第32話 集団暴走③

魔物との戦闘は近接戦に移行していた。


ポウッ ポウッ!

『ごふっ!』『げくっ!』

雑魚は冒険者達に任せて社長の着る鉄人アイアンアーマーはガントレットの発射口から光弾を発射してオーガやトロルなどの耐久性HPの高い大型の魔物の頭を吹き飛ばしている。

コイツらは“再生”のスキルを持っているので少々の傷なら直ぐに回復してしまうからだ。


『ヒルデガルド、私の後ろを離れるなよ!』

「ハイっ、一生離れません!」

『一生でなくて良いから!』

チタン合金製の鉄人アイアンアーマーの装甲に護られた社長と違い、ヒルデガルドは紙装甲だ、社長はそこを気遣ったのだがヒルデには“私から離れるな”としか聞こえていない。


『ぎしゃあああっ!』

「ぎゃっ!」「おわっ!」

前衛で戦っていた冒険者が数人、上空から突っ込んで来たグリフォンに跳ね飛ばされた。

獅子の胴体と鷲の頭部と羽根を持つ強力な魔物だ。


「しゃちょ~、アレ欲しい!」

護衛のアンデッドフォレストウルフが、オークなんかとの戦闘でだいぶボロボロになってきたヒルデガルドがグリフォンを指差して頼んでくる。


『アレ、Aクラスの討伐対象だぞ』

ポウッ ポウッ

『ぎしゃあああ!』

『ほら、やっぱり魔法耐性高い~』

社長の撃った鉄人アイアンアーマーの光弾はグリフォンの体表の羽を数枚焦がしただけだった。


「でも、しゃちょ~なら倒せるよね?」

『出来る事なら他の冒険者に任せたいがな』

ヒルデガルドの期待の視線を背に受けて、こちらを警戒しているグリフォンにアーマーの右手を伸ばす。


ガシャッ

前腕の一部の装甲が開いて筒状の小型ランチャーが迫り出した。


「頭は潰しちゃ駄目よ」

『わかってる!』

脳を破壊してしまってはいくらヒルデガルドでも死霊術ネクロマンシーで操れなくなる。


シュバッ ドーン

『ぐええっ!』

アーマーの前腕のランチャーから発射された小型ミサイルがグリフォンの胸部を直撃する。

生命維持に重要な臓器をいくつか吹き飛ばされたグリフォンが倒れ伏した。

やっぱり魔法耐性の高い魔物には物理ミサイルが効くな。


「やった♪」

テテテッとヒルデガルドがグリフォンの死骸に駆け寄る。

私から離れたら危ないって、おい!


心配を他所にヒルデガルドは“死霊術の杖”でべしべしグリフォンの頭をしばいている。


『くけえええっ!』

そして死んだ魚のような目をしたアンデッドグリフォンが起き上がった。


「よおし、薙ぎ払え!」

ヒルデガルドが死霊術の杖を振る。

『くけええええっ!』

アンデッドグリフォンは魔物の群れに襲いかかった!


「あれっ?」

アンデッドグリフォンが突撃したため、数匹の魔物オークの間にポツーンと独りヒルデガルドが立っていた…いや、完全に魔物に取り囲まれている。

『ぐへへ…』『ぶひひ…』

オークどもは人族の女が色んな意味で好物だ、ヨダレをたらしてヒルデガルドを見ている。


「しゃちょ~、助けてー!」

『護衛の魔物を突撃させるなよ!』

それに、さっきの一生離れない!はなんだったんだよ…


ピピピピ ガシャ ガシャ ドドドドッ

ロックオンしたヒルデガルドの周囲の魔物オーク達を、鉄人アイアンアーマーの両肩に装備したランチャーから斉射した複数のマイクロミサイルで倒して、ヒルデガルドを助け出した。


~・~・~


街の北 5km地点…


『社長さーん、ここどこー?』

やっと目が見えるようになったメカ娘が独りおろおろしていた。


『街どこー?』

街の方に向けて逃げてたつもりが、明後日の方角に突っ走ったのですっかり現在位置がわからなくなっている。


『えー、あたし迷子~?』

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