第26話 討伐依頼

冒険者カードを受け取った私達はギルドの一階に降りてきた。


『わーっ♪』

絵面的には“てててっ”て感じだが実際には“ズシズシズシン”と地響きをたててメカ娘が依頼書が貼られたボードに駆け寄る。

「のわっ!」「うおっ!」「ぐえっ」

依頼書に群がる冒険者達をパワーで押し退けながら最前列に割り込んだ。

おいっ、依頼とか受けないからな!


暫くしてメカ娘が依頼書を片手に戻って来る。

受けないってのに。

「社長さん、キングボアの討伐って依頼がありましたよ!」

キングボア…あっ、狩ったな?


「メカちゃん、良いのを見つけて来たわね」

『えへへーっ』

ヒルデガルドが褒めるのに照れるメカ娘。


「じゃあ、キングボアを納品して来るか」

そう言って私は受付に向かった、二人もついて来るようだ。


「魔物を討伐したんだが、事後の依頼受付でも大丈夫かな?」

昨日、実家らしい宿を斡旋してくれたうさ耳受付嬢の窓口で尋ねる。


「ハイ、大丈夫ですよ、どちらの依頼ですか?」

『ハイっ』

地元冒険者を押し退けて依頼書を奪って来たメカ娘が受付嬢に手渡す。


「うえっ、キングボア?」

依頼書を確認したうさ耳受付嬢が目を丸くする。

まあ、昨日登録しに来た新人冒険者が討伐して来る魔物じゃないわな…


「ギルドカードを預りますね」

私達三人のギルドカードを渡す。

「昨日、初登録なのに…(いきなりDランク、これは期待の新人なのかも?)」

うさ耳受付嬢の目がキラリと光る。


「えっと、討伐証明の部位は?」

「どこが討伐証明部位かわからんから丸ごと持って来てるんだが」

「え゛っ?」

魔物の討伐を証明する部位は牙だの角だのと魔物の種類によって決められているが、プロの冒険者じゃないのでキングボアの討伐証明部位なんか知らん。


「ま、ま、丸ごとですか?」

「ここに出す訳にはいかないだろ?」

「ちょ、ちょっとお待ち下さい、副ギルド長~!」

ガタッと席を立ったうさ耳受付嬢が建物の奥に駆けていく。


「しゃちょ~、どうしたの?」

ヒルデガルドがこてんと首を傾げる。

「キングボアはデカイからな…」

『あー、ここでは出せないですよねー』

ここで出せば受付カウンターが壊れる。



暫くして、うさ耳受付嬢が副ギルド長のアイシャを連れて戻って来た。

「討伐依頼は受理したわ、丸ごと持って来たのよね、じゃあこっちの解体場に出して貰うわ」

そう言うとアイシャはギルドの建物の横のドアへ私達を案内した。


ドアの向こう側はそこそこ広い解体場になっていた。

作業台の上や天井のフックに吊るされたりした解体中の魔物が何体もある。


「ここに出してくれる?」

アイシャが広く空いたスペースを指差す。


ズシン

空間収納インベントリから巨大なキングボアを取り出して床に置いた。


「ひえっ!」

うさ耳受付嬢が悲鳴を上げた、魔物なんか見慣れているだろうに…


「貴方の空間収納インベントリにはこんな巨大な魔物が入るのね…」

いや、アイシャ、これくらい余裕だぞ。


「な、なんだ?」「キングボアじゃないか…」「ウソだろ、丸ごと?」

解体場で作業をしていたギルドの職員が集まって来てキングボアを見ている、そんなに珍しいか?


「毛皮にキズ一つ無いわね、どうやって倒したの?」

アイシャが困惑顔で聞いてきた。

「まあ、魔法でちょちょいと」

「ちょちょいとって、このサイズのキングボアだとBランクの討伐対象になるわよ!」

いや、そんなにキレなくても…

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