精霊と切符

「アルヴ・ドラーカ……まさかあいつがいるのか?穂、クリューとコルックスと一緒にいろ」


 そう言って魔法でルタは飛び去った。アルヴ・ドラーカと呼ばれた怪物を見ると透き通るような禍々しい翠緑色をしたドラゴンに見える。


 アルヴ……アルヴ……聞いたことあるような?


『ニンゲン、お父様が暴れている』


『ニンゲン、力を貸して』


 また不思議な声がする。周りを見渡しても何もいない……。しかし凄く近くに何かがいることがはっきり分かる。


 魔法でもう少し感じることができるようにならないだろうか……。


『ニンゲン、お父様苦しんでる』


『ボクたちはここだよ、ニンゲン』


「穂さん、大丈夫だよ」


 私の動揺を察したのかクリューが手を握ってくれる。


 うん、大丈夫。風が吹き抜ける感覚と共に私は頭で見るための魔法を思い浮かべた。


 私の手には一枚のチケットが握られている。


「ヴルトス、チェック」


 目に酷い違和感がある……すごくぐるぐるする……。


 しかしそれが一瞬で晴れたかと思えば目の前に光の球が無数に飛んでいることに気がついた。


 優しくて温かいようにも感じる……そして私はそれがルタの言う精霊だということに気が付くまで少し時間がかかった。


『ニンゲン、ボクたちとともに』


『ニンゲン、お父様を助けて』


「お父様って……あのドラゴンみたいなやつこと?」


 ふと手を握っているクリューを見ると酷く驚いた顔をしている。


「穂さん……まさか精霊が見えるの?」


「え、ええ……ヴルストの魔法を通したら目を回してしまったんだけど、見えるようになったよ」


「感覚強化の魔法だな、けどよ、それでも精霊って基本的には見えないもんだぜ。相性問題もある。」


 そうか……私は精霊との相性が良いということになる。


 どうやら誰にでも見えるものでも、感じ取れるものでもないようだ。


 でも、あのドラゴンみたいなのも精霊ならば相当に力が強いとわかる。


『ニンゲン、はやくしろ。時間がない』


『ニンゲン、今すぐ飛んで』


『ニンゲン、力があるようだね』


 沢山の精霊たちが私に助けを求めている。


 急がなきゃならない。


 でも今すぐ飛ぶって言ったってどうやって?どんな魔法で?どう助ければいい?


「穂さん、そのチケット……」

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