267:ハロウィンSS(トリックオアトリート!)
今日はハロウィン。
みんながちょっと浮かれて騒いだりしちゃう、そんな一日。
僕も今日はせっかくのハロウィンということで、何かしようかな?と考えていると、ふと、とあるネタが浮かんだ。
「そうだ!ハロウィンといえばあれがあったんだ!」
僕が考えたのは仲の良くなったあの人たちにトリックオアトリートと言いに行くこと。
「華さんと綾乃さんは事務所でコラボって言ってたから、マネージャーさんに連絡してOKが出たらやってみるとして、あとは薫さんと由良さんだ!」
「衣装は⋯⋯前着せ替えさせられた時にコスプレが何着かあったから何か良いのないかな?」
僕はクローゼットに向かうと、中には魔法少女、魔女、ヴァンパイア、キョンシーの衣装があった。
「何でこんなにあるんだろう⋯⋯」
勿論、薫さんと橋本さんの悪ノリの結果なんだけど⋯⋯
「でもヴァンパイアとキョンシーは誰にも見せたこと無かったし、これを着ようかな?」
そう考えた僕はどっちを着るかを考えてみたけれど、なかなか決まらない。
「どうせだから片方じゃなくて両方着てみようかな?」
思い切ってそう決めた僕は誰の所に行く時に何を着て行くかを決めるためにルーレットを回す事にした。
「結果は華さん達のところにはヴァンパイア、薫さん達のところにはキョンシーで決定⋯⋯っと」
善は急げっていうのも変だけど、まずは薫さんの家に向かってみようかな?いなかったら諦めれば良いし!
♢
というわけで!薫さんの家にやってきたよ!
ピヨッターで家で作業してるって書いてたから多分いると思うんだけど⋯⋯
『ピンポーン』
ボクは薫さんの家のチャイムを鳴らすと、薫さんがボクを確認したのか、ドアを開けてくれた。
『薫お姉ちゃん、トリックオアトリート!』
「ゆ、優希くん!?トリックオアトリートって⋯⋯どうしよ、お菓子持ってないや今日⋯⋯」
『えっ!?』
「し、仕方ないよね、トリック、イタズラ、しても良い⋯⋯よ?」
『えっ』
これは予想外だよ!?
てっきり薫お姉ちゃんだったら何か持ってると思ってたんだけど!?
「⋯⋯優希くん?」
『はっ!?い、イタズラだよね!?』
「な、なんで私に聞くの!?」
『だ、だっててっきり持ってると思ってたから、イタズラなんて考えてなくて⋯⋯』
「ふふっ、優希くんらしいね。じゃあ優希くんが思うイタズラしても良いよ?」
『イタズラ⋯⋯』
そう言えば大分前に先輩とキスしちゃった時、薫お姉ちゃん、凄く慌ててたっけ。
『うん、薫お姉ちゃん、こっち向いてくれるかな?』
「ん?こう?」
『ちゅっ』
「えっ」
流石に恥ずかしいから直接は出来ないけど、これで許してくれるかな?キョンシーってお札があるから、そのお札越しのキスなら⋯⋯
「ゆ、優希くん⋯⋯?あれ?夢?」
薫お姉ちゃんは自分の頬をつねりながらボクを見つめている。
『⋯⋯そんなに見つめられたら恥ずかしいよ?』
「ゆめじゃない⋯⋯?」
『げ、現実だよ?』
「はにゃぁ⋯⋯」
『あれ?薫お姉ちゃん!?』
ボクがほっぺたにキスをしたせいで薫お姉ちゃんが倒れちゃった。
『どうしよう⋯⋯』
「ふわぁ⋯⋯あれ?優希くん?」
『あっ、由良お姉ちゃん!トリックオアトリート!』
とりあえず言っとけと言わんばかりに薫お姉ちゃんを一旦放置してゆらお姉ちゃんにも言ってみる事に。
「あー、優希くんトリックオアトリート!」
『あ、ボク持ってない⋯⋯』
「ふふふ、お菓子を奪おうとするなら奪われる覚悟をしておかないといけないんだよ!」
『うぅ、でも由良お姉ちゃんだって!』
「私は持ってるよ!」
『そ、そんなぁ!?』
「はい、クッキー」
『わぁい!』
「じゃあ、次は私のトリックだね」
『あ』
「お姉ちゃんが起きるまで私の湯たんぽになってもらおうかなー!」
『うぅ⋯⋯こんなはずじゃなかったのに⋯⋯』
それからボクは薫お姉ちゃんが目を覚ますまでの30分間、由良お姉ちゃんに抱きしめられ続けた。
『うぅ⋯⋯恥ずかしいよ⋯⋯』
「満足⋯⋯」
「由良⋯⋯ずるい⋯⋯」
「それは私のセリフだけど、お姉ちゃん」
「そ、そんなことは⋯⋯」
そして由良お姉ちゃんに目一杯イタズラ(?)されたボクは次なるターゲットに向かうことに。
『うぅ⋯⋯恥ずかしかった⋯⋯』
そんな気持ちも一旦リセットしつつ、一度家に帰って着替えを持って直接いまなんじの事務所に向かいはじめる。バスに少し揺られたらいまなんじの事務所に到着。
