第17話 街道
『社長さん、街道ですよ、街道!』
メカ娘が望遠モードで見つけた街道上でぴょんぴょん跳び跳ねて喜びを表している。
あ、ちょっと、君の重量(0.5t)で跳び跳ねると街道に穴が開くから止めなさい。
「さて、どっちに向かうか…」
街道はぽつぽつと疎らに樹が生えた草原の中を貫いて真っ直ぐ延びている、右を見ても左を見てもその先は地平線に隠れていて何処に続いているのかわからない。
アンデッドフォレストウルフ達がくんくん匂いを嗅いでいる街道上には、馬車が付けたらしき轍の跡が残っているので人の往来はあるようだが…
「わたしはこっちに街があると思うわ」
ヒルデガルドが自信満々で右の方を指す。
「じゃあ、こっちだな」
私は迷うことなく街道を左へと進み出した。
「……」
ヒルデガルドが魚の死んだような目のジト目で見てるらしい視線が私の背中に突き刺さるが、アイツ幸薄そうだからここは逆張りがたぶん正解だろ。
『しゃ、社長さん、ヒルデさんスゴい睨んでますよ~』
メカ娘が恐る恐る言ってくる。
「とりあえず、ヒルデが刃物を出したら教えてくれる?(汗)」
視線が突き刺さるのはともかく、背中に刃物が突き刺さるのは願い下げだ。
『社長さん、何か見えて来ましたー!』
メカ娘が望遠モードで街道の先に何かを見つけたようだ、やはりヒルデガルドの逆張りは正解だったな、街か村なら今夜は野宿をしないで済む。
暫く三人で歩いて行くと、辺境の街の特徴である石積みの防壁が見えて来た。
魔物や盗賊、時には戦争から街を護る為に、辺境では街のぐるりを高い石壁で囲っている。
「アンデッドフォレストウルフはどうする?」
コイツらは街のなかには連れて入れない。
「どうしよ、解体して毛皮にする?」
『えー、かわいそうですよ~』
メカ娘はいつの間にかウルフ達に情が湧いたみたいだ。
「空間収納に入るかな、おっ、入った」
“生き物”は空間収納には入らないが魔物の死体なら入れられるので、試してみたら
高さ5mほどの石壁の街道に面した側に、馬車が2~3台並んで通れる程の大きさの門があった。
警備兵らしい金属鎧を着て槍を手にした男が門前に二人立っている。
「身分証を」
私達が近づいて行くと、門番の一人が言ってきた。
「えーと、錬金術ギルドのギルドカードで良いかな?」
私は空間収納からギルドカードを取り出すと門番に渡す。
「ほう、あんた錬金術師か…」
カードを確認しながら門番が言う。
「で、そちらの二人は?」
「つ、妻です!」
『む、娘です!』
挙動不審な二人が私の左右の腕にしがみついて来る。
身分証を持ってないようだ…
「身分証が無いなら入街税が一人銀貨一枚だ」
どうやら身分証が無くても追い返される訳じゃないらしい。
「あ、貴方…」
『お、お父さん…』
しかし、二人とも一文無しのようだ。
右手にしがみつくヒルデガルドをふりほどいて、空間収納から銀貨を二枚取り出す。
「街を出入りする度に入街税がかかるからな、街の中で何れかのギルドに登録して身分証を作る事をお薦めする」
強面の割りに親切な門番が銀貨を受け取りながらそう説明してくれた。
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