269:華さんのお家で(後編)
「⋯⋯それじゃあマッサージやっていきますね?」
「はいっ!」
僕は華さんにそう声をかけると、華さんの肩をほぐすために軽く力を入れながら肩を揉み始めた。
「んっ⋯⋯」
「あっ、痛かったですか?」
「い、いえ!大丈夫ですよ!」
声を突然出してくるから、痛いのかと思ったけど大丈夫そうでよかった。
「結構張ってますね⋯⋯」
「やっぱり、家で配信とかやってるからデスクに座る事が多いので⋯⋯一応、毎日お風呂でセルフケアとかはしてるんですけどね?」
「お風呂で毎日⋯⋯」
毎日お風呂でセルフケアを続けるなんて時間がかかるのに凄いなぁ、と思っていると⋯⋯
「もしかして、私がお風呂入ってるところ想像しちゃいましたか?」
「い、いやいや!?しないですよ!?」
「⋯⋯むぅ、してくれても良いと思うんですけど」
「そんな事は流石に考えないですよ!?」
「むぅ⋯⋯あっ、そこ良いです⋯⋯」
ピンポイントに良い場所に入ったのか、華さんが少し色っぽい声で反応する。
「(うぅ、なんか緊張してきた⋯⋯)」
別に悪いことややましい事をしているわけじゃないのに、なんだかいけない事をしているような気分になってきた。
「あっ、そこ⋯⋯いた⋯⋯痛いです!?」
「あっ、つ、強かったですか!?」
「思っていた以上に痛くてびっくりしちゃいました⋯⋯」
「少し弱めにしますね!」
そして力を弱めると、華さんは気持ち良さそうにしていた。
「ふぅ、自分でやってもそれなりに気持ち良いですけど、やってもらうのは凄く気持ち良いですね⋯⋯」
「確かにそうかもしれないですね!」
それから硬そうな部分を弱めに少しずつほぐすようにマッサージをしていくと、華さんが頭をかくんかくんとさせ、うとうとし始めた。
「ん⋯⋯」
「終わったら教えましょうか?」
「だいじょうぶです⋯⋯」
「あはは、凄く眠そうですよ?」
「だって、気持ち良いんですもん⋯⋯」
ある程度ほぐし終わった所で、華さんに他に痛いところが無いか聞いてみる事にした。
「華さん、ある程度ほぐれてきたと思いますけど、他に痛い場所とかありますか?」
「えっと、このあたりとかやってほしいです⋯⋯」
寝惚けたような状態の華さんが手で場所を誘導すると、その場所は華さんの胸の上、鎖骨の近くにあるリンパの辺りだった。
「(いやいやいや!?そこを僕が触るのはまずいよね!?)」
いくらマッサージといえども、そこは流石に⋯⋯
「は、華さん?」
「んぅ⋯⋯あれ?私⋯⋯」
「あの、華さん⋯⋯手、手を⋯⋯」
「あわわわわわわわわ」
軽くパニックになった華さんは僕の手をむしろぎゅっと握り、自分の胸元に押し付けてくる。
「(ぎゃ、逆効果だよおおおおおお!!!???)」
そして⋯⋯
ふにゅっとした柔らかい感触が一瞬僕を襲う。
「は、華さん!?落ち着いてください!!」
「ご、ごめんなさい!!」
ようやく、解放された⋯⋯と思ったら華さんが顔を真っ赤にしていた。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
「華さん?」
「だ、大丈夫ですよ!優希くん、マッサージありがとうございました!」
「い、いえいえ!少しでもお役に立てたなら嬉しいです!」
そして、時間も時間だったのもあって、片付けを手伝った僕は、家へと帰る事にした。
♢
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯やばかったです⋯⋯」
優希くんには言えませんが、思わず襲い掛かりそうになってしまいました。
「もはやあれはOKサインだったのでは???」
⋯⋯いや、それは無いですよね。
WCS選考会の優希くんにキスしたモデルさんとかもいるって考えると。
「それにしても、優希くんの反応可愛かったですね⋯⋯もっと迫った方が良かったでしょうか⋯⋯」
「いや、でもあまり積極的になりすぎるのもどうかと思うって言ったばかりでそこを変えるのはちょっとダメですよね⋯⋯」
「⋯⋯うん、とりあえず来月も優希くんと会う予定は作りましたし、それでヨシとしておきましょう!」
それはそれとして、綾乃ちゃんにも連絡しておきましょうか。
「もしもし、綾乃ちゃんですか?」
『ん、華?どうしたの?』
「実は来月プリンを取り寄せるって言ってたじゃないですか?」
『言ってたの。あのプリンはプリン界の革命児だったの』
「あれ、家に残ってたので優希くんに1つあげたら凄く喜んでくれまして⋯⋯」
『なるほど、来月、プリンで優希くんを釣った⋯⋯ってことなの』
「そう言う事です。と言うわけで、来月はプリンを食べるオフコラボをしようかな、と」
『その話、全力で乗った!の!』
「そう言うと思いましたよ!」
『それならぼくは、おすすめのプリンがもう一個あるからそれも取り寄せておくの』
「そんなのあったんですか!?楽しみにしてますね!」
『ふっふっふ、食べて楽しい、味も美味しいと最高なの。味に関してはなま杏仁プリンが最強だったとは思うの』
「あれだけ次元が違いますからね⋯⋯」
『とりあえずわざわざ教えてくれてありがとうなの。
来月楽しみに待ってるの』
「はい!ついでに何か一緒に遊べたりすると良いと思うんですけど、何か考えておきますね」
『ぼくの方でも何か考えておくの』
そうして通話を終了すると、また優希くんに会えるという嬉しさが込み上げて来ました。
「もうちょっとでも、優希くんが遠慮しなくなるくらいには仲良くなりたい⋯⋯です」
今の優希くんはどことなく遠慮がまだ見えます。
「そしたら⋯⋯ふふふ⋯⋯優希くんがおおかみさんになったり⋯⋯しないか⋯⋯」
なったらなったで嬉しいですけど、優希くんは押されてあわあわしてるのが至高みたいなところありますからね。
「となるとやっぱり私がオオカミになるしか⋯⋯?」
それ以降私の思考はループし続けてしまいました。
------
2巻発売まで残り“4日”!!!!
あと3日連続更新頑張ります!!!
ストック相変わらず無いけど!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます