251:ゆるママとバーチャルコミケ!③
スペースに戻って来たボク達は、スペースにセットされている椅子に座ると、ゆるお姉ちゃんとお喋りしながら他のお客さんを待っていた。
今まで死にかけていたお客さんはASMRを買って満足したのか、そのままおぼつかない足を引きずりながらどこかへと向かっていった。
「あの動作どうやってるんだろう⋯⋯無駄にリアルなんだけど⋯⋯」
『そ、そう言われるとそうだね⋯⋯』
そして見送ったボク達の元に今度は可愛い美少女アバターの女の子2人がやって来た。
「これが噂のASMR売ってるスペース?」
「⋯⋯そのはず」
「確かにお店の人は可愛いけど⋯⋯見た目だけなら繕えるからなぁ⋯⋯ねぇねぇ、どんな声出してるんですか?」
女の子達はボクの前でようやく見つけたと言いながら話し始めると、ボクがどんな声を出すのかと急に声をかけられた。
『えっ? ボ、ボク?』
「えっ、やばっ、可愛いじゃん」
「待って、試聴あるけど⋯⋯どうする?」
「時間勿体ないし、買っていっちゃお」
「分かった」
「ん? 君達もゆかちゃんのASMR買いに来たのかい?」
そこに知らない男の人が現れ、ボクのASMRを購入すると、女の子達に話しかけた。
「この子ゆかちゃんって言うんですか?」
「知らずに来たの?」
「ヤバいASMRがあるって聞いて来たんですよ私達。 ASMR大好きで色々集めてて」
「なるほど、ちなみにこの子は男の子だから、脳を灼かれないように気を付けてね。 性癖歪むと大変だよ」
男の人がそう言うと、女の子達は目を見開きながら驚いた表情を見せた。
「えっ? 男の子?」
「えっ?」
『うん、そうだよ?』
「私はリアルで会った事があるから男の子なのは保証するよ」
ゆるお姉ちゃんがそう言うと、女の子達は速攻でボクのASMRを購入した。
⋯⋯それも今までの物全てを。
「リアル男の娘のASMR⋯⋯買わない手は無い!!」
「うちも買う!」
「あはは、手遅れだったか⋯⋯だったらきっと気に入ると思うよ」
「お兄さんありがとう! その情報のお陰で買う気がマシマシになったよ!」
「私からも感謝⋯⋯!」
『え、えーとお姉ちゃん達、ありがとう!』
「「うぐぁっ」」
「まーた尊死者出してるよゆかちゃん」
「まぁ、いつもの事だね」
「あっ、ゆるママさんもどうもです。
いつも尊いゆかちゃん絵ありがとうございます」
「こちらこそ、応援ありがとうございます」
「それではお邪魔しても何なのでこれで。
これからも応援してるので、二人とも頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます!」
『えへへ、リス兄ありがとう!』
「ぐふぉっ」
「『あっ』」
そしてまた一人、尊死の海の中にダイブしていった。
♢
それから結構な時間が経った頃、ようやくボク達のスペースも落ち着いて来た頃、とある人がやってきた。
「やぁやぁ、やっているみたいだね」
『そ、その声は⋯⋯繋ちゃん?』
「覚えていてくれて嬉しいよ、ゆかちゃん」
ボクが繋ちゃんに気付くと、嬉しそうな声を出しながら繋ちゃんはそう言った。
『ど、どうしてここに?』
「いや、ピヨッターで告知してたし、普通に遊びに来ただけだよ」
『そ、そうだったんだね!』
一瞬、どうやってここを? と思っていたら、そう言えばピヨッターで告知を出していることをすっかり忘れてしまっていた。
「そ、そこまで警戒されるとボクとしても少し悲しい物があるよ⋯⋯」
『ご、ごめんね?』
「いや、普段の配信での言動を考えてみて下さいよ⋯⋯」
「おや、ゆるママさん、作業は良かったのかな?」
「有償依頼の整理も終わりましたしね。
これからはゆかちゃんと、そ、そのデートでもしようかと」
『えっ』
「それは聞き捨てならないね、ボクも混ぜて貰えないかな?」
『「それはどうかと思う」かな⋯⋯』
「ハモっちゃって! ボクに仲の良い所見せ付けるつもりかい! くぅー! 羨ましい!!
