第20話 冒険者ギルド

『なんで冒険者ギルドに行くんですか?』

私の隣を歩きながらメカ娘が聞いてくる。


「君ら身分証明書無いだろ、ヒルデガルドも王都でないとギルドカードの再発行は出来ないみたいだし」

「ヒ・ル・デ!」

はいはい、わかった、わかった、愛称で呼べって言うんだろ…呼ばないがな。


私の右腕に抱きついているヒルデガルドがジト目で睨んでくる、だからその死んだ魚みたいな目はやめなさい。


「メカちゃんは冒険者ギルド以外の他のギルドに登録出来そうな特技とかあるの?」

死んだ魚みたいな目をしたままでヒルデガルドがメカ娘に訊く。

『他のギルドに登録出来そうな特技?』

メカ娘がコテンと首を傾げる。


「商業ギルドとか職人ギルドとか、魔術師ギルドもあるし、回復魔法が使えたら教会なんかも…」

『か、家事手伝いギルドって無いんですか、無いでしょうね、ははっ…』

なんか自己完結したみたいだが、無いな、家事手伝いギルド。

※社長もヒルデガルドも魔術師ギルドにも加入しています、社長のギルドカードは空間収納内にありますが、ヒルデは“教団”に拐われた時に紛失してます(再発行については錬金術ギルドと同様に王都で…)。


「じゃあ登録出来るのは冒険者ギルドしか無いわね」

『うー、あたし戦闘力0なのに冒険者ぁ~』

いや、今の君は大抵の魔物を撲殺出来るから…


『ても、冒険者ってなんか憧れてたから頑張る!』

いや、身分証の為に登録するだけだからね。


~・~・~


この街の冒険者ギルドの建物は錬金術ギルドに比べると大きな建物だったが、木造でやや古びていた。


西部劇に出てきそうなスウィングドアを開けて中に入る。


建物の外見どおり中は広かった、右手の壁に依頼用紙が貼られた大きな掲示板、奥に受付の窓口が四つ並んだカウンター、左手は椅子やテーブルが並べられた飲食スペースのようだ。

うん、ラノベに出てくる冒険者ギルドらしい冒険者ギルドだ。


四つある窓口には長い耳をした兎獣人の可愛い受付嬢、とんがり耳のエルフの美人受付嬢、垂れ耳の犬獣人の新人受付嬢、人族のベテラン受付嬢がいてその前に冒険者達が列を作っている。

エルフ嬢の列が一番長いが、長命種の彼女エルフの場合、見た目と違って一番のベテランって事もあるんだよなー、などと考えながら誰も並んでない人族のベテラン受付嬢の窓口に向かう。


窓口が空いてるから?

いや、背後のヒルデガルドがダガーかなんかで背中をチクチク突っついてくるんだよ!


「冒険者ギルドにようこそ、本日はどのようなご用件でしょうか?」

年増だが色っぽい受付嬢がにっこり微笑みながら聞いてくる。

こら、ヒルデガルド背中をチクチクすんな!


「この二人の冒険者登録をしたいんだが」

「三人よ、三人!」

ヒルデガルドが訂正する、私は身分証あるんだから登録する必要ないだろ?


「登録料がお一人様銀貨一枚必要なのですが」

「はい、これでいいわね」

ヒルデガルドが“生活費”から銀貨を三枚取り出して受付嬢に渡す。


「では、こちらの用紙に必要事項を記入して下さい、代筆が必要なら遠慮なく言って下さいね」

私とヒルデガルドはメカ娘を見た。

『自分の名前くらい書けます!』

いや、お前、名前しか書けないのか?

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