266:ふわちゃんと筋トレオフコラボ!?(後編)

 配信が終わり、素の僕に戻る。


「ふぅ、華さんお疲れ様でした!」

「優希くんお疲れさま!」


 お互いにお疲れ様を言い合うと、僕は機材の後片付けを手伝う事にした。


「それにしても今回の配信はハードでした⋯⋯」

「本当です⋯⋯自分から言い出してアレなんですけど、これ系の耐久配信はもうしたく無いです⋯⋯」

「僕も安易にやらないようにします⋯⋯」


 そう振り返りながら片付けをしていると、あっと言う間に後片付けは終わってしまった。おしゃべりしながらだと時間が経つのが凄く早く感じるね。


「ふぅ、優希くん手伝ってくれてありがとうございました!」

「いえいえ!僕も使った機材ですし、これくらいは当然ですよ!」

「やっぱり優希くんは良い子ですねー」


 そう言いながら華さんは僕の頭を撫でてくる。


「むぅ⋯⋯子供扱いしないでください⋯⋯」

「あっ、ご、ごめんなさい!子供扱いしてるつもりは無いんですよ!?」

「そうなんですか?」

「もちろんです!」

「じゃあなんで頭を⋯⋯?」

「⋯⋯なぜか撫でたくなるんです」

「え、えぇ⋯⋯」


 皆、僕の頭を撫でてくる気がするんだけど、僕の頭に一体何があるんだろう⋯⋯


「あ、あと、その、優希くん良かったらなんですけど、夜ご飯にはちょっと早いかもですけど、ご飯食べていきませんか?」

「ご飯ですか?」


 いつも、ご飯に誘われる時はオススメのお店がーとか言われるからか、僕は少し違和感を感じた。


「うん、その、優希くんに食べてもらいたくて、練習したんです!」

「ぼ、僕の為にですか!?」

「もちろんです!しかも、優希くんの大好きなからあげですよ!」

「か、からあげ⋯⋯」

「材料は買ってしまったので、良ければ食べて貰えると嬉しいんですけど⋯⋯」

「そ、それなら、ご馳走になります!」

「わぁ!嬉しいです!腕によりをかけて作らせてもらうので楽しみにしていてくださいね!」

「⋯⋯そういえばここで作っても大丈夫なんですか?」


 僕がそう言うと、華さんはフリーズしてしまった。


「⋯⋯あ、わ、忘れてましたああああ!!!

 ここ、揚げ物禁止でしたああああ!!!」

「だ、大丈夫ですか?」

「⋯⋯うぅ、よし!

 もし優希くんが良ければ私のお家に来ませんか?」

「えぇっ!?華さんのお家にですか!?」

「わ、私のお家だったらちゃんとキッチンもありますし!?」

「と、と言うよりも⋯⋯良いんですか?色々と⋯⋯」

「ゆ、優希くんになら大丈夫です!それに綾乃ちゃんも何度も来てますし!お部屋は綺麗にしてますから!」

「そ、そういう問題ですか!?」

「私が見せて恥ずかしくないから大丈夫です!

 ⋯⋯というか来てください!!」

「じゃ、じゃあ⋯⋯お願い⋯⋯します?」

「こ、こちらこそ!」


 ちょっと変な雰囲気になりつつも華さんに案内されて、華さんの家に向かう事になった。



「着きました!それじゃあ鍵開けるので少し待っててくださいね」


 そう言いながら鍵を取り出して、家の鍵を開ける華さん。


「優希くん、どうぞ!」

「お、お邪魔します⋯⋯」


 華さんの家は、結構大きなマンションの一室で、華さん曰く、かなり防音に拘っているんだとか。


「一応綺麗にはしてるつもりですけど、汚れてたらごめんなさい⋯⋯」

「そんな事ないですよ!パッと見ただけでも凄く綺麗にしてるって分かりますよ!」

「そうですか?えへへ、優希くんに褒められるとなんだか嬉しいですね」


 嬉しそうにそう返事をする華さん。だけど、普段の配信の時と雰囲気が違ってなんだか、別人のように感じてしまう。


「とりあえず、玄関で話してても仕方ないですし、こっちの部屋で待っててくださいね!」

「は、はい!」


 そしてリビングへと案内された僕は華さんに促されてイスに座った。


「それじゃ、パパっと作っちゃいますから待っててくださいね!」

「えーと、僕も手伝わなくて大丈夫ですか?」

「⋯⋯魅力的なお誘いですけど、今日は私が一人で作った物を食べて欲しいので大丈夫です!」

「わ、分かりました!」


 華さんがそこまで言うのだから、僕は待つしか出来ない⋯⋯せめて大人しくして迷惑をかけないようにだけしないと!


「もし暇だったら、何かやりますか?」

「だ、大丈夫ですよ!」

「遠慮しなくても良いんですよ?」

「その、結構疲れもあって⋯⋯」

「なるほど!でしたら、そこのソファで少し眠ってても大丈夫ですよ?流石に2時間もかからないとは思いますけど、少し眠ればスッキリすると思いますから!」

「い、良いんですか?」

「大丈夫です!」

「寝ないとは思いますけど、少しソファに座らせてもらいますね!」

「はい!じゃあ私はご飯を作るので、ゆっくりしていてくださいね!」

「ありがとうございます!」


 そして僕はソファに座ると、一瞬で意識を持っていかれた。


「(このソファ⋯⋯気持ち良すぎるよぉ⋯⋯)」


 優希は知らなかったが、このソファは人をダメにするソファと言われていて、その心地よさに多くの人が即スヤを決めてしまうとまで言われている逸品だった。


 勿論、その誘惑を疲労が溜まった優希に耐えられる訳も無く、一瞬で意識を持って行かれてしまった。



 からあげを作る準備を始め、お肉をジューシーにする為にブライニングをしようと思い、お肉をブライン液に漬け込むと、少しだけ時間が出来たので優希くんの様子を見に行ってみたのですが、優希くんはソファですやすやと眠っていました。


「ふふっ⋯⋯優希くんは本当に可愛いですね⋯⋯

 食べちゃいたいくらいです」


 かと言ってそんなことをしたら捕まっちゃいますから、やらないんですけど。


「でも、少しくらい眺めているくらいは⋯⋯良いですよね?」


 私はブライニングをしている30分ほどの間だけ、眠っている優希くんを眺めて幸せな時間を過ごしました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る