第2話
とうとう入学式の日がやってきました。
拝啓お母さま、お父さま、この学園は別世界のようです。
というかここってあのアメリカの駅の柱にツッコむと出てくる駅のホームから行く魔法学園みたいな感じなんですけど。
「あ、思い出した。
この乙女ゲーム魔法があるんだった。」
魔法は貴族だけが使える設定でヒロインも使えるようになるルートが存在する。
でもそれは1万円課金しないとできないルートで私は行っていなかったのでそのルートは動画投稿サイトでみたくらいで詳しくは知らない。
「でも魔法ね。」
異世界に行ったら日曜午前8:30にやっていた女の子の戦うアニメみたいなことができるかもしれないと思うと魔法は使いたいって気持ちになるかも。
でも前世がいくつで死んだかは知らないけど結構恥ずかしいって感情が引っ張られているのが分かった。
つまり私の前世は中学以上は確実。
今の今まで思い出そうとしなかった私が悪いんだけどね。
でも死の瞬間って思い出そうとすると拒絶するんだよね。
「ここって魔法使い用の校舎にしか見えないけどゲームでは普通に移動してたし一般人もできるよね。」
わかる、わかるぞ動く階段の行き先が。
なんて馬鹿なことを考えていると一際目立つ美人が居た。
「ごきげんよう。」
「ご、ごきげんよう?」
「うふふふ、噂はかねがね聞いておりましてよ。
魔法の部門を会得していないにも関わらず学園最高成績を取った特待生だとね。
リヤさん、貴族科は優秀なモノには礼を尽くして歓迎いたしますのでどうぞこれからも良しなにお願いしますわ。」
見事な一礼を披露する彼女はこのゲーム世界の大公家の
礼を尽くすという意味合いから取り巻きたちは彼女を心酔しており王子以外にありえないと考えていてエリザベスの思いなど二の次で王子の婚約者がもっとも見合っていると囃し立てられることで心を殺している。
本当は彼女には大公家の庭師の幼馴染が誰よりも好きで王子様よりも大好きなことを内に秘め続けるピュアピュアでプラトニックな恋をしたい純情令嬢。
これだけでご飯3倍は行けるくらいの甘々な空間を王子ルートでは出すので一番覚えている令嬢だ。
「も、申し遅れました。
私王都メインストリートに店を構える花屋のリヤと申します。」
「いえいえこちらから出向いたのですからまず名乗らなかった私の方が不手際ですよ。
こちらこそ申し遅れてご迷惑をおかけしました。
ユナイテッド大公家、長女のエリザベス・フォン・ユナイテッドと申します。
どうぞ良しなに。」
「始めてくる貴族科は庶民にとってどう思いましたか。
さぞや美しく見えることでしょう。」
「私めも見るモノかしこも初めてのことばかりですので美しさの前に驚きが来てしまいまだまだ美しさを存分に堪能できておりません。」
これが貴族の佇まいって感じなのかとても所作一つ一つが美しく抜け目がない。
それに今の会話も彼女の本心ではないが皮肉が込められている。
悪役令嬢と言われても納得の言葉遣い。
彼女の容姿は金糸を一つ一つ編み込まれたような
専用に作られた制服は着飾ったりすることはせず、無駄なモノをそぎ落としつつもスカートの丈をうまく調整して気品あふれる令嬢にふさわしい改造が施されていた。
制服は貴族科以外はきちんとした学生専用のモノがある。
逆に貴族科は規定さえ守っていればオーダーメイドの制服を着ることが許されている。
この乙女ゲームはコーディネートする機能も搭載されていることから課金が絶えない。
魔法を習得するにも魔女の服みたいなものが必要になっていてそれを一式そろえるのに1万円、福沢諭吉、聖徳太子がお財布から消えていく人が後を絶たなかった。
話をエリザベス様の容姿に戻す。
彼女の身にまとうアクセサリーは髪留めが一つだけ、それも幼馴染の庭師の人が造った勿忘草を魔法で固めたブローチだ。
ヒロインと王子が結婚した後はそのブローチを指輪にして結婚するんだよね。
そんな一生物の純愛展開なんてそうそうないのにねえ。
でも私もそんな恋をしてみたいよ。
一生この人と一緒になるんだって恋。
「リヤさん、リヤさん。」
「し、失礼しました。エリザベス様の容姿に見惚れてしまいました。」
「あら、同じ女性に言われると嬉しいわ。」
社交辞令ですらも一つ一つが綺麗な人だ。
でもそれだけ純粋ってことは悪意にさらされやすいのよね。
このまま立ち往生しても良いけどそのまま学園室に用事があるので一例詫びを入れて早々に立ち去ろうと思い口を開こうとすると遮られた。
「学園長に用事があるのでしょう。
その前に私に言いたいことがあるのだけれども良いでしょうかリヤさん。」
これはイベントの一つだ。
ここでお願いされることを断れば一先ずの王子ルートは回避される。
王子ルートは強制力が強く大体は王子ルートに行くように調整されている。
だから厄介なのよ。
こっちは王子なんかに関わったら未来設計図が台無しになること間違いなしなんだからここは意地でも断るわよ。
鋼の意思でお断りよ。
「なんでしょうかエリザベス様。」
「王子があなたに興味を御持ちらしいからあって欲しいのだけれどもよろしいかしら。」
「申し訳ございませんが非公式の場にしろ公式の場にしろ私目には王子のお目を御汚しする気はございません。」
「王子はあなたに会いたがっているのよ。」
二度目の言葉は警告だ。
でもここでくじいてしまってはいけない。
こんなところでフラグ建ててまで王子様とお近づきになりたいか。
それとも酒場でうまい酒が飲みたいか。
(異世界はお酒に未成年もなにもございません。)
「申し訳ございませんが私は今だ礼儀というものを知らぬものですが故に私では殿下に無礼を御働きしますのでお会いするにはまだお早いかと思われますが故にお断りさせてございます。」
