不穏なキャンプ
過ぎ去る景色はまるで線のように思いながら日も暮れた頃に休憩となった。馬から降りた私はヘロヘロですぐにその場に座り込んでしまった。ルタの手を借りて街道から外れたところでキャンプをするのだと言う。
魔法で結界を張ることで魔物の奇襲を受けないと言っており、大きな魔法陣を展開するとその上にテントやテーブルを用意し始めた。魔法というものは至極便利なものだと思わず感心してしまう。
「魔法って随分便利なんだね」
「そうだね、魔法にも色々あるけど生活に根付いているものは便利でもあるかなぁ」
明け方頃、私たちは再び出発した。涼しい風が吹き抜けて気持ち良く感じる。移動し始めると平原の向こうで誰かが戦っているのが見えた。
「昨日立ち寄った酒場、あれは街の顔役みたいなものなんだ。マスターも世話好きで役場に行くよりも前にみんなあそこに行くんだ。魔物狩りを生業にする人はああいうところに舞い込む依頼を請け負うこともままあるんだよ」
「そういう組合とかってあったりするものなの?」
「そうだね、狩猟組合や調査組合など国に頼らない民間組織もあるにはある。そういう所に所属している人も大勢いるだろうね。丁度、もうすぐ着く翠緑の大森林の向こう側に狩猟組合のアリマルシャン王国拠点がある」
小説やゲームに出てくるギルドっていうのはやっぱりあるんだ!私は期待に胸を膨らませたが、そもそもギルドって組合の事だったような……。
私が考え事をしているうちに翠緑の大森林に辿り着いた。辺りは既に薄暗く森は不気味さがあった。夜の森は危険だという事で私たちは再びキャンプをすることになった。
「すみません!すみません!」
緑色をした月が斜めに見える頃だった。テントの外から大声で呼ばれている。ルタが警戒しながら声を掛けると相手方は助けてくださいと涙声で訴えてきた。
外を見ると10人ほどの人集りがある。みんな恐怖に慄いている様子に見えた。ルタはすぐさまクリューに頼み、人集りに厚手の布と飲み物を配った。その中の腕に大怪我した人が何度も深く頭を下げてきたのでルタが声をかけた。
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