249:ゆるママとバーチャルコミケ!①

 GWが始まって薫さんとの約束の日がやってきた。


 今日はオンライン上で行われるエアコミケと呼ばれたイベントがさらに発展したと言われるバーチャルコミケに遊びに行く事になっているよ。


 遊びに行くと言っても、VR上だから家から行くんだけどね?


 と、そんな感じで僕はHMDを装着して、VRコミケのワールドへと入って行った。



『ふぅ、ちょっと緊張するかも⋯⋯』


 ワールドに入ったボクは、初めてのバーチャルコミケの会場に緊張しながらも、楽しみだったのもあってワクワクしていた。


「あっ、ゆかちゃんおはよう」

『ゆるお姉ちゃんもおはよう!』


 会場に入り、フレンドの場所へ移動するを選択すると、ボクはゆるお姉ちゃんのいる場所に飛んだ。 移動した先にはゆるお姉ちゃんが既に待っていて、お互い挨拶をすると早速移動する事にした。


『うわぁー、大きいし、人も結構いるんだね⋯⋯!』

「思ってたより人がいるね⋯⋯でも現実と違って物理的に通り抜けられるから結構気にならないね」

『うん、そうだね! ただ人がいっぱいいるって言うあの圧迫感みたいなのはあるけど、暑苦しさというか、息苦しさみたいなのは無いからそれも助かるかも!』


 会場を歩いていると、人の声は聞こえるけれど、ぶつかったりすることも無くスルっと通り抜けられる。


 現実の会場と違ってコスプレエリアなんかも存在しなくて、広場があれば人が集まって思い思いに行動している。


 ジェットパックなんかを付けて会場を飛行している人も居て、かなりカオスな状況だけど皆楽しそう。


『それで、ゆるお姉ちゃんはどこか気になる場所とかあるのかな?』

「実はね、今日はどこか空いてる場所に出展しようかな、って思って来てみたんだけどゆかちゃんもよかったらやってみない?」

『でも、音源とかどうやって用意すれば良いのかな?』

「このソフトってパソコン経由で起動してるよね?」

『うん!』

「だったら、このソフト経由して音源のアップロードができるらしいから、やるだけやってみよっか。 それに実際のコミケと違って試聴やサンプルだけの試し読みも出来るから、結構売れる時は売れるらしいよ?」

『試聴もできちゃうの!?』

「実際のコミケには無い、いい所だよね」

『うん! ちょっとやってみたいな!』

「じゃあ早速、空いてる場所案内してくれる案内所行こっか!」

『うん!』


 そしてワープ機能を利用して、案内所へ移動したボク達は、空いているスペースを利用料を支払い借りると、そこへワープして商品を実際に展示する事にした。


「えーと、これ素材とか用意したらもっと飾れるようになったんだ⋯⋯惜しいことしたかも」

『ボクはCDで出した時の画像素材とかくらいしか無いけど、こんな感じで良いのかな?』


 ボクはゆるお姉ちゃんの隣のスペースを借りて、ゆるお姉ちゃんとは違う感じでスペースを飾り始めた。


 配置とかは、ベースになるアイテムや、フリーの素材などに立て掛けられる物なんかもあり、それでスペースを彩っていく。


 フリーの素材はどうしても地味なものが多くあまり目立たないけれど、汚くは無い感じには仕上がったからこんな感じで良いかな?


『よし! ボクはこんな感じで良いかな?』

「うん、私もいい感じ。 どうかな?」

『おぉ! 本が一杯並んでる!

 現実だとちょっとぶつかるだけで壊れそうなディスプレイでもこの世界だったら余裕なんだね!』

「かなり攻めたディスプレイにしたけど、インパクトは十分だよね」

『かなり凄いと思う!』

「ま、まぁ、あそこのラスボス感漂う展示には負けるけど⋯⋯」

『あえて見ないようにしてたのに⋯⋯』


 ゆるお姉ちゃんがそう言って指差した場所には本で出来た謎の建造物のようなスペース。


「でもちょっと気になるよね⋯⋯行ってみる?」

『えっ、スペース離れたら販売出来ないんじゃ⋯⋯?』

「あはは、そう思うけど大丈夫なんだよ」

『あっ、本当だ。 一部のスペース、人が居ないんだね⋯⋯』

「これが本当のコミケとの違いかもしれないね。

 人が居なくても販売できるし、データだけ抜き取られる事も無いし」

『これが本当のコミケで出来たら大変な事になりそうだね⋯⋯』

「多分自動販売機での販売とかになっちゃうかも?」

『それは風情が無さすぎると思うな⋯⋯』

「そこまで行くとコミケである必要性は無いもんね⋯⋯やっぱりコミケは作者とファンの人のコミュニケーションの場所の一つだと思うから、対面で出来る限りやりたいよね」

「まぁ、大手サークルになるとそれも難しくなっちゃうからそれも考えものだけど、売れた後とかにスケブ依頼とか来ると、今でも私は結構嬉しいかな」

『結構大変そうだったけど、そう言うものなの?』

「私の絵を見たくて来てくれる、それで喜んでくれる。 しかもそんな反応を目の前で見れるんだから絵師冥利に尽きるって物だよ。

 ゆかちゃんだって、自分の声とかで人が喜んでくれたら嬉しいでしょ?」

『うん、それは嬉しい! ちょ、ちょっと恥ずかしいけど⋯⋯』

「ふふっ、じゃあとりあえずあの謎のタワー見に行こっか!」

『うん!』


 そしてボク達はスペースを販売中に変更し、Pcのデスクトップからピヨッターを開いてここでスペースを開いたよ!と告知を出してから、謎のタワーを目指して歩き始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る