第46話 モンスターハウス
「しゃちょ~、どうするの、モンスターハウスをスルーする、それとも突撃する?」
扉の前でヒルデガルドが聞いて来た。
「モンスターハウスは厄介だが、よく当たりの宝箱が見つかると聞いた事がある」
ガブリエラはそう言う。
「とりあえず部屋の中の魔物を見て決めるにゃ」
タマが扉に手をかけた。
ぎいっ
モンスターハウスの中は薄暗い…
『ぶほっ、扉を開けたら益々加齢臭が!』
おいっ、魔物の体臭を加齢臭言うな!
『うあっ、半裸のオッサンがいっぱい!』
暗視モードを使ってるらしいメカ娘が中を覗き込む。
「アレはオッサンじゃなくてトロールにゃ!」
部屋の中の暗さに合わせて猫目をまん丸にしたタマがメカ娘に突っ込む。
私も
獣の皮らしきモノを腰に巻いただけの
トロール共はこちらを見て、乱食い歯を剥き出しにした醜い顔でげひげひ笑っている。
「トニー様、どうしますか?」
腰の長剣を抜いたガブリエラが聞く。
「こうすれば良いのよ」
とんっ
『あ゛』
ヒルデガルドがメカ娘の背を押し、メカ娘がモンスターハウスの中に一歩踏み込む。
ぴしゃっ
タマがすかさず扉を閉めた。
メカ娘一人がモンスターハウスの中に閉じ込められる。
『……!』
どかっ ばきっ げしっ
『…!……!!』
ごきゃっ めきゃっ がちょん
モンスターハウスの扉の向こうから激しい戦闘音が聞こえて来る。
しかし、モンスターハウス内の全ての魔物を倒すまでこの扉が開く事はない…
『……!』
ごしゃっ、ぐしゃっ
メカ娘、とりあえず頑張れ。
『……』
「静かになったにゃ?」
扉の向こうから戦闘音が聞こえなくなった。
「戦闘が終わったのなら扉が開く筈」
剣を片手に構えたガブリエラが扉に手をかける。
ぎいっ
開いた!
『
魔法の灯りでモンスターハウスの中を照らす。
死屍累々…メカ娘に撲殺されたトロールの死骸が積み重なっている。
床に落としたスイカのように頭の中身をぶちまけたヤツやら、ミンチみたいになってるヤツまで…
トロールの死骸の真ん中にメカ娘が倒れていた。
全身、トロールの返り血に塗れていて、手に持った
「やられたのか?」
まだメカ娘の事を良くわかってないガブリエラが心配そうな声を出す。
「たぶん、臭すぎて気絶してるにゃ」
野生の勘なのかタマはメカ娘の事を良くわかっている。
「ちょっとメカちゃん、大丈夫?」
ヒルデガルドが倒れてるメカ娘を足の爪先でチョンチョン突っつく。
『なんであたしだけ閉じ込めるんですかー!』
ガバッとメカ娘が身を起こした。
なんだ、元気じゃないか。
『部屋いっぱいの半裸のオッサンの加齢臭やら口臭やら変な汁の臭いやらで死にそうになったんですよ!(怒)』
大丈夫だ、臭いからって死んだヤツはいない、それとトロールを半裸のオッサン言うな。
「宝箱にゃ!」
半分ミンチになったトロールの死骸が積み重なる部屋の中心にゲームに出て来るような金属の枠で補強された木箱があった。
タマが罠が仕掛けられていないか調べる。
「どうだ?」
ガブリエラがタマに訊ねる。
「罠は仕掛けられてないにゃ」
かぱっ
タマが宝箱の蓋を開ける。
「なんにゃ、コレ?」
「魔道具なのか?」
タマとガブリエラが覗き込む宝箱の中にはなんだか見覚えのあるモノが入っていた。
『何でしょー、コレ?』
メカ娘が宝箱の中から“○ァブリーズ”を取り出した。
○ァブリーズだよな、アレ?
「コレはこう使うのよ」
しゅっ しゅっ
ヒルデガルドがメカ娘からプラ容器を奪うと、メカ娘のメイド服に何度か吹きかけた。
『うわー、なんか臭いのが無くなりました~♪』
ヒルデガルド、お前の前世は日本人だろ…
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