270:えっ?まさかのV?
華さんとのオフコラボも終わった次の日、いつものように学校へ行くと、裕翔に話しかけられた。
「よう、優希おはよう」
「裕翔おはよー」
「昨日のオフコラボ見たけど、大丈夫だったか?」
「え?別に何も無かったけど⋯⋯」
「やっぱふわちゃん病気なのか?」
「皆、何気に酷くない!?」
確かに普段の配信だとやべーやつ認定されてるとはいえ、そこまで酷くはないんだけど⋯⋯
「実際何回か会った事あるけど、優しい人だよ?」
「普段のイメージがヤバい人だからなぁ⋯⋯」
そんな話を聞きつけてきたのか、花園さん達いつものメンバーもこちらへやって来た。
「優希くん⋯⋯おはよう⋯⋯」
「優希くんおはよー」
「優希くんおはよう!」
「あっ、皆おはよう!」
「昨日の配信、久しぶりにリアタイで見たけど、何もされなかった?大丈夫?」
挨拶して早々、天音さんまで僕の心配をしてくる。
そ、そこまでふわちゃんの僕に対する印象って酷かったの?
「あ、天音さんまで⋯⋯何も無かったから大丈夫だよ!?」
「きっとふわちゃんのことだから、優希くんにあんなことやこんなことをしようとしてると思ってたんだけど⋯⋯」
「流石にふわちゃんが可哀想になって来たんだけど⋯⋯」
「「「「だってふわちゃんだしなぁ⋯⋯」」」」
こ、この印象が消える事って⋯⋯あるのかなぁ⋯⋯
「いや、本当に皆が思うほど酷く無いからね!?」
「優希くん⋯⋯本当⋯⋯?」
「うん、昨日なんてご飯ご馳走になっちゃったし⋯⋯」
「どこかへ食べに行ったのか?」
裕翔は少し気になったのか僕にそう聞いてきた。
「ううん、昨日は手料理を⋯⋯って言ってからあげを作ってくれたんだ」
「いや、うん、まじかぁ」
「ふわちゃんが手料理⋯⋯」
「いいなぁ⋯⋯私も作ってあげたい⋯⋯」
ふと、天音さんがそんな事を言い始めた。
「「「「えっ」」」」
「⋯⋯あれ?皆どうしたの?そんな顔して」
「いや、今結構凄いことが聞こえたような気がしたんだが」
「私の気のせい?」
「私も⋯⋯聞こえた⋯⋯」
「ぼ、僕も⋯⋯」
「嘘、声に出してた?」
「ばっちり聞こえてたぞ」
「ああああ!!!そんなぁ!!!」
天音さんは頭を抱えながら恥ずかしそうに叫ぶ。
「でも何で優希に?」
「私も気になる!」
「私も⋯⋯」
「いやぁ、優希くんって美味しそうにご飯食べるから、餌付けしたくなると言うか⋯⋯」
「僕はペットか何か!?」
「「「気持ちはわかる」」」
「裕翔まで何言ってるのさ!?」
「いや、マジで優希の食べる時って幸せそうに食べるから、何かあげたくなる気持ちはわかる」
「優希くんの食べる時の事も良い⋯⋯でも、私はふわちゃんと何があったのかが気になる⋯⋯」
次は花園さんが僕達の間に何かがあったと思い込んでるみたい。本当に何も無いんだけど⋯⋯
「ふわちゃんのお家に行って、あっ、なんか凄いソファーに座ったら少し寝ちゃったくらいだけど⋯⋯」
「詳しく」
「えっ、いや詳しくって言っても⋯⋯本当に数十分?1時間くらい?寝てただけだよ?筋トレの後で疲れてた中で、ふわちゃんの家に置いてあったソファーがやばいくらい気持ち良くて⋯⋯」
「1時間くらい⋯⋯ふわちゃんが気持ち良かった⋯⋯なるほど⋯⋯」
「「なるほどじゃないが??」」
「あぅっ」
妄想の世界に入り込んだ花園さんに裕翔と天音さんの二人がツッコミを入れる。
「しのちゃん?」
「ひゃい⋯⋯」
「(本が完成したら読ませてね)」
「(こくん)」
香月さんは何かぼそぼそと喋っているけど、周りの音でよく聞こえない。
「とりあえず、何も無かったなら良いんだけどな」
「あはは、だから大丈夫だってー」
「次は何かイベントとか企画はあるのか?」
「ううん、特に無いよ?あっても大きなイベントはWCSくらいだから夏休みくらいまでは大きなイベントは無いよ?」
「なるほどなぁ、その前にまたカラオケとか行きたいな折角だし」
「確かに⋯⋯」
「いいなぁー私達も行きたいなー」
「私⋯⋯行くのは良いけど、歌うの苦手だから⋯⋯」
「まぁまぁ、しのちゃんは声可愛いと思うけどねー」
「練習したら良い線行けそう?」
「ははは、そうなると花園もVデビューか?」
「「その発想は無かった」」
「絵も描けて、声も良い⋯⋯確かに条件は悪く無いよね」
「優希くんまで⋯⋯」
実際花園さんくらい絵が上手ければ、自分の2Dモデルくらいなら作れちゃうだろうし、声も悪く無いって思うと確かにありなのかも。
「わ、私は無理⋯⋯せめて天音さん辺りで⋯⋯」
「⋯⋯確かに天音ちゃんなら」
「歌も上手いし、声も良い⋯⋯」
「あれ?案外いけるんじゃね?」
「4人とも何言ってるの!?私はやらないからね!?」
皆が悪ノリしてそんな事を言っていると、天音さんが少し困惑してしまった。
「⋯⋯天音ちゃんならお姉ちゃん系VTuberとか良いと思う」
「私もそう思うかなー」
「そ、それだったら美由紀だって⋯⋯」
「えっ!?私!?!?」
「コスプレ好きでしょ?そういうのアピールしていくのも良いんじゃないの?」
「それなら私はYoutuberやるけど!?」
「まぁコスプレはVTuberである必要性はないわな⋯⋯」
「うん、僕もそう思う⋯⋯」
そんなこんなでもうすぐSHRの時間になってきたから僕達は席に戻った。
♢
「優希先輩とカラオケ⋯⋯じゅるり」
優希と裕翔達の話を陰でこっそり聞いていた彼女の存在に気付く物は誰一人、いな⋯⋯
「見つけた」
⋯⋯いた。
「ど、どうしてここが⋯⋯」
「恵ちゃんの考えてる事なんてお見通し。さぁ、ホームルーム始まるから帰る」
「ま、待って、もう少し優希先輩をおおおお」
「はいはい、どうせ今度カラオケでも誘うんでしょ?その時に堪能すれば良い」
「OK出してくれるかもわからないのに!?」
「⋯⋯それは自分の行い」
「うぅ、酷い⋯⋯ボクが何をしたって⋯⋯」
「えっ、気付いて無いの⋯⋯?大丈夫?頭」
「ナチュラルに傷付く言葉かけてくるのやめてくれないかな!?」
すみれに引き摺られるように恵は自分の教室へと消えていった。
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