走る魔法特急
私が引き入れられたのは機関車の運転室だ。
狭いとも広いとも言えないが、妙にすっきりしているように見えるのは“魔法陣”のようなものがそこかしこに展開されているからだろうか。
ルタは椅子に座り操作し始める、そろそろ出発の時間ということなのだろう。
「あれ、もしかしてルタのお客さん?」
白い服に機関車と同じ藍色と金色のマントを羽織った女の子が声を掛けてきた。
「お客さんかどうかはわからないけど、招いてもらったのよ」
「クリュー、大事なお客さんだ。しばらくは共に旅をすることになると思うぞ。コル
ックスはまだか?」
「そろそろ戻ってくるはずよ」
クリューと呼ばれた少女はポケットから機械を取り出し、何かを通した後に話し始めた。
どうやら出発前のアナウンスのようだ。言い終える頃には今度は黒い服に同じマントを着た少年が入ってきた。
「マエストロ、準備は出来てる、いつでも出れるよ」
きっと彼がコルックスなのだろう、妙にじろじろ見てくるが興味が失せたのかクリューの隣に座った。私の時計では22時を指していた。唸りを上げて機関車は動き出す。
トンネルを抜けたと思ったら星空のような空間を走り始めた。
コルックス曰くあの星のようなもの一つ一つが世界の入り口だという。
この機関車は魔法で動いていて、世界を渡ることができるそうだ。
まるでファンタジーというか、おとぎ話のように感じられるが実際に目の当たりにしても信じられないと思っている。
人は受け入れがたい事象に直面した時、それが例え目で見たものだとしても中々信じることはできないのかもしれない。
そうしている間に着いたのは山の麓のトンネルと同じような見た目した駅だった。
ルタが言うにはこの“ブラフィカ・エクスプレス”の駅は同じような見た目になっているのだという。
しかし駅名は面白いもので、“アリマルシャン王国王都12番街5番地アパート203号室”だ。もう既に私は異世界に来ているという高揚感を抑えきれない。
アパートから出ると建物が目に映るがどこか見覚えのある気がした。異世界というものに私は過度な期待をしていたのだろう、正直戸惑っている私はルタに手を引かれて歩き始めた。
「ここから城門に行くには川を超えるが、そこに大きな橋が架かっている。上は市場にもなっていて楽しいところだよ」
橋の上の市場と言われても私の中であまりピンとは来なかった。
今の私の中では聞こえる会話がどんな言語かもわからないから、海外に来たくらいの様な印象でしかない。
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