第3話 side教団①

「“社長”と“教授”の様子はどうだ?」

周囲の者達より豪奢な仕立ての黒い教団のローブを着た男が部下に訊ねた。


「それが司祭様、二人は毎晩のように社長の部屋でイチャコラしてまして…」

「…」


「教授はちょっと年増ですけどなかなかの美形ですからねぇ、あのぶかぶかのローブの下の身体もきっと…」

「そんな事を訊いているのではない!」

“司祭”は額に青筋を立てて怒鳴った。


「作業の進捗はどうなのだ!」


「いやー、凄く手のかかるヤツらでして…」

「まだ反抗的なのか?」


「いえ、表面上は協力的なんですが…」

「何か問題があるのか?」

イラついてきた“司祭”がつけつけと聞く。


「アイツら学者バカって言うんですかね、三日三晩ぶっ続けで研究して二人して倒れちまったりとか、夜もこっちが無理やりやめさせないと徹夜で研究するし、飯を食うのもちょくちょく忘れたりするし…」

「ならば作業の進捗自体は順調なのだな?」

世話が大変だと愚痴をこぼす部下に呆れながら“司祭”が確認した。


「順調なんですかねぇ?」

「どういう事だ!」

この仕事が終わったらコイツを絶対左遷すると心に刻みながら“司祭”がまた訊く。


「魔法金属のミスリルは勿論の事、アダマンタイトやらオリハルコンやらの希少金属を使いまくりやがりまして…」

「あの御方の身体ボディとなるのだ、それくらいの事は構わん」


「でしたらもっと予算を下さい、希少金属の在庫は使い果たしたってのに社長がもっと寄越せと…」

「むうっ、何か他の事に使っているのではあるまいな?」

部下どもの横流しの可能性も考えつつ“司祭”が確認する。


「希少金属全て魔導人形オートマタの製作に使ってます、それはちゃんと確認してます、魔導人形ボディの性能も当初の予定よりかなり高性能になりそうな感じですし」

意外と有能なのかと部下を少し見直しながら“司祭”は答えた。


「二人が欲しがる資材は要求通り与えてやれ、予算の方はわしが教団本部と掛け合ってなんとかする」


~side 社長~


ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン等の希少な魔法金属の用途は“教団”の見張りに厳しくチェックされていたが、通常の金属である、鉄、チタン、マンガン、クロム等はノーチェックだった。


“教団”にも錬金術師はいるのだろうがヤツらにボーキサイトなんか何に使うのかわからんだろう…私は転生者特典で手に入れた生産系チートの一つ、

空間収納インベントリ”のスキルで目立たぬように少しずつ鉱石やインゴットをパクって武器の材料を集めている。


私とヒルデガルドは夜な夜な私の部屋で脱出のための武器を作るために…おいっ、ヒルデガルト、ベッドに誘うな、働け!


入手した金属や鉱石からチタン合金、ステンレススチール、ジュラルミン等を現代知識を元に錬金術で錬成していく。


「ふむふむ、βチタン合金の比率はこれで良いのね…」

βチタン合金を錬成している私の手元をガン見しながらヒルデガルドが羊皮紙にペンを走らせている。

「こらヒルデガルド、メモるな、これは門外不出のレシピだぞ!」

「門外不出って事は家族なら良いのよね?」

オイっ、誰が誰の家族だ?

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