第23話 旅人の宿

『Zzz…』

宿の床板をぶち抜かないようにと敷いた鉄板の上に敷いた布団でメカ娘がスヤスヤ眠っている。


宿から貰った洗面器に入ったお湯で顔と手を洗い、“洗浄クリーン”の魔法で身体と衣服をキレイにしたヒルデガルドが、いつも着ているぶかぶかの灰色のローブを脱いでベッドに潜り込んだ。


「しゃちょ~、かもーん」

ベッドに横になったヒルデガルドが片手でシーツを持ち上げて入って来いと誘う。

ダメだ、アイツとヤったら終わる…


ちなみにこの部屋にはちゃんともう1つ私用のベッドはある。


「先に寝てろ、私はコレを修理してから寝る」

“教団”のアジトから脱出する際には無傷だったのだが、その後にメカ娘に馬鹿力で抱きつかれて壊れた鉄人アイアンアーマーの各部を空間収納から取り出して床に並べる。


「むーっ」

ヒルデガルドが膨れているが無視、無視。


鉄人アイアンアーマーの頭部ヘルメットや腕部、脚部は破損していないが、メカ娘のパワーでさば折りをされた胴体部分が酷く破損していた。

チタン合金の装甲板に各種防護魔法を付与してあるというのに、メカ娘は抱き締めただけで破壊するとは恐るべきパワーだ。


チタン合金製のひしゃげた装甲板やステンレスやジュラルミン製の部品を錬成で治していく、完全に壊れた部品なんかは空間収納内の金属のストックを使って替わりのモノを作った。


修理するついでに鉄人アイアンアーマーを改造したりしていたら深夜になった、自分の身体に“清浄クリーン”の魔法をかけて魔導具の灯りを消すと空いている方のベッドに潜り込んだ。


~・~・~


『ひああああっ!』

んっ、メカ娘の声か?


『エッチです、エッチぃなのです~』

何を騒いでいるんだ?

ムニッ

んっ?

何か柔らかいモノが腕に巻き付いて…


「Zzz…」

私のベッドの中に半裸のヒルデガルドがいた!

幸せそうな顔をして私の右腕にしがみついて寝ている。

うーん、こいつ目を閉じてたら美人だよな。

さらさらの銀髪に抜けるように白い肌、妖精エルフのように美しく整った顔立ち…死んだ目をした死霊術師ネクロマンサーだけど。

しかし、いつの間にこっちのベッドに潜り込んだんだ?


『ひああああっ!』

あー、この状態を見てメカ娘は興奮喜んでしてるのか…

両手を顔に当てて目隠しをしてるが、指の間からこっちをガン見している。


~・~・~


『昨夜はお楽しみでしたね…』

ジト目のメカ娘が言ってくる。


「せ、責任取ってよね、よよよ…」

なんもしてねーよ!

ヒルデガルド、下手な演技すんな。

第一、お前から私のベッドに潜り込んで来たんだろ…


「同衾したのならもはや夫婦!」

開き直んな!


「朝飯を食いに行くからさっさと着替えろ」

ため息をつきながら二人を促す。


「しゃちょ~、わたしが着替えるとこ見る?」

黒のブラとショーツだけを身につけただけの半裸のまま、ヒルデガルドはするりとベッドから出た。

『ひゃあ~』

またメカ娘が騒ぎ出す。


うん、スタイルは良いな、ちょっと胸は小さめだが…


「じっと視られると恥ずかしいかも…」

くっ、見てはいけないと思いつつ、ついヒルデガルドに目をやってしまう自分に自己嫌悪を感じる。


宿の裏庭にある井戸で顔を洗い、宿の食堂で

黒パン、目玉焼き、腸詰め、野菜スープといったメニューの朝食を食べながら今日の予定を考える。


先ずは冒険者ギルドにギルドカードを取りに行かないとな…

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