ゆかちゃん! ボクともオフコラボを!」
『いきなり話が飛躍しすぎじゃないかな!?』
「いくら何でも唐突すぎると思うけど⋯⋯」
「だ、ダメ⋯⋯かい?」
『う、うぐぅ⋯⋯そ、そんな悲しそうな顔で言われても⋯⋯』
「や、やっぱりボクみたいな変わり者、ダメだよね⋯⋯」
そ、そんな悲しそうな顔と声でぼ、ボクを見つめないで⋯⋯ざ、罪悪感が凄いよ!
「やーっと見つけましたよー?」
「うげっ」
「はぁ⋯⋯繋は一体何をやってるの⋯⋯」
『あれ? ふわりお姉ちゃんとなのお姉ちゃん?』
突然繋ちゃんが上に持ち上げられたかと思ったら、そこにはふわりお姉ちゃんとなのお姉ちゃんの姿があった。
「やっほーなの」
「ゆかちゃんこんにちはー」
「二人ともこんにちは」
『お姉ちゃん達こんにちは!
それにしてもどうしてここに二人が?』
「なの達は個人でASMR音源やソロ曲の販売をしてたの」
「勿論、収益はちゃんと会社を経由しますけどねー?」
『そ、そんな事までやってたの!?』
「やればやるほどゆかちゃんにスパチャ出来るの」
「同じくですねー あっ、でもちゃんと貯金もしてるので、私は優良物件ですよー?」
「何ゆかちゃんを誘ってるんですか」
ふわりお姉ちゃんがそう言うと、ちょっとムスっとした感じでゆるお姉ちゃんがふわりお姉ちゃんにそう言った。
「抜け駆けは禁止なの」
「そ、それならボクだってお金なら⋯⋯っていうのはなんか人としてどうかもしれないね⋯⋯」
「そ、それは確かにですねー」
「私はそんな事言うつもりも無いけど⋯⋯」
「なのもそれはちょっと⋯⋯なの」
『な、何の話してるの⋯⋯?』
「ゆかちゃんはそのままのゆかちゃんでいて下さいー⋯⋯」
「ゆかちゃんはやっぱこうなの」
「ボクは、焦りすぎているのだろうか⋯⋯?」
「もうゆかちゃんカワイイヤッターって事で良いんじゃないですかね」
「「「「ゆかちゃんカワイイヤッター!!」」」なの」
『だから何の話してるのかな!?』
そして、そんなこんなでもうすぐイベント終了の時間が迫って来てしまった。
「ぐぬぬ⋯⋯これで帰らないとですかー」
「時間が欲しいの⋯⋯今日配信キャンセr」
「それはダメだよ、マネージャーに怒られてしまうよ?なの先輩」
「それもそうなの⋯⋯」
「それじゃ私達はここで、二人ともお疲れ様でしたー」
「ばいばいなのー、またコラボとかよろしくなの」
「じゃあね、ゆかちゃん。
コラボの件、す、少し考えてくれると⋯⋯嬉しいな」
『うん、皆お疲れ様!』
「三人ともお疲れ様」
「「「ばいばーい」」なの」
三人は声を合わせながらばいばいと言い、そのまま落ちて行った。
「えっと、ゆかちゃんはこの後、どうする?」
『うーん、ちょっと疲れちゃったかも⋯⋯』
「そっか、折角だから、ご飯とか、どう、かな?」
『確かに今作るのは面倒⋯⋯かも』
「気軽に行けそうなお店とか、どうかな?」
『うん! 折角のお休みだし、良いかも!』
「やたっ!」
『どこに集合すればいいかな?』
「ううん、どうせだから車で迎えに行くよ。
そんなに遠く無いし」
『良いの? お姉ちゃん辛く無い?』
「うぐぅ⋯⋯だ、大丈夫!」
そして、今から準備するから、着いたら連絡するねと言われて、ボクも準備をする為に一度落ちる事にした。
♢
「あ、あれ? よく思い出したら⋯⋯これって本当にデート⋯⋯?」
うっすらと記憶に薫さんが繋ちゃんに対して僕とデートするって言ってたような⋯⋯
気のせい⋯⋯かな?
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