第15話 錬金術

気がつくと土属性魔法で造った小屋の中でヒルデガルドに膝枕をされていた。

窓から朝日が射し込んでいる、夜が明けているようだ。


後頭部に感じるヒルデガルドの太ももの柔らかさが心地いい、しかもハーブか何かのようないい匂いがする。

だが、ふと見ると、なんだかヒルデガルドの顔が艶々している、昨夜何があったのか怖すぎて聞けない…


「しゃちょ~、気がついた? 痛いところとか無い?」

ヒルデガルドが愛しそうに私の黒髪を撫でる、これで死んだ魚みたいな目をした死霊術師ネクロマンサーでさえなければ惚れるかも知れん。


半身を起こして小屋の中を見ると、隅の方でメカ娘がぐでーっと寝こけていた。


ヒルデガルドと二人で徹夜とかの変なテンションとかで造ってしまったが、普通に飯は食うわ、無防備に寝るわで全然、人造人間アンドロイドらしくないなコイツは。



小屋の外に出ると野営地の周囲には額や首に風穴を開けた四体のフォレストウルフの死体が転がっていた。


「あれっ、フォレストウルフ? ラミアだかジャイアントフォレストスネークだかが襲って来たんじゃなかったのか?」

確か、私は昨夜は物凄い力で身体を絞めあげられて…


『申し訳ございませんでしたー』

んんっ、なんかメカ娘が土下座をしてる?




「コレ、解体して毛皮にでもするか?」

フォレストウルフの死骸を指差して言う。

「うーん、毛皮よりもわたし達の護衛にしましょう」

ヒルデガルドはそう言うとねじくれた杖を手にして死霊術の呪文を唱えた。


地面に転がっていたフォレストウルフの傷口が見る見る内に塞がり、ゆらりと起き上がる。

死霊術でフォレストウルフを不死アンデッド化してヒルデガルドが眷属にしたのだ、彼女の眷属だけあって四匹とも死んだ魚のような目をしている。


『ふわわわ』

メカ娘がヒルデガルドの死霊術を目の当たりにして目を丸くしていた。



『んー、お手!』

がぶっ

『ぎゃー!』

メカ娘が一匹のアンデッドフォレストウルフにお手をさせようとして手を噛まれた。

アダマンタイトの外装にはキズ一つつかないだろうが…ヒルデガルド、あんまり意地悪してやんなよ。



「しゃちょ~、手持ちの魔法薬ポーションを結構使っちゃったから補充したいわ、昨日採取した“薬草”で魔法薬ポーションを作るからポーション瓶を作って」

「わかった、そら“薬草”だ」

ヒルデガルドに空間収納から取り出した薬草を渡すと、私は川に砂を採りに行く。


川底の砂を両手に山盛りに掬うと、錬金術でケイ砂以外を取り除く。

ケイ砂からポーション瓶を何本か作ると空間収納に仕舞い、また川砂を掬う、これを何度か繰り返して20本ばかりポーション瓶を作った。


『あのー』

メカ娘が恐る恐る声をかけてきた。

「どうしたんだ?」

『それ、コップとか作れますかねー?』

どうやらガラスのコップが欲しいらしい、ケイ砂を錬成してガラスでグラスを作ってやった。

『うわー、スゴ~い、宝物にしますね』

シンプルなデザインのモノだが小躍りして喜んでくれている。

可愛いものだ…



「ヒルデ、ポーション瓶が出来たぞー」

「しゃちょ~、そこに置いて~」

ヒルデガルドの前に瓶を並べると、ポーションを作っていた土鍋から瓶へとポーションが水属性魔法で水流となって注ぎ込まれた。


『ふええっ!』

メカ娘がまた変な声を出す。

これぐらい一人前の魔法師なら誰でも出来るだろう?

※普通の魔法師は出来ません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る