第2話 監禁

今日も私とヒルデガルドはカルト教団の秘密の地下アジトで魔導人形アンドロイドの研究開発をさせられている。


自宅にいた所を拐われ、ここに馬車で連れて来られた時には目隠しをされていたのでこのアジトの場所が何処なのか皆目わからない。


ここは天然の洞窟を人の手で拡げた地下施設だ。

この場所で稀代の魔導具師にして錬金術師である私と天才錬金術師にして死霊術師ネクロマンサーのヒルデガルドはヤツらに特別で強力な戦闘用の魔導人形アンドロイドを造らされている。


魔力だけで動くゴーレムなどと違って魔導人形オートマタはその体内に身体を動かす為の機構メカを備えている、古代の【賢者】が造ったような特殊なモノを除けば通常の魔導人形は“からくり人形”レベルなのだが、私は現代日本のロボット技術をこの世界の魔法を融合する事により再現した。


~・~・~


「しゃちょ~、今夜わたしの部屋で魔力反応炉リアクターの魔法陣の最適化についてお話をしない?」

ヒルデガルドのヤツは距離が近い、いつもずかずかと私のパーソナルスペースに踏み込んでくる。

今も話しかけながら私が座ってる椅子代わりの木箱にちょこんと尻を乗せて来た。


若い美人にくっつかれるのは嫌いではないが、いくら美人でも目が死んでる女は…それに若いと言ってもで、ヒルデガルドは十代半ばで嫁ぐ娘の多いこの世界では絶賛行き遅れなお年頃だ。

おうふっ、なんか横から凄まじい殺気が!


ヒルデガルドの体型はいつも着ているぶかぶかのローブのせいで良くわからんが、腰まで伸ばしたサラサラの銀髪に卵形の顔、抜けるように白い肌、妖精エルフのように整った目鼻立ちと見た目だけは良い、目は死んだ魚みたいだが…


「ねぇ、しゃちょ~」

「あ、いや、ヒルデガルド、どうせなら私の部屋に来ないか?」

とたんに獲物を見つけた猫のようにキラーンっとヒルデガルドの目が光った、自分から言い出したのだがちょっと後悔をしてしまうな。



硬いパンに干し肉、野菜くずの浮いた薄いスープという粗末な夕食を与えられた後、私の寝室に集まった。



「逃げる?」

ヒルデガルドがこてんと首を傾げる。


「わ、わたしはしゃちょ~と一緒ならずっとここに居ても…」

コイツは私のどこを気に入ったのか、時々訳のわからない事を言う。


「お前、誘拐されて来た事を忘れてるんじゃないだろうな?」

念のため確認した。


「忘れてなんかないわよ、ただここだったらしゃちょ~と一緒に研究が出来るし…」

ぷくーっと頬を膨らませるヒルデガルド。

うん、可愛い、顔は。


「あの魔導人形オートマタが完成したら二人とも殺されるぞ」

「えっ?」


「まさか、完成させたら無事に家に帰して貰えるとか思ってないだろうな、邪神だか魔神だかを崇拝してるヤツらだぞ、用済みになったら恐らく二人とも…」

「じゃあ、わたしと一緒に逃げてくれる?」


「えっ?」

だから逃げる相談をしてるんだろ。


「駆け落ちっぽい感じで…」

「え゛っ?」

なんで駆け落ち?


ちょっと、いや、何かと不安な相棒パートナーだが取り敢えずカルト教団のアジトから脱出するに当たりヒルデガルドが協力してくれる事になった。


「初めての共同作業…」

オイっ、共同作業研究開発は“教団”に毎日強制的にやらされてるだろうが!


口元をニヨニヨさせているヒルデガルドに心の中でツッコミを入れた。

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