雪遊び
これは私が八歳の頃の話である。
その日は二月にして初雪であったが、大粒の雪は降りやむことを知らず、当時の私の人生で最大の雪が振り積もった。
翌日、私はすぐさま外へ駆け出し、雪と遊んだ。いつもは小さい雪だるまを作ることしか出来なかったけど、今日はなんだってできる。私は大きなかまくらを作ることにした。早速スコップで雪を掻き始める。しばらくすると、なにやら雪の中から黒くて長い糸の束が伸びているのに気づいた。
柔らかい手触り、それは明らかに人の髪だった。私は子供ながらに緊急事態を察知し、慌てて手で雪を掘り進めた。あまりの冷たさに赤くなった指先を息を吐いて温める。また掘り進める。すると突然、掘り進めていた目の前の雪壁の一部がかさぶたのように剥がれ落ち、真っ暗な空洞が現れた。
私はそこに手を入れて何かないか、誰かいないか探った。その時、何か悪寒が走った。怖くなって手を引き抜こうとしたその瞬間、パクっと餌に食らいつくかのように何者かに手を掴まれた。
まるで生気を感じないその手は、私の生にしがみつくかのように私の手を強く引っ張り、空洞の中へ引きずり込もうとしてきた。
私は必死に抵抗しながら家の中の母親に助けを求め叫び続けた。良かった。ドアを開ける音が聞こえてくる。すると中の手の持ち主はもう一本の手を使い、その細く冷たい指で私の手のひらにゆっくりと文字を書いた。
「またね」
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