第45話 土属性まほー

『あーす・ばれっとぉ!』

ぶんっ ごしゃっ!

メカ娘が投げた石弾がオークの頭部を吹っ飛ばす。


「な、なんで君は投石する際に呪文らしきモノを唱えるんだ?」

ガブリエラが不思議そうに聞く。


『だって、土属性まほーで戦ってるっぽくてカッコいいじゃないですかー』

案の定、メカ娘は何も考えていなかった…


迷宮ダンジョンの二階層目、階層フロアの最奥にあった階段を降りた先は一階層目と同じ様な洞窟状の通路が続いていたが、この階層はトラップが減った代わりに度々魔物と遭遇するようになった。


『社長さん、次は槍っぽいの作ってくらさい』

調子にのって石弾の形まで指定して来たぞ。


空間収納インベントリに在庫してある鉱石くずを錬成して長さ1mくらいの手槍を作って渡してやる。


「にゃー、トニーまた来るにゃ!」

メカ娘の投石ばれっとで顔面を潰されたオークの死体が、ダンジョンに吸収された後の床に残された魔石とドロップアイテムを拾いに行っていたタマが駆け戻って来る。


『ごあああっ!』

体高2.5m程の大鬼オーガがこちらに向かって駆けてくる。


『あーす・らんすぅ!』

びゅんっ どすっ!


またメカ娘が土属性魔法っぽい呪文?と共に石槍らんすを投擲する。

今度はオーガの首にぶっすり刺さった、さすがにたまらず倒れ伏す。


『あたしの絶好調!』

お前のは魔法じゃなくて魔砲だな…しゃべる対戦車砲。


「トニー、ドロップアイテムをしまって欲しいにゃ」

タマが拾って来た魔石とドロップアイテムを

空間収納インベントリにしまってくれと

差し出して来た。


「タマちゃん、何がドロップしたの?」

ヒルデガルドがタマの手元を覗き込む。

「オーガは角と牙、オークはタマ○ンがドロップしたにゃ」

「た、○マキン…」

タマのど直球に貴族育ちのガブリエラが頬を赤らめる。


「オークの睾丸タマキ○!」

ヒルデガルドの死んだ魚のような目が珍しくキラーンと光った。


オークの睾丸は精力剤や媚薬の原料になる、危ない目つきをした女錬金術師ヒルデガルドに渡すとロクな事になりそうにないのでさっさと空間収納インベントリにしまった。


「トニー様、こんな浅い階層でオーガと遭遇するのは…」

ガブリエラがキレイな眉をしかめる。

『そうだな、集団暴走スタンピードの影響なのか階層と出現する魔物が合ってないな』

このダンジョンは元々は一階層はスライム、二階層に現れるのはゴブリンやコボルトで、オークはともかくオーガが現れるのはもっと下の階層のはずだった。

何らかの異常がこの迷宮には起こっている。


『社長さん、次は“あーすあろー”やりたいんで矢を作ってくらさい』

君は気楽でいいね!


~・~・~


「ふぅーッ!」

盗賊シーフ技能スキルで索敵をしているタマが尻尾を逆立てている。


『何か見つけたのか?』

「トニー、この部屋がモンスターハウスっぽいにゃ」

タマが言うモンスターハウスは大量のモンスターが湧く部屋だ、しかも部屋の中の全てのモンスターを倒さないと出れないので気付かずに踏み込んだ冒険者が全滅したりする迷宮ダンジョンのトラップの一種だ。


ここは迷宮の三階層目、それまでの洞窟状から変わって、人工的な石造りの通路の壁に扉が並ぶ階層フロアになった。

扉を開けると小部屋になっていて、魔物がいたり、トラップがあったり、ちんけな宝箱があったり、全く何もなかったりもした。


その扉の一つの前でタマが警戒をしている。

クンクンと匂いを嗅ぐタマの鼻がピコピコと動く。

「部屋の中からたくさんの魔物の臭いがするにゃ」

犬獣人でもないのにタマは扉の向こうの魔物の臭いまでわかるのか…


『くんくん…う゛っ、なんかオッサンの臭いがする~』

いや、メカ娘よ、モンスターハウスにはオッサンはおらんやろ。

こいつの嗅覚センサーはかなり高性能な筈だが、中身の人がポンコツだと…

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