第27話 薬草採取

「毛皮にキズも無いし、肉の鮮度も落ちてないから高く査定出来ると思うけど、これだけ大きいと解体にも少し時間がかかるわね、今は討伐報酬の支払いだけで素材の買取りの査定は少し待って貰って良いかしら?」

アイシャがキングボアの巨体を見ながら頼んでくる。


「手持ちの金が無いわけじゃないからそれで別に良いぞ」

「じゃあ、買取り分の支払いは今日の夕方以降にお願いするわ、ラヴィ、討伐報酬の支払いをお願い」

「ハイ、副ギルド長」

ふうん、うさ耳受付嬢の名前はラヴィって言うのか。


キングボアの解体は作業員に任せて私達はうさ耳受付嬢のラヴィと受付カウンターに戻った、アイシャはそのまま素材の査定をするようで解体場に残った。


「すいません、あのサイズのキングボアだとBランク相当の討伐対象なんですけど、この依頼はCランクの依頼なのでそんなに報酬が高くなくて…」

ラヴィがすまなさそうに言う。


「いや、偶々道中に現れたのを倒しただけだから気にする事ないぞ」

「(偶々でBランク討伐対象を倒せるんだ…)」

普通の冒険者なら中堅Cランクどころのパーティーでも全力で死闘を繰り広げてやっと倒せるくらいの魔物だ、ラヴィの中で『タスーク・ファミリー』の評価が一段階上がった。


「こちらが討伐報酬になります」

ラヴィが数枚の金貨をトレーに載せて差し出した。

「金貨5枚か…じゃあ、コレは依頼書を探して来たメカちゃんに」

『ええーっ、そ、そんな大金をあたしに!』

見た目はメイド服を着た完璧美少女だが中味は田舎の村娘だからか金貨にビビっている。


「メカちゃんが依頼書を探して来なかったら無かった収入だし…」

『ううっ、そんな大金怖くて持てないから、社長さんが預かって下さい~』

「じゃあ、収納しとくから…」


「ねえ、しゃちょ~、夕方までどうするの?」

ヒルデガルドが聞いてくる、今はまだ午前中だ、時間がかなりある。


「錬金術師の私達は魔物の討伐よりも魔法薬ポーションを売った方が割りがいいし、森に薬草でも採りに行くか?」

「そうね、しゃちょ~がそれで良いならわたしも行く♪」

『あっ、それなら採取の依頼を探して来ます!』

いや、自分達で使う分だから依頼は受けないでも、と言おうとしたが…

ズンズンズン

「のわっ!」「うおっ!」「ぐえっ」

依頼書に群がる冒険者達をパワーで跳ね退けてメカ娘はボードに突撃して行った。


~・~・~


「“上薬草”が群生してたぞ」

「しゃちょ~、見て見て、“魔力草”がこんなに♪」

社長さんとヒルデさんが採取用の麻の布袋を貴重な薬草でパンパンに膨らませている。

あたしの布袋の中には普通の薬草がちょっぴりに山菜と茸が少々…


『なんで二人とも希少な薬草をそんなにホイホイ採取出来るんですか?』

何か秘密があるハズ!


「私達は高レベルの錬金術師だからな」

「わたしやしゃちょ~は“鑑定”持ちなのよ」

うえっ、鑑定ってスゴい便利なスキルじゃないですか!


『鑑定って、商業ギルドでも冒険者ギルドでも“鑑定士”として引く手あまたじゃないですか!』

どこでも高給で雇ってもらえますよ!

「いや、メカちゃん、私は企業を経営してるんだが…」

「わたしも一応大学の教授をしてるんだけど…」

『そ、そーでした…』

あたしの育った村だとスキルを得て鑑定士にでも成れればエリートコースでしたけれど、こちらの二人は超エリートなんでした。

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