「よし、気分入れ替えて行くぞぉ!」
さっき着替えと一緒にお菓子も用意しておいたから、今度は大丈夫!⋯⋯たぶん。
♢
「こんにちはー」
いまなんじの事務所に到着し、受付で華さんのマネージャーさんに連絡を取ってもらうと、配信終了まで残り30分くらいらしいとの事で、更衣室を借りてヴァンパイアの衣装に着替えた僕は華さん達が配信を終わるのを待っていると、突然ドアが開いた。
『ふぇっ!?』
「あれ?ゆかちゃんだにゃ!」
「おや、本当だね⋯⋯ってなんだいその可愛い格好は⋯⋯襲って欲しいのかな?」
「繋、オメーは一体何を口走ってるにゃ」
「じょ、冗談に決まってるだろう?」
「オメーは信用ならねーにゃ。ゆかちゃんはウチが守るにゃ!」
「ま、まぁ、こんなとこであったのも何かの偶然だね、トリックオアトリート」
「ウチも一応トリックオアトリートなのにゃ!」
『二人ともトリックオアトリート!』
『「「はい、お菓子」」』
「って、流石にみんな持ってたかにゃ」
「ふふっ、これも淑女の嗜みさ」
『⋯⋯ふ、二人ともありがとう!』
「ウチのは、て、手作りなのにゃ!感想は今度聞かせて欲しいのにゃ!」
「うん、実はボクのもなんだ。まさかゆかちゃんに会えると思っていなかったから⋯⋯もう少し頑張って作れば良かったと後悔しているよ⋯⋯」
『ううん、でも凄く嬉しいよ!大事に食べるね!』
「そ、そう言って貰えると嬉しいよ」
「ウチも嬉しいにゃー!ゆかちゃんのお菓子も大事に食べるのにゃ!」
『あっ、そう言えばここ、更衣室だったね!
ボク、出て行くから使って大丈夫だよ!』
「わざわざ悪いにゃ⋯⋯それじゃまたコラボしようにゃ!」
「またね、ゆかちゃん」
『二人ともまたね!』
そしてボクは部屋を出て、華お姉ちゃん達の配信ルームの前で待機する事にした。
♢
「ゆかちゃんの香りがする⋯⋯良い気分だよ」
「繋、オメー⋯⋯一度あたま叩けば治るかにゃ?」
「その扱いは酷くないかい!?」
「自業自得だにゃ」
♢
「ふぅ、綾乃ちゃんお疲れ様でした」
「華もお疲れ様なの」
ハロウィンオフコラボ配信が終わり私と綾乃ちゃんは一息入れてから帰ろうと身支度を整え、配信ルームから出ました。
そして、配信ルームから出た瞬間、私の前に天使のような悪魔がいました。
『ふわりお姉ちゃん、なのお姉ちゃん、トリックオアトリート!!』
なんとそこには可愛い可愛いヴァンパイアのゆかちゃんがいました。
「「トリックで」」
勿論、私たちはトリック一択です。思わず声までハモってしまいました。
『ふぇ!?』
慌てるゆかちゃんもやっぱり可愛いですね。
それよりもどんなイタズラをしてくれるのでしょうか?
『う、うぅ⋯⋯もうヤケだよ!』
どうやらゆかちゃんも勇気を出したようです。
ワクワクが止まりません。
『ボク、ふわりおねーちゃんが欲しいな』
「くぅぁ⋯⋯」
『ふわりおねーちゃん⋯⋯ダメ?』
ゆかちゃんがこちらへ近付くと、頭を下げるように促されました。そして頭を下げると耳元でゆかちゃんがウィスパーボイスでそう囁いてきました。
これが⋯⋯リアルASMRですか⋯⋯
「ぷぇぇ⋯⋯」
「!?華!?どうしたの!?」
『ふふっ、次はなのお姉ちゃんだね⋯⋯』
「ふぇぇ⋯⋯なの⋯⋯」
『なのおねえちゃん、ボクと、一緒になろ?』
「な“⋯⋯ま、まだ戦えるの⋯⋯」
『無理しなくて良いんだよ?ボクと、一緒になったら⋯⋯シアワセになれるよ?だから⋯⋯』
優希くんがなのの耳元で息を吹きかけながら⋯⋯
『一つになろ?』
「なのおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!????」
『あっ、なのお姉ちゃんも死んじゃった』
そして、だれもいなくなった。
♢
「ふぅ⋯⋯酷い目に遭いました⋯⋯」
「幸せなのに辛いなんて初めての経験なの⋯⋯」
『あはは、やりすぎちゃったかな?』
「とりあえず私達も⋯⋯」
「「トリックオアトリート」」
『えっ?』
「お菓子は」
「持ってるの?」
『も、持ってきて⋯⋯あれ、ない?』
さ、さっきさくらちゃんと繋ちゃんに渡しちゃったのがラストだったんだ!?
「だったら⋯⋯」
「イタズラ⋯⋯なの」
『ふえええええええええええ!!!!!!』
その後優希が解放されたのは1時間後だったと言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます