第19話 買取り

「ふおおおっ!」

空間収納から取り出した魔法薬ポーション高級魔法薬ハイポーションを鑑定の魔導具にかけた受付嬢狐獣人が目を丸くしている。

ちなみに鑑定の魔導具は弊社の製品な。


「す、スゴいです、ポーションもハイポーションも高品質です、流石はトニー様!」

「そのポーションわたしが作ったんだけど…」

死んだ魚のような目をしたヒルデが受付嬢をジト目で見る。

確かに高品質のポーションはヒルデガルドが作ったヤツだ、私も作れるけどな…


「えっ?」

「作業を分担したんでな、私が作ったのは魔法薬ポーション瓶の方だ」

「ぐほっ!」

再度、鑑定の魔導具に目をやった狐娘が変な声を出す。

「ぽ、ポーション瓶に品質劣化防止の効果が付与されてるんですけどー!」

まあ稀代の魔導具師ですから。


「ええっと、この品質でしたらポーションが大銀貨三枚、ハイポーションが金貨一枚になります」

普通のポーションが大銀貨二枚、ハイポーションが大銀貨五枚だからポーションが五割増し、ハイポーションは倍で高く買い取ってくれるようだ、いや容器代込みだとそんなもんか…


ちなみにこの世界の通貨は、

銅貨10枚=大銅貨(約100円)

大銅貨10枚=銀貨(約1,000円)

銀貨10枚=大銀貨(約10,000円)

大銀貨10枚=金貨(約100,000円)

金貨10枚=大金貨(約1,000,000円)

どうも前世の癖で円に換算して考えてしまうが、一般庶民なら金貨1~2枚あれば一月暮らせるくらいの価値がある。


私達の手持ちの在庫からハイポーションを5本、ポーションを10本買い取って貰った。

締めて金貨五枚と大銀貨三十枚。


「お支払は金貨八枚でよろしいですか?」

受付嬢がカウンターの奥の金庫へと立ち上がりながら聞いてくるので金貨一枚分は銀貨と大銀貨を混ぜて支払うように頼んだ。


「どうぞ」

小さな革袋に入った金貨七枚と少し大き目の布袋に入った銀貨、大銀貨の枚数を確認して受け取った。


いや、さっきまで暇そうにギルドの中をうろうろしていたメカ娘がカウンターにやって来て、七枚の金貨を何回も数えていた…えっ、金貨を見るのは初めて?

『辺境の寒村じゃあ銅貨、精々が銀貨ぐらいまでしか使わないし、大銀貨なんて税金を払う時にしか…』

年に一回しか一万円札大銀貨を使わないのかよ!

『社長さん、金貨を噛んでみて良いですか?一回やって見たかったんですよ~』

いや、今の君が金貨噛んだら歯形どころか金貨粉々になりそうだから止めて。


メカ娘に破壊される前に金貨の入った革袋を空間収納にしまってしまう。

『むーっ』

頬をぷくーっと膨らませて不満な顔をしても噛まさないからな!


銀貨の入った袋も収納…と、手を伸ばしたら直前でヒルデガルドの手がかっさらった。

「生活費は“妻”のわたしが管理するわね」

誰が妻だ、誰が!


「や、やっぱりお二人が王都から行方知れずになったのってだったんですね♪」

カウンターの中からワクワクした目で受付嬢が見ている。

「錬金術ギルド本部からお二人が行方不明だって回状が来てましたけど…ふーん、そーか、そーなんだ~♪」

こっちを見ながら口元をニヨニヨさせている。

違うからな!


「また買取りが有れば来て下さいねー、あっ、わたしハンナです、次回も是非ご指名を!」

帰り際に受付嬢がそう声をかけてきた。

このギルド、指名制とかあるのか?

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