第一章 リモート生活は、ある日突然に⑤
「よかっっったぁぁぁー……」
オンライン授業初日を終えて家に帰った私は自室のベッドに飛び込むや否や、肺の中の空気をすべて吐き出す勢いで安堵の息を洩らしていた。
「どうなるかと心配だったけど、何とかなった……」
重音は私が部屋に来ることを嫌がってたから、素っ気ない対応をされることぐらいは覚悟してた。……というか、実際、最初は結構素っ気なかった。
でも、最終的には昔みたいに喋れたよ。ちょっとだけ、まだまだぎこちないところはあったけど、それでも、ここ一年間の疎遠っぷりに比べたら、全然マシ。むしろプラスって言っても過言じゃない。
「勇気を出してよかったな」
オンライン授業についての連絡をされた時、チャンスだと思った。
重音と仲直りするためのチャンスになるかもしれない、って。
だから勇気を振り絞って、重音に声をかけた。
喉はカラカラに渇いてて、心臓は今にも爆発しそうで。
――だから、重音が頷いてくれた時、天にも昇る気持ちになっちゃった。
正直、断られると思ってた。だって、ずっと避けられてたから。
「私、頑張ったよね」
頑張ったよ、超頑張った。勇気を出せて偉いぞ私。
……もちろん、嬉しいばかりじゃないんだけど。
「結局、どうして私を避けてたのかについては聞けなかった」
悔しさを噛み締めるように、枕をぎゅーっと抱き締める。
重音との距離が空いちゃったその理由を、私は全く知らない。
私が何かしちゃって、それで重音を怒らせたのか。
思い当たる節なんてない、けど……重音が私を突き放すだけの理由が、絶対にあるはずなんだ。
「オンライン授業がいつまで続くか分からないから……なるべく早く、その原因を探らないと……」
もちろん、重音に直接訪ねるのは怖い。
嫌われてるわけじゃないとは、思う、けど……もしかしたら、私が一緒にいることで、彼に何か迷惑をかけちゃってるのかもしれない。
でも、聞かなくちゃ。
自分に悪いところがあるなら、それを治して、できるだけ長く重音と一緒にいたいから。
あんな、身が張り裂けそうになる思いをするのだけは、もう二度とごめんだ。
「頑張れ、私……頑張れ、おー」
重音の本当の想いを知って、そして、昔みたいな関係に戻る。
……ううん。今よりもっと、仲良くなりたい。
そうしたら、きっと――
「手を繋いだり、き、キスなんかしちゃったりして……~~ッ!」
自室で一人、ベッドの上で悶える私。
妄想を現実にできるように、頑張らなくっちゃ。
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