「学園には身分がございませんので殿下も気にさないと思われますが。」
「再三申し上げますが身分を問わないと申し上げましても礼儀を欠いては民としての矜持に反します。」
「くどいですね。それらも含めて許すと王子は言っているのですよ。」
「では民としての矜持を許すこともできないのでしょうか。」
キリッとした目でこちらを睨まれた。
こちらが断ろうとしていることを理解しているのだろう。
「エリザベス様、申し訳ございません。
殿下が私に会いたいとお思いになりますように私にも女性として恥ずかしくない準備がございます。
殿下にお会いになると思いますと庶民では結婚衣装に身を包むほどの正装をしなければとてもとても面と向かってお会いすることなどできようもございません。
どうか女性の一人として国の羨望の的である殿下に恥ずかしくない姿でお会いになる準備ができますまで待っていただけるよう進言お願いいただけますでしょうか。」
「婚約者の前で殿下のことを熱弁されると良い気分ではありませんね。」
「申し訳ございません。
殿下の婚約者としてのエリザベス様はとても美しゅうございますが恋をする乙女としてではなく教会の女神像ような象徴的な美しさとお見受けします。
愛する人としてならばエリザベス様にはその勿忘草をお送りした人が最もお似合いかと存じ上げますよ。」
ここでネタをばらす。
王子との婚約があなたの意思ではないように見えることは理解していると遠回しに言っているのだ。
庶民としてならば恋愛結婚は自由に行えるので貴族の結婚は美男美女の結婚をしているから羨ましく思う方が多いけど目が死んでいる人も多いし貴族の結婚は長続きはするけど妥協をしているからだと称する人も居る。
実際に浮気なんかが公に認められている世界だし幸せな結婚生活は送れないでしょと愚痴っても居るのだ。
エリザベス様は何故それをというような顔をしているけど勿忘草を異性に送る時点で他に思い人が居ると言って言うようなものだ。
貴族は野に生える花の意味を知る必要は無いから知らぬのも無理はない。
「私にはその花はとても重く感じます。
ですが同時に羨ましくも思います。
殿下の婚約者であることを願い祀られますエリザベス様は心に蓋を閉じていましては流されるだけでございますよ。」
私は思いのままに心を切り込む切り札を出した。
今ここで流されやすい体質のエリザベス様に
悪役令嬢自身の恋を成熟させつつも自分の家のこととも両立できるようにするためには王子を手玉に取り傀儡にするほかないと植え付ければいい。
この人は早々に見限るだけの判断力はある。
私みたいなモンスターを追いかけてながらスマホをするような優柔不断のどっちつかずな行動をする人よりもこの人の方が迷っている時間が少なくとっと改善策が思いついたら試すことをしてくれるに違いない。
王子を傀儡にする。
そんなふうに誘導すれば無事この人が王妃になってくれる。
「あなたとてもわかったようなこと言うようね。
勿忘草の花言葉を知っているの。」
「私はあなたを待っている。
庶民の間では有名な花言葉ですよ。
幼少の頃に聞かせる戦争についての悲しさを教える物語の中に戦士が持っていくものと伝えられています。」
異世界、乙女ゲームの世界ってさ、植生とかは変わってないし似たような感じのモノが多いけど変なところでファンタジー要素があるから将来設計を調べるためにここ1月は一般常識を徹底的に叩き込んでいる。
ゲームの中では描かれなかった世界観、描写を調べておかないと後で苦労するのよ。
ただでさえ転生乙女ゲーム主人公なんて地雷な転生を起こしてるんだからきちんと調べれることは調べておかないと。
「なら、私はどうすればいいのかしら。
あなたが気が付いている通り、私には思い人が居るわ。
浮気性の殿下とは違ってもっと純粋な人がね。
聞いてくださいよメイドに手を出すのはまだいいんですけども数十人に手を出すのはやり過ぎでしょうが。」
この乙女ゲームぶっ壊れですよ。
というか男性向けに近くありません?
そりゃあすぐに見限るわよね。
それを黙認し続けるこの人もこの人だけどさ。
悪役令嬢の化けの皮が剥がれるの早ってなりますよ。
もうこれだけでタイトル回収出来ちゃいますもん。
悪役令嬢というよりも話を聞く限りでは悪役王子、もとい貞操観念の緩い王子ですね。
日本の草食系を見せてやりたいです。
なよなよしてて女性と話すときょどる人とか居る人よりはマシかもって思えるけど。
それでもさ、浮気は甲斐性って昭和じゃないんだから。
「イケメンだからって何しても許されるのか!」
「そうですそうです。令嬢は花は蝶にと育てられますのに男どもときたら女を商品としか見ていなんですもの。」
気が付いたらあってもない王子の愚痴を言いながら共感していた。
王子と会う仲介役と王子に会いたいと言われていることを互いに忘れたまま学校を案内されていた。
________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________________
読者の皆様の感想。
レビューが作者の励みになります
コメントが苦手な方でもぜひ反応を示してくれると幸いでございます。
また誤字脱字に関しましては一息ついてから確認いたしますのでご協力お願いします。
出来ればより多くの方にお読みいただき感想をいただきたいのでレビュー評価を入れてくれますとだいぶ助かります。
レビュー評価を星一個入れていただけるだけでも読んでいただける母数が増えますのでお願いいたします。
スライム道
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます