第47話 必殺技

『ろけっとぱーんち!』

ドーン!

メカ娘の気の抜けたかけ声と共に発射されたアダマンタイト製の硬くて重いがロケットモーターの炎を曳きながら高速で飛翔する。


『ぶもおおおっ!』

ドガッ

四階層目の階層フロアボスのミノタウロスの胸部に“ロケットパンチ”が突き刺さった。


ドシャッ

ミノタウロスはその目から光を失って崩おれる。


~・~・~


この階層のフロアボスはミノタウロスのようだ。

体高3mで筋肉ムキムキの2足歩行の牛が巨大な戦斧を手に下の階層への階段の前を護っている。


『あーす・ばれっとぉ!』

ビュンッ

我がパーティーの“しゃべる対戦車砲”であるメカ娘が石弾をミノタウロスに向かって投げつけた。


ぎいんっ

牛が巨大な戦斧の分厚い刃の部分を盾のように使って、石弾を弾く。


『ぶもおおおっ!』

勝ち誇るように咆哮をあげるミノタウロス


『うあっ、牛のクセにムカつく、しゃちょーさん、“らんす”下さい、“らんす”』

メカ娘が私の方に手を伸ばして石槍ランスを催促してくる。


『面倒くさいからレーザー光線で…』

『しゃちょーさん、アレは目がチカチカするからイヤです!』

メカ娘は“ビーム”がイヤらしい、アレ強力なのに…


『あーす・らんすぅ!』

ビュンッ


ぎいんっ!


ミノタウロスが戦斧で石槍ランスを受け流した。


『くうっ、“あーす・らんす”ならイケると思ったのに~』

いや、石弾も石槍もスピードとか威力とかそんな変わんないし、どうしてイケると思った?


「メカちゃん、さっさとレーザービームを使いなさいよ!」

ヒルデガルドがそう言うと、

『アレは目が痛くなって、しばらく見えなくなるからイヤですぅ~』

メカ娘は両手で自分の目を覆ってイヤイヤをする。


『あーす・ばれっとぉ!』

ビュンッ

ぎいんっ


『あーす・ばれっとぉ!』

ビュンッ

ぎいんっ!


『あーす・ばれっとぉ!』

ビュンッ

ぎいんっ


「いや、もう良いだろう…」

ガブリエラがため息をつきながらメカ娘を諭す。

『くっ、こうなったら!』

「あっ、突撃したにゃ!」

メカ娘が“モルゲンステルン”を手にミノタウロスに突進した。

よっぽどレーザーを使うのがイヤなんだな…


『たあっ!』

ぶうんっ

バキッ

ぽきん

ミノタウロスの右膝を狙ってフルスイングしたメカ娘の一撃で、モンスターハウスで散々酷使した“モルゲンステルン”がポッキリ折れてしまった。


『ぶもおおおっ!』

脚にダメージを受けたミノタウロスはたまらず膝を地に着けているが、武器を失ったメカ娘はそのまま後退して来た。


『しゃちょーさん、武器、武器!』

メカ娘が私に手を伸ばしてくる。


『それなら、丁度良い処に頑丈そうな戦斧バトルアックスが…』

『アレはミノさんの戦斧でしょー!(怒)』

奪って使えば良いじゃん。

それとミノタウロスの事をミノさんって呼ぶのはやめなさい、なんかみの○んたみたいだから…


仕方ない

『“コマンド”、光学照準器スタンバイ!』

『んんっ、この目の前のばってんは…“びいむ”はイヤ~』


『“コマンド”、ターゲットロックオン!』

しゃきん

メカ娘の右腕が持ち上がりミノタウロスに向く。


『“ロケットパンチ”発射!』

『ろけっとぱーんち!』

ドーン!


~・~・~


『コレは強力なのです、目も痛くならないし♪』

ミノタウロスの胸部から引っこ抜いた自分の右腕に○ァブリーズをしゅこしゅこスプレーしながらメカ娘がニコニコ顔で言う。


「コレ、わたしが貰っても良いわね?」

ヒルデガルドはと言うと、ミノタウロスの死骸を“死霊使いの杖”でしばいてアンデッド化している。


『えー、その斧あたしにくれるんじゃあ?』

「元々ミノさんの持ち物でしょ」

壊れたモルゲンステルンの替わりにミノタウロスの戦斧を使うつもりだったメカ娘がぶーたれている。

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