346:IVCS①

 IVCS第一試合。始まってすぐに打ち合わせ通りにくじで決められたランドマークへと一直線に向かい物資を漁る。


 今回のチーム構成は、マケおば、ハッカー、盾おじの三人。索敵、アイテム収集、防衛とバランスの良いメンバー構成。


 アイテムをある程度入手したところで索敵していたボクのキャラが周囲に一部隊いる事を告げる。


『敵が来てるよッ!』

「ゆかちゃんの命を狙う愚か者⋯⋯ふふふ⋯⋯」

「ギッタンギッタンのデスボにしてやるの

⋯⋯」


 二人の喋り方こそ直ったものの、雰囲気がやっぱりおかしい。昨日のアレの影響やばすぎるよ?


 そう考えていると、ボクのキャラにスナイパーの弾が当てられ、ダメージを受けた。


『いたっ』

「ゆかちゃんに⋯⋯」

「よくもダメージを与えてくれたの」

「「絶対に許さないッ!!」」


 二人は前と動き方が違い、信じられない速度と動き方で敵との距離をつめていく。


「スナイパー持ってるならメイン武器は近距離か中距離、先手必勝なの!」

「射線を別の場所から通して動き辛くしてあげますよ⋯⋯ふふっ⋯⋯」

『ボクは⋯⋯がんばる!』


 明らかに当て感の良い敵がいて、その敵をふわりお姉ちゃんとなのお姉ちゃんの二人がかりで速攻で落とすと、残りのメンバーを落とすべく、回復もまともにせずに突っ込んでいく。


「そっちも回復間に合ってないですよねぇ!?」

「サーチアンドデストロイなのォ!!」

『え⋯⋯ボクの出番⋯⋯』


 メイン火力であろう人を失った残りのメンバーはなすすべもなく二人にやられてしまう。


「ゆかちゃんを狙うからこうなるんですよぉー?」

「ミッションコンプリートなの」

『ふ、二人とも凄い⋯⋯!』


 ボクももっと役に立たないと!


 それから実力が一段どころか2段くらい上がった二人の勢いは止まらず、今回は安置にも恵まれて無事にチャンピオンを取る事が出来た。


 キルポには上限があるから、少し勿体無い気がするけど1位の順位ポイントはかなり大きいからあとはこれを守りつつキルポを確実に積み重ねていけるように頑張らないと。



「絶対勝つし!」

「れな先輩よろしくお願いしますなのにゃ」

「さくらちゃん、頑張るし!」

「打倒ゆかちゃんと言ってたけど、勝算はあるのかにゃ?」

「その為のメンバーだし!

VPEXの元プロ、CherryNoneさんだし!」

「どもー運営に枷をかけられたチェリーさんっすよー」

「Cherryっち、流石に練習カスタムで暴れすぎだし!」

「いやー手は抜けない性分なもんで」

「プロだからそれは仕方ないにゃ」

「お陰で今回ティアSの武器以外限定かつスコープ以外のカスタム無し縛りにされちゃいましたけどね」

「ぶっちゃけそれは大丈夫と言えるのかにゃ⋯⋯?」

「Buddhaさんレベルがいなければ問題ないっすよ」

「いたら⋯⋯?」

「ポジ取り次第っすね。Buddhaさんレベルだったら自分と同じくらいの枷あるでしょうし」

「負けるって言わない辺り凄いのにゃ⋯⋯」


 このメンバーは初心者枠ながらもそれなりの実力を持っている後輩のさくらちゃんとVPEXの国内プロ最高峰チームD-Nationの元最強アタッカーであるCherryNoneさん、ブランクがあったせいで低ランク扱いの私とかなり恵まれたメンバー構成になっているはず。


 先輩達のチームといえどCherryさんがいれば流石に勝てるはず。参戦するって決めてからは私だって沢山練習したんだし。


「それじゃ、頑張るし!」

「おー」

「き、緊張するにゃ⋯⋯」


 それぞれ一言気合いを入れて自分のベストを尽くす為に頑張る。


 そして第一試合、ようやく始まったこの瞬間。


 私達のチームのランドマークはちょうど先輩達の近く。しかも物資はこっちの方がハイティアのアイテムが多いからどう考えても有利。すぐにアイテムを掻き集めると私達は急いで先輩のいる場所へ駆けていく。


「ゆかちゃんはウチが絶対倒すんだし!!」

「おー、好戦的っすねー」

「ゆかちゃんを倒して、先輩と遊びに行くんだし!」

「ちょっ、待って欲しいにゃ!まだアイテム全然揃ってにゃいにゃ!」

「倒して奪い取るのが一番早いし!」

「これガチだから困るんすよねー」

「あああああ!足手纏いになっても怒らないで欲しいにゃよ!」

「大丈夫だし!」


 少しさくらちゃんが遅れながらも、大した影響もなくゆかちゃん達のいるランドマークの近くへやってきた私は、使っているキャラ、ハッカーのスキルを発動した。


「周囲に1部隊、漁夫は警戒しなくてもよさそうだし」

「んじゃ行きますかねー」

「が、頑張るにゃ」


 ここのマップは広めになってるのもあって漁夫がすぐに来る可能性も少ない。私達はすぐにケリを付けるために先輩達のいる可能性の高いランドマークへと足を踏み入れた。



「う、嘘⋯⋯」

「いやー、あのなのって子やべーっすわ」

「手も足も出なかったにゃ⋯⋯」


 こんなはずじゃ。


 こんなはずじゃなかった。


 少しくらい、戦えると思っていた。


「あのなのちゃんって子、プロレベルの実力持ってるっすよ。あれでダイヤ帯扱いって無理あるっすねー」

「ウチも一緒にやったことあるけどかなり頼りになるイメージだったにゃ」

「うちがゆかちゃんを倒したいからって先走ってごめんだし⋯⋯」

「ははっ、チェリーさんは構わないよ。

 倒したい相手がいる。それは上手くなる為に重要な要素だと僕は思っているからね。

 今回がダメでも次回がある。今ダメでも、次勝てば良い。違うかい?」

「次⋯⋯そうだし。

 今回は5試合まであるわけだし、まだどこかでチャンスがあるに決まってるし」

「そういうこと。次はもう少し慎重にやっていこうか」

「頑張るし!」

「(ウチの気のせいじゃなかったらふわり先輩となの先輩の二人、ヤバいくらい腕前が上がってた気がするにゃぁ⋯⋯ちょっと気を付けておかないといけないにゃ)」


 それから気を取り直して確実にポイントを取れるように試合を進めて行った結果、最終試合の時には6位とかなり良い順位に入ることが出来た。


 それでも、接戦の1位争いをしている現在3位のふわり先輩達にはまだ及ばない。


 キルポ上限の無い最終試合で大暴れしないと逆転なんて出来ない。


 だったら。


「うちから提案があるし」


 私は逆転の一手をメンバーに伝えることにした。

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