挨拶してきた男だ。特に何かの印象も抱かなかったが……つまりザン・オルリビも精霊竜もあの人が……?


 そう思いつつ私達は魔法特急に乗り込み、次の停車駅へ向かうこととなった。


「よう、ルタ。久々だな」


 走行中に窓から入り込んできたのはメッセンジャーバッグにコート、長いマフラーという異様な出立ちをしたおじさんだった。


ルタの知り合いであるということは確かだけど……。


「君が精霊竜の件での少女、穂だね。


 俺はブレイバー・ウィザ・ラフィーカだ。ブレイバーで構わないよ」


 ルタが言うに彼らは荷運び人だそうで、ブレイバーさんのように異界渡を主軸とした荷運び人もいるそう。


 その先駆けとなった人がこの人なのだという。


 しかし随分と胡散臭い感じもある……悪い人じゃなさそうだけど。


「お前さんがここに来たってことは俺宛か?」


「ご名答、ベルナさんからだよ。ちゃんと顔は見せているか?」


 ルタは封筒をもらうとすぐに開けた。


 中には一枚の無地のチケットが入っているみたいだ。ルタはため息をつくとパスケースの中にそれをしまった。


 どうやら手紙の類は入っていない様子。


 苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながらもルタは魔法で封筒を取り出し、ブレイバーさんに依頼を出していた。


「フォローウィンドの力を借りたい。


 情報を集めてくれ。情報の精度次第で報酬金を上げよう」


 ブレイバーさんはにっこり笑うと窓の外に飛び出していった。


 まるで暴風のように凄まじい人のように感じられた。


 いきなり来てはいきなり消えていく、まるでそれは風のようでもある気がする。


「もうすぐ次の異界だ。

 

 まさに魔法と科学の融合とも言えるような世界と言えるだろう。

 

 マナを魔道具に注入して扱うんだ。俺たちと似ているところがあるかもな」


 なるほど、科学と魔法が融合したような世界もあり得るのか……。


 異界渡は色んな世界を見れて楽しいような気もする。


 相変わらず苦虫を噛み潰したような顔をしたルタは私にベルナという人について教えてくれた。


 ルタの師匠に当たる人で偉大なる風魔導師とも呼ばれているらしい。


 苦い思い出が多かったようだ、苦悶の表情を浮かべている。

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