110 足の小指

(温泉でだいぶ温まったギャルちゃんこと有紗とオタクちゃんこと真野)


「つらかったね、って言ってくれるんだ。そんな人おばあちゃん以来だ」


「だって……それ以外に言いようないじゃん。つらいよ」


「おばあちゃんはさ、『学校なんてそもそも近所の同い年を集めただけなんだから一人二人行けなくなるなんて普通だし、つらいなら行かなくていい』って言ってくれたんだ」


「優しいおばあさんなんだね」


「うん。おばあちゃんには感謝しかない。和裁とか着付けとかも教えてくれたんだよ」


「……上がろっか。あんまり長く浸かってると湯あたりするよ」


「そうだね。さっぱりした……マヤちゃん、ありがとう。あたしの昔話に付き合ってくれて」


「昔話じゃないよ。嫌だった思い出は、現在進行形で心に突き刺さってる。わたしはそれを、アリサちゃんに抜いてもらった。そうだなあ……くだらない心理テストで盛り上がってた連中と、腫れ物扱いした先生は、夏になるたび足の小指を蚊に刺される呪いにかかります!」


「ちょ、その呪い凶悪すぎない?! 超ウケるんだけど!!」


「その顔が、アリサちゃんらしいと思う。わたしにはまだわからないかもだけど」

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