第43話 新たな依頼

「しゃちょ~♪」

ご機嫌なヒルデガルドが私の手と恋人繋ぎをして、更に腕にしがみついている。

歩き難いがヒルデガルドにモルゲンステルンで殴られるよりはマシだ。


反対側はタマが手を繋いでいる。

溢れたガブリエラはちょっとムスっとした顔をして一歩後ろを歩いている。


メカ娘が気を使って、あたしと手を繋ぎます?とか聞いてるが別にガブリエラは仲間外れで寂しいんじゃないからな、私の男としての魅力が罪なだけだぞ。


それとメカ娘、お前は手を繋ぐな、ガブラエラの手を握り潰しそうで見ててハラハラするから…


私たち5人はガブリエラの冒険者登録、ガブリエラとタマのパーティー登録の為に冒険者ギルドに向かっている。



「トニー・タスーク」

冒険者ギルドに入った途端、副ギルド長のアイシャにチョイチョイと指でジェスチャーされて呼ばれた。


ブルネットの髪の年増美女にベッドに誘われるのは有りと言えば有りだが、アイシャからの誘いは厄介事の予感しかしない。


冒険者ギルドの二階のテーブルやソファーなどが置かれた応接室のような部屋に招き入れられた、実際に来客との応接や冒険者との打ち合わせなんかに使ってるんだろう。


さっさとソファーに座った私の隣を狙ってヒルデガルドとガブリエラとタマが無言で争っている。

結局、ヒルデガルドは私の左隣、ガブリエラが私の右隣、タマは私の膝の上で丸くなっている、お前らな!


「くすっ…仲が良いわね」

対面のソファーに座ったアイシャが妖艶な笑顔を見せる。


『ええっと、あたしは?』

出遅れて座る場所のなくなったメカ娘がうろうろしていたので空間収納インベントリから椅子替わりに短く切った丸太を出してやった。

『なぜ丸太!?』

いや、お前の体重0.5tだとソファーだろうが椅子だろうが強度が持たないだろ、今も冒険者ギルドの床がミシミシいってるし…


まだ名前を知らない犬獣人の新人受付嬢が全員の分のお茶を用意してくれて、部屋を出て行く。


「貴方達『タスーク・ファミリー』を呼んだのはね、ちょっとした依頼を受けて欲しいのよ」

ほら来た、ってどうせトンでもないヤツだろ。


予想通り、アイシャの話によると今回の集団暴走スタンピードの原因と目されるダンジョンが街の近くにあり、その調査と魔物の間引きをして欲しいという依頼内容だった。


「他の冒険者は?AランクやBランクのパーティーも居たろ」

うちのパーティーは冒険者としては初心者だぞ。


集団暴走スタンピードからはぐれた魔物がまだ街の近く彷徨いているから、それらの駆除をするのと、念のため街の防衛にも戦力を残さないといけないでしょ、だから少人数でダンジョンに突入出来そうなのって貴方のパーティーくらいなのよ」

ちっ、前回少し

まあ、鉄人アイアンアーマーとメカ娘で戦力的にはなんとかなるか、ヒルデガルドのアンデッドグリフォンもいるし。


「どうする?」

「しゃちょ~が行くなら行く」

「騎士団の訓練で迷宮には何度か入った事がある」

「迷宮の罠の発見や解除はタマに任せるにゃ」

『えーと、えーと』

一人迷ってるヤツ、お前は強制参加だ、うちのパーティーの主戦力だからな!


その後、迷宮の位置や出て来る魔物の情報などをアイシャから説明され、ガブリエラとタマのパーティー加入の手続きとガブリエラの冒険者登録を一階の受付カウンターでした。


騎士爵のガブリエラは最初からC級で登録された、貴族特権か?

いや、騎士団に入るのには厳しい試験があるからだそうだ。

(騎士団にコネで入ったヤツがいないとは言わないが…)


ちなみにタマはC級の冒険者だった。

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