卒業研究
澪凪
Arduinoと温度センサー
地元の高専に入学し、半年が経とうとしていた
私は初めての文化祭を終え、4個上の先輩と付き合うことになった
4個上の先輩は16の私から見たらとても大人びていて
高専の中で落ちこぼれていた私に
手を差し伸べてくれた
お互いに寮生活だった
限られた時間の中でデートを重ね、
専攻科棟の裏でキスをした
寮生のほとんどが通る道だ、と割り切り
冬の寒い中、短い時間の逢瀬を楽しんだ
先輩は、女子寮の玄関まで送ってくれた
「バイバイ、なぎさちゃん。また分からないことがあったら聞くんだよ?」
頭を撫でて、私がオートロックを開けるまでその場を離れなかった
その時私は、情報処理の講義でArduinoを用いて、何かしらのセンサー反応を調べる課題が出ていた
落ちこぼれていた私には、到底間に合いそうになかった
学校のPCはWindows、寮で使っている私物のPCはMac
開発環境が違うため、とてもじゃないけど部屋ではできなかった
先輩は、私の辿々しいLINEの内容から全てを理解し、一緒に課題を取り組んでくれた
「なぎさちゃんは、どんなセンサー使いたい?」
5秒の沈黙と上目使いで伝わったようで
「ハハッ、分かった。じゃあ俺のをベースにしてアレンジしようか。大丈夫、最後まで一緒にやろうね。」
先輩が教えてくれたのは温度センサーだった
プログラムとしては簡単で、ある一定の温度を超えるとLEDが光る、というものである
先輩からしたら、何故こんなのができないのだろう?と言った感情だろう
しかし私は大はしゃぎし、先輩に笑顔を振りまいた
「なぎさちゃんのそういうところ好きだよ」
落ちこぼれている私にも好きと言ってくれる先輩は
高専の成績システムで言えば、首席のようなポジションを獲得していて
なぜ私と付き合ってくれているのか分からない
それでも先輩に似合う女になろうと努力した
2年の夏、私は先輩に振られた
「なぎさちゃん、重いんだよね」
もうそろそろ振られるだろう、と分かっていた私は特に驚きもしなかった
それから季節が過ぎ、大学に入った今
理系からは逃げて、文転した私は
今でも中途半端に理系に足を突っ込み、
Arduinoの本やC言語、プログラミングを見ると先輩を思い出してしまう
先輩、卒業研究を理由にしてデートをしてくれませんでしたね
それでも大好きでした
Arduinoのこと覚えていられるのは先輩のおかげです
秋になると思い出す、私の過去
卒業研究 澪凪 @rena-0410
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