第29話 証拠隠滅
『しゃ、社長さん、コレどーしましょう?』
目をぐるぐるさせているメカ娘の足元に死体が三体転がっている。
冒険者くずれのスキンヘッド君とその仲間だ。
スキンヘッド君は首の骨が折れ、変な角度に顔が向いている。
盗賊風の男は顔面が陥没していて、細身な弓使いは腹のキズから内臓が少しはみ出している。
メカ娘が襲って来た三人を返り討ちにしたのだ、て言うか怖いから目をつぶってちょっと暴れただけでこうなった。
『あ、あたし、人殺しで捕まったりするんですか?』
メカ娘はオロオロしている。
いや、キミ、“教団”のアジトで奴らを皆殺しにしたでしょ、何を今更。
「コイツらから襲って来たんだし、たぶん正当防衛って事になると思うよ」
『たぶんってぇ~』
いや、まあ、万一って事があるから、絶対に大丈夫とは言えないだけだから。
「それに、証拠の死体はこのまま放って置いたら魔物が片付けてくれるだろうし」
『えー、でも魔物に食べられちゃう前に誰かに見つかったらー?』
まあ、その確率も0じゃない。
『こ、コレ、なんとか治せないですかねー?』
よいしょ、とか言いながらスキンヘッド君の首を真っ直ぐにしてもダメだよ。
「仕方ないわねー、とりあえず死んでない事にする?」
ヒルデガルドが灰色のローブの下から愛用のねじくれた杖を取り出した、
『お、お願いしますっ!』
「本当はあんまり人間の眷属は造りたくないんだけど…」
コンコンとヒルデガルドが杖で頭を叩くとスキンヘッド君の首が真っ直ぐになり、盗賊風と弓使いのキズが治っていく。
やがて三人は魚の死んだような目をしてゆらりと立ち上がった。
『やったー、治ったぁ!』
いや、ぴょんぴょん跳び跳ねて喜んでるけど治って無いからな。
「うーん、やっぱりクズは低級なゾンビにしかならないわねー」
そう言いながら、ヒルデガルドは私の方をチラっと見た。
ん、なんだ?
「しゃちょ~なら、上位のヴァンパイアとかリッチくらいまでイケると思うんだけどなぁ~」
背筋がぞっとするから、死んだ魚のような目をしてそんな事を言うんじゃない!
「やーねー、大丈夫よ、わたしと社長の寿命が尽きる時に、共に永遠を得る為にしかしゃちょ~には死霊術は使わないわよ」
いや、死んだ魚のような目でそんな事言われても安心出来んわ。
て言うか、私は寿命では死なせてもらえずに
私は永遠にお前から逃れられないの?
いや、こっち見てニコリって笑顔を向けられても…
~・~・~
街の門をヒルデガルドの三体の
まあこの街は衛兵の検問なんてギルドカードを確認するくらいが精々だからな。
そのまま、冒険者ギルドの建物に入って行く。
あの格好が演技ならヒルデガルドは中々の演技力の持ち主だ。
まあ、これでアリバイは完璧だな。
私達の方は依頼完了の報告に受付へ向かった。
うさ耳受付嬢のラヴィが窓口からこっち来いと手を振っている。
『い、依頼のほ、報告に来ましひゃ!』
メカ娘、噛んでるし、凄い挙動不審だし…
「ギルドカードをお預かりしますね」
『ひ、ひゃいっ!』
ほら、うさ耳受付嬢が怪訝な顔してるし。
メカ娘、お前怪しすぎるぞ。
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