第二停車駅
日本に似た異界
今度の駅は“カノエ国タツノ大路交差点詰所裏”という場所である……が、何となく耳にしたことあるような名前の様に感じられた。
エトノ連邦の東の方に位置するここは私に慣れ親しんでいるかもしれないと彼は言う。私に慣れ親しんだ、といえば元の世界の日本だけど……そう思っている内に列車は駅に到着した。
いつも同じ黄昏時の駅から出ると狭い路地裏のようだった。大通りが見えるのでそちらに行ってみる。
「まるで日本みたいね……それも2、300年くらい前の……」
見渡す限り殆どが木造建築の平屋で、京都の映画村にでも来たような気持ちだ。鼠小僧か忍者の一人や二人が屋根の上を駆け回っていたとしてもおかしくはないような気がした。
というより……そうか、カノエだのタツノだのって日本語っぽいというかもしや干支では?
大通りには屋台なんかも出ていて非常に賑やかだ。空を見上げれば快晴、ちょっとしたお祭りにでも来ているような気分。
コルックスに至っては焼き魚の匂いを嗅ぎつけたのか涎を垂らしているし尻尾が揺れている。ところで尻尾なんてあっただろうか?
「俺は獣人族なんだよ、人の姿も獣の姿も取れるが思わず興奮しすぎたな……」
考えてみればおばあちゃんの友達っていうだけで一緒に旅をしているけど……私はこの人たちのことをよく知らないんだった。それに対して不安があるわけでは無いけれど……それはそれで妙な感覚だと思う。
『おもしろいニンゲンがいる』
『ほんとだほんとだ、おもしろいニンゲンだ』
「どうした?」
「いや、声がしたような気がしたんだけど……」
すぐ近くで話し声が聴こえた気がしたが振り返っても誰もいない。
面白い人間というのが誰を指しているのだろう……もとい私は異界の人間だからか私のことのような気もした。
しかしここは大通りだから人もたくさんいるし……今は気にしないでおこう
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