250:ゆるママとバーチャルコミケ!②

 ゆるお姉ちゃんと謎のタワーへ近付いて行くと、そこにあったのは大量の同人誌の表紙だった。


『な、なにこれ⋯⋯凄い量だよ⋯⋯』

「こ、これは圧巻だね⋯⋯」


 ボク達は目の前の光景に目を奪われ、タワーを見つめていた。


「あっ、この人って⋯⋯」

『知ってるの?』

「うん、この人もV系の同人誌やイラスト描いてる人で、一回だけコミケで隣になった事あった気がする⋯⋯」

『す、凄い偶然だね⋯⋯』

「一応この人は健全絵描きだったはずだから、少し見てみよっか?」

『うん!』


 そしてブースに近寄ると、メニューが表示された。


『うわぁっ!? こ、こんな風に表示されるんだ⋯⋯びっくりしたぁ⋯⋯』

「いきなり視界一杯に埋め尽くされたからびっくりしたね⋯⋯」


 突然視界いっぱいに同人誌の表紙とタイトルが一覧で表示されて、その勢いにボクは思わずびっくりしてしまった。


「それにしても⋯⋯凄い数⋯⋯どれだけ描き続けたんだろう⋯⋯」

『あっ、ボクとふわりお姉ちゃんの本もある!

 ⋯⋯折角だし、買ってみようかな?』

「良いと思うよ? 私とゆかちゃんの本とか無いかな⋯⋯」

『流石にまだ早いような気もするけど⋯⋯どうなんだろ?』

「あっ、会場配布のコピ本だけどある!?

 わぁー、なんか嬉しいな⋯⋯結構安いし買っちゃお」

『コピ本?』

「あれ、ゆかちゃんはコピ本わからないかな?」

『うん、なんとなく聞いた事あるような⋯⋯ないような⋯⋯?』


 ボクがそう言うとゆるお姉ちゃんは折角だし教えてあげるね、とボクに言ってくれた。


「それでコピ本なんだけど、簡単に言っちゃえばコピー機を使って印刷した本、って言えば良いのかな? それをホッチキスとかで閉じた本当の意味で手作りの本って感じ」

『なるほど、コピー機で作るからコピ本なんだね!』

「そんな感じだね。 昔は意味が違った可能性もあるけど、私の頃はこっちの意味がメインだったから、あってると思うよ」

『今日もまた賢くなっちゃったね!』

「ふふっ、そうだね」

『ちなみにどんな本だったの?』

「ゆかちゃんと苺を一緒に食べるお話だって。

 ふふっ、本当にやった事あるんだけどね?」

『あの時のお店美味しかったなぁ⋯⋯』

「だね、そ、その、またいこっか?」

『うん!』


 そしてそんな話をしながら色々と周りのスペースを見てみると、本来のコミケに存在するジャンル分けが無いせいなのか、物凄く多様なジャンルが入り混じっている。


 某有名アイドルアニメや、某スクールアイドルのアニメ、船娘の同人誌に○方Projectの本、果てにはBLやGL、中には良く分かんないジャンルの物まで本当に多種多様で、見ていて飽きない。


「うーん⋯⋯色々ありすぎて迷っちゃうね」

『うん⋯⋯とりあえず、ボクの出てる本は何冊か買っちゃった!中身は読んでないけど、記念に!』

「どんな表紙の本かな?」

『これだよ!』

「おぉ、可愛い⋯⋯私も買おうかな?」

『ど、どうやって売ってたお店教えればいいのかな?』

「大丈夫! タイトルで検索して直接購入するよ! えっと⋯⋯これで、よしっと」

『おぉー! そんな事までできるんだね!』

「実際のコミケにあったら神機能なんだけど、現実とバーチャルの世界じゃ違いがあって当たり前かな⋯⋯」

『現実でもああやって気軽に空とか飛べたら楽しそうだなぁ⋯⋯』

「でも高すぎて怖い気もするかな?」

『た、確かに⋯⋯足が地面に着かないのは怖いかも⋯⋯』


 そんな話をしながらボク達のスペースへ帰って来ると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。


「あっ⋯⋯ごぷっ⋯⋯」

「あばばばばばっばばばばばばばっばばっっっばっ」

「死〜ん」

「止まるんじゃ⋯⋯ねぇ⋯⋯ぞ⋯⋯」

「びくっ! びくっ! ビクッ!」


 ボクのスペースの前で血を噴き出したり、泡を吐いたり、止まるんじゃねぇぞしてたり痙攣してたりと、とにかくカオスな光景だった。


『な、なにこれ⋯⋯』

「あぁ⋯⋯尊みの過剰摂取かな⋯⋯」

『ど、どう言うこと!? そ、そう言えばHaruお姉ちゃんと一緒にコスプレした時もこんな風になってたような⋯⋯』

「多分、その時みたいな感じだと思う⋯⋯でもなんでここで?」


 倒れた人達を横目に見ながらそんな話をしていると、次第に生き返ってきたのか、動き始める人も出てきた。


「⋯⋯試聴でこれとは恐れ入った。

 製品版を買わせて頂こう⋯⋯」

「ごぷっ! ごごごごぷ! ごぷぷぷぷ!」

『えっ、それが地声なの!?』

「最早日本語じゃ無いよ⋯⋯」

「俺は購入済みだからよ⋯⋯もう一回再生ボタンを押したら、止まるんじゃ⋯⋯ねぇ

⋯⋯ぞ⋯⋯」

『また死んだぁ!?』

「収拾つかなくなってるよ⋯⋯」

『と、とりあえずスペースに戻ろっか!」

「そうだね、話が進まないし⋯⋯そうしよっか」


 倒れている人たちは一旦無視して、ボク達は再びスペースに座り、今度は見に来てくれた人たちとお話しなんかをしながら時間を潰す事にした。

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