第8話 side 教団③

「『儀式』の準備は?」

「はっ、既に準備を終えています」

社長トニー”と“教授ヒルデ”に造らせていた魔導人形オートマタが完成したと報告を受けた“司祭”は、【魔王】復活の『儀式』を執り行う旨を教団本部に連絡をしていた。


「“社長”と“教授”は?」

「通常の鉄格子の牢だと錬金術で破られますので、魔力を阻害する部屋に監禁しています」

「うむっ、それで善かろう」

部下の報告に頷く“司祭”。


「贄の用意の方は?」

「はっ、食事に混ぜた眠り薬で眠らせておきました」

「ふむ、全ての準備が整ったようだな」

ようやく“司祭”は満足そうな顔をした。


~・~・~


「大司教様がお見得になったぞ」

“司祭”は地下アジトの入口で、多数の騎乗した神殿騎士を護衛に従えた一台の四頭立ての立派な造りの馬車を迎えた。

『儀式』のため、教団の大幹部である“大司教”がこの秘密のアジトを訪れたのだ。


下馬した神殿騎士が囲む中、馬車からゆっくりと教団の黒いローブを纏った老人が降りて来た。

老いさらばえて枯れ木のような手足をした老人だが眼光だけは炯炯と光っている。


「大司教様、準備は万端に整っております」

このアジトの責任者である“司祭”が“大司教”にこうべを垂れながら報告する。

「うむ…案内あないせよ」

ねじくれた杖を手にした“大司教”は早く案内しろと促した。



「なんじゃ、これは…」

作業台に横たえられたメイド服を着た可憐な魔導人形オートマタを前にして“大司教”が怒りにぷるぷる震えている。


「この形態美少女には深い考えが…」

冷や汗をかきながら“司祭”が説明をする。

「戦闘用の魔導人形オートマタの外見が美しい少女であれば…(中略) 、そしてその一瞬の隙を点けばどんな強者をも倒せるでありましょう」

取り敢えず言い切った。


「ふむ、一理あるが、この姿はのう…」

“大司教”はまだ納得していない。


「教団の上層部より指示を受けました、

1.オーガをも素手で引き裂けるパワー

2.長距離攻撃手段

3.物理攻撃、魔法攻撃に耐性を持つ強靭な装甲

これらの性能はきちんと満たしております」

中間管理職の“司祭”は部下の報告した内容のそのまま上司である“大司教”に伝えた。


「しかし、メイド服はのう…」

「この魔導人形オートマタを造らせた“社長”と“教授”は調整が必要な時の為にまだ処分せずに監禁しております、『儀式』の後にあの御方がこの姿を気に入られぬようでしたら外観の改装を…」

「うむ、ならば先ずは『儀式』を経て、あの御方の意向をお伺いしてからの話じゃな、『儀式』の場にこの寄り代を運べ」


~side 社長~


私とヒルデガルドは地下アジトの最奥の小部屋に閉じ込められていた。


「しゃちょ~、この部屋の扉も壁もわたしの錬成を弾くわよ?」

ヒルデガルドが洞窟を加工した部屋の壁や入口の鉄扉に手のひらをぺたぺた押し当てながら言った。


「対魔法使い用に魔力阻害の魔法陣が仕込まれてるみたいだな…」

“教団”の見張りさえ居なければ、私やヒルデガルドなら土属性魔法で洞窟の壁に穴を掘ったり、錬金術で鋼鉄の扉を飴のように曲げて逃げる事は容易い…と思っていたのだが。


「『鉄人アイアンアーマー』で力ずくで抉じ開けるしかないか…」

どうやらこっそりと逃げるのは無理なようだ。

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