第31話 集団暴走②

びゅんっ びゅんっ

メカ娘が遥か遠くを街に向けて進んで来る魔物の群れにくず鉱石を固めた石弾を投げつけている。


最初の方は遠すぎてよく見えなかったのだが、魔物の群れが近づいて来たので石弾が魔物に命中する様が見えてきた。


びゅんっ どぱんっ ぐしゃっ

うーん、投擲って言うより50㎜対戦車砲って感じ?

ゴブリンとかオークとか直撃したヤツだけじゃなく、その後ろにいたヤツも数匹まとめて

バラバラに吹き飛んでる…


私達の左右に展開している高ランク冒険者パーティーの目が点になっていた。


『社長さん、弾が無くなりました!』

くず鉱石から作った石弾を一山ほど出したんだがもう撃ち尽くしたか。


「“コマンド”、光学兵器スタンバイ!」

『んんっ、なんか目の前にばってんが?』

「その照準線ばってんを魔物の群れの中央にくるようにを動かすんだ」

『群れの中央、群れの中央…おっけーです!』

「“コマンド”レーザー発射!」

『びーむ!』

カッ

メカ娘の両目から強力なレーザービームが発射された!


じゅわっ

魔物の群れの中央部が直線状に焼き払われる。

『ぎゃああああっ、目が!目がぁ~』

メカ娘が両目を押さえて地面をゴロゴロ転がっている…眩しかったんだろう。


なんだか左右の冒険者パーティーがジト目をしているけれど、気にしない、気にしない…


『社長さーん、目がチカチカして見えません~』

半泣きのメカ娘が両目を押さえたまま立ち上がる。

「よーし、良く頑張った、もう後退して良いぞー」

ぐーるぐーる

「後はわたし達に任せて」

ぐーるぐーる

『あのー、社長さん、ヒルデさんなんであたしを回すんですか?』


「よし、目をつぶったまま街に向かって走れ!」

「戦闘に巻き込まれないように全力でね!」

『ハイっ!』

私とヒルデガルドは目が見えないメカ娘を魔物の群れのいる方向にリリースした。


『わああああっ』

ドドドドド

メカ娘が魔物の群れに突撃して行く。


どがっ めきょっ げしっ ごしゃっ

メカ娘の進路上にいた魔物は敢えなくミンチになっていった…



「射てーっ!」

ひゅん ひゅん

スタンピードの最前列が弓矢の射程内に入った、すかさず号令がかかり矢倉や街壁の上から矢が魔物に浴びせかけられる。


矢が当たったゴブリンやオークはバタバタ倒れるが、オーガやトロルなどは肩や胸に何本もの矢を受けながらもそのまま前進して来る。



『やれやれ、メカちゃん一人で三割くらいは減らしてくれたかな?』

戦闘にそなえて鉄人アイアンアーマーのヘルメットを被った社長トニーが呟く。


「しゃちょ~、ついでにここでアレ処分しちゃっても良いよね?」

ヒルデガルドが悪い笑顔を見せながら聞く。


『そうだな、をしてもらうか…』

「じゃあ、わたしのウルフを出してね」

『わかった』

空間収納から四体のアンデッドフォレストウルフを出す、コイツらはヒルデガルドの護衛だ。


『オオオオオ!』

冒険者が布陣する左翼からが雄叫びと共に突撃する。


「おいっ、やめろ!」「突出するな!」「死ぬ気か!」

周囲の冒険者が止めるのも聞かず、魔物の群れに突っ込んだ。


「なんて勇敢な!」「全く死を恐れてないぞ!」

「(アンデッドだからね)」←ヒルデ


ドカッ バキッ ザシュッ

ゴブリンの棍棒で殴られ、オークの斧で斬られても怯まずに魔物を斬りまくる三人のアンデッド。

しかし、数の暴力には敵わず三人は倒れ伏した。


「ああっ、殺られた!」「くそおっ、弔合戦だ!」「おうっ!」

「(あらっ、しゃちょ~、なんだか冒険者達の士気が上がったわ?)」

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