第18話 錬金術ギルド
「しゃちょ~、宿に行きましょ、お泊まりでも御休憩でもいいから~」
ヒルデガルド、お前宿にナニしに行くつもりだ?
無事に街門を通過した私達は防壁から街の中へと石畳の敷かれた道を歩いていた。
「早く旅塵を洗い落としたいのよ…貴方の前ではいつも綺麗でいたいから♪」
後半の呟きは聞こえなかった事にする。
「宿に泊まる金が無い」
「えー、しゃちょ~、空間収納にお金持って無いの?」
「大金を持ち歩く必要がなかったんでな、小銭くらいしか入ってない」
さっき払った入街税の銀貨も何かのお釣りか何かがたまたま空間収納に入ってただけだ。
『じゃあ、またあのお家に泊まるんですか?』
メカ娘がなんだかワクワクした感じで聞いてくる。
「街中で勝手にあんな小屋を出したら衛兵に通報されるぞ」
『えー』
しょぼーんとするメカ娘。
田舎の村じゃあないんだから、石壁に囲まれた街の中に空き地なんか有るわけがない。
「しゃちょ~、お金どうするの?」
街中では自給自足って訳にはいかないからどうしても先立つモノが必要だ。
「錬金術ギルドで
「あー、わたしギルドカードの再発行もしてもらわないと!」
そういやヒルデガルドは身分証がなかったな。
“教団”に捕まった時に没収されたか、私も
街の中心部に近い辺りで錬金術ギルドの看板がある建物を見つけた。
この街の錬金術ギルドの建物はわりとこじんまりとした石造りの二階建ての建物だった。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付と表示されたカウンターにはまだ若い狐獣人の女の子が座っていた。
「
私はイケメンな声と笑顔で受付嬢に尋ねる。
「は、はいっ、ギルドカードはお持ちでしょうか?」
ギルドに加入していないと買取り額が税金分下がってしまう。
「これで良いかな?」
空間収納から取り出したギルドカードを受付嬢に渡す。
「ふえええっ、トニー・タスーク!」
受付嬢の狐娘が目を丸くして驚いている、ふふん、私は有名人だからな。
「し、失礼しました、トニー様がこんな田舎町に来られるとは…」
受付嬢がカードを返しながら謝ってくる。
「しかし、トニー様は半年も前に王都で行方知れずになったとギルド本部から…」
そうか“教団”に拉致されてからもう半年にもなるのか…
「ちょっと事情が・」
「しゃちょ~はわたしと駆け落ちしたの///」
デマを流すな!
「あ、貴女は?」
受付嬢がヒルデガルドを見て小首を傾げる。
「わたしはヒルデガルド、王立魔法学院の教授よ」
「ふええっ、で、でもその死んだ魚のような目は!」
やっぱ、そこで判断するんだな…
「わたしのギルドカードを紛失してしまったから再発行して欲しいのだけど、ヒルデガルド・タスークで」
勝手にうちの家名を名乗るな!
「あー、すいません、ギルドカードの再発行は他所だと本人確認が出来ないので発行したギルド支部でないと出来ないんです」
受付嬢が申し訳なさそうに言う。
そうか、王都のギルドでないと再発行出来ないのか。
まあ、死んだ魚のような目をした女なら他にもいるかも知れないからな…なんか背中に視線が刺さるな、ヒルデガルドのヤツ心が読めるのか?
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