第4話 魔導人形

私とヒルデガルドが“教団”に造らされている魔導人形アンドロイドは日に日に形を成していった。


最も硬く重く、魔力をほとんど通さない金属であるアダマンタイト。

アダマンタイトと同じくらい硬く、魔力を伝導する金属オリハルコン。

アダマンタイトやオリハルコンに比べて硬さは劣るが軽くて抜群の魔力伝導率を持つ金属のミスリル。

私とヒルデガルドが錬成したそれらの希少な魔法金属を魔導人形アンドロイドの各部の素材に使用している。


丈夫さと魔力伝達性の必要な骨格や関節部は金色に輝くオリハルコン製、アクチュエーターや各部の部品パーツは白銀に輝くミスリル製、装甲を兼ねた外装部品はアダマンタイト製だ。


転生者特典のチート級の錬金術アルケミーと鍛治スキルに付与魔法、それらを駆使して前世の知識であるロボット工学を再現していく。

今なら私は○゛ラえもんをも創れそうだ…



「ヒルデガルド、今、気がついたんだが…」

「ヒ・ル・デ!」

死んだ魚の目をしたままヒルデガルドが私の左腕に抱きつき上腕の辺りに柔らかいモノを押しつけてくる。


「わかったよ、ヒルデ」

「うふっ♪」

夜、二人で一緒の部屋に居ても教団の見張りに怪しまれないようにする為だとか、逃げるまでの間だけだからとか言われてヒルデガルドと恋人同士のふりをしているが、なぜか私の脳裏に“なし崩し”という言葉が浮かぶ…


「ヒルデ、なんかこの魔導人形オートマタ少し小さくないか?」

作業台の上の魔導人形アンドロイドを指差す、身長150cmくらいか?


「希少な魔法金属を素材に使っているから仕方ないじゃない…、身長2mくらいの体格にするのならこの倍以上の資材が必要になるわよ」

うーん、それはちょっと…


「それに骨格が女性のモノっぽいと言うか、外装パーツが完全に女の子だろ?」

150cmの身長と相まって、華奢な少女っぽい体型をしている。


「戦闘用の魔導人形オートマタの外見を美しい少女にすれば、相手が魔物じゃなくて人族の場合その可憐な姿を見て武器を振るうのに一瞬でも躊躇するだろうし、そうすれば隙が出来るでしょ」

うーん、ちょっとゲスいが効果はあるか…


「ところで、しゃちょ~、この綺麗な長い髪は何?」

魔導人形アンドロイドの頭部には絹糸のように繊細な金色の髪が生えていた。


「こ、コレは髪の毛じゃなく、高出力な魔力炉リアクターからの廃熱を大気中に逃がす為の放熱索だ、性能上どうしても必要だったんだ!」

「ふーん、性能上どうしてもねぇ」

おうふ、死んだ魚のような目でジト目というのは二重ダブルにクルな…



「視覚センサーの感知可能な帯域を可視光の領域を超えて広げてだなー」

「夜間や地下の暗闇でも見えるように…」

「ついでに攻撃能力も付与を」


「両腕にロケットモーターを仕込んでだなー」

「長距離攻撃手段や“かくし球”はやっぱり必要よね」


「外部装甲だが…」

「金属製の甲冑みたいな不粋なモノはダメよ!」

特殊繊維ケブラーの布に各種防御系の魔法を付与するのか?」

「やっぱり可愛いは正義よ!」


二人の趣味と言うか、暴走と言うか…魔導人形アンドロイドは高性能化…いや、凶悪な戦闘力を保持しつつ可愛い方向へと進化していく。


「なんかメイド服を着た美少女型の戦闘用魔導人形バトルアンドロイドが出来てしまった…」

後悔はしてない、たぶん…

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