241:地獄のダンスレッスン
ダンスのレッスンが始まって数日が経つと、僕達も少し慣れて来て、それなりに形になってきた。
リサさんの教え方が上手なのもあって、みるみると上達していく自分の様子を映した動画を見ると、成長を実感出来て楽しく感じてくる。
「ふぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯先輩、お疲れさまでした⋯⋯」
「優希くんこそ⋯⋯お疲れ様⋯⋯」
「二人ともお疲れ様!」
「リサさん、今日もありがとうございました⋯⋯」
「ありがとう⋯⋯ございました⋯⋯」
僕と先輩は息も切れ切れといった様子でお礼を言うとリサさんはちょっとなんとも言えない顔をして僕達を見た。
「えーっと、言い辛いんだけどちょっと良いかな?」
「どうか、しましたか⋯⋯?」
「何ですか⋯⋯?」
「まだ約束の日まで結構あって、今日までのはまだ軽めのペースで慣れてもらうつもりだったんだよね」
「「へっ?」」
僕と先輩はそんな事を聞いて素っ頓狂な声をあげてしまった。
「つまりね、明日からが⋯⋯本番なんだ」
「これまでのが⋯⋯軽め⋯⋯ですか?」
「そ、そんな⋯⋯」
「いやー、私達の基準で考えてたから、運動慣れしてない人には厳しいスケジュールだってこと失念してたよ⋯⋯だから、頑張ってね」
ここで諦めたら、折角紹介してくれた橋本さんにも悪いから、頑張らないと⋯⋯
「が、がんばります⋯⋯」
「キツイですけど、頑張ります⋯⋯」
「出来る限りキツく無いように気を付けるけど、疲労に効くストレッチとかも一緒に教えるから自分の身体のケアもしっかりやっておいてね」
「は、はい!」
「了解です⋯⋯」
そしてそれから運動後に良いストレッチのやり方なんかを教えて貰った僕達は解散し、また明日の夜にここへ来る事になった。
♢
「ふぅ、今日も疲れたぁ⋯⋯」
僕は家へ帰るとささっとシャワーを浴びて布団に入った。
疲労感が強すぎてまともに今日は動ける気がしない。
「疲れたけど、身体を動かすとなんだかスッキリするなぁ⋯⋯普段家にいる事が多いしちょっといいきっかけだったのかも」
そんな事を思いながら、少し休憩していると体力が戻って来たような気がした。
「⋯⋯そう言えば配信全然やってなかったような気がする」
と言っても三日ほどだから、そこまで気にする人もいないだろうけど、生存報告も兼ねて少しだけ配信しようかな?
⋯⋯なんて考えていたら気付いたら朝になっていた。
「⋯⋯疲れてたんだよね、きっと」
そう思いながら布団から起き上がると身体中軽い筋肉痛で少しばかり辛かった。
痛み止めを飲んで学校へ行こうかとも考えたけど、今日からが本番だと思うと行く前に飲んだ方が良いような気がして来たから、少しだけ我慢する事にした。
♢
「お、おはよう⋯⋯」
教室に到着した僕はいつも通り裕翔に声をかけた。
「おう、優希おはよう⋯⋯ってどうしたんだ?」
「じ、実は今、ダンスのレッスン中で⋯⋯これが結構スパルタでね、筋肉痛が凄いんだよ⋯⋯」
「まさかの筋肉痛かよ⋯⋯とりあえず豚肉とか鶏肉食うといいぞ? あの辺筋肉痛に効くって言うからな」
「そうなの? 帰りに買って帰ろうかな⋯⋯」
裕翔から良い事を聞いた僕は帰りに豚肉か鶏肉を買って帰ると心に決めながら授業を受けた。
「疲れたぁ⋯⋯」
授業も終わり放課後になると僕はレッスンの準備もしないといけないから早めに家へ帰る事にした。
「ん、優希そんなに急いで珍しいな」
「あっ、裕翔お疲れ様!
今日もレッスンがあるから早めに帰らないとなんだよね!」
「あぁ、そう言えば言ってたっけか⋯⋯無理はすんなよ?」
「大丈夫、大丈夫!」
「んじゃ俺も部活あるから行くわ、気を付けて帰れよー?」
「うん! 裕翔こそ頑張ってね!」
「おう!」
そして裕翔と別れた僕は家へ着くとすぐに支度を始め、迎えが来る前に準備を済ませた。
準備が終わる頃に丁度連絡が来たから、外で待機して拾ってもらったらすぐにレッスンへと向かった。
♢
「はい、今日はここまでかな?」
「はふぅ⋯⋯も、もう限界⋯⋯で⋯⋯す」
「わたしも、むりかも⋯⋯」
「⋯⋯やっぱりこうなったかぁ」
踊りすぎで足腰の疲労がピークに達した僕達の足は、まるで産まれたての子鹿のようにぷるぷるとしていた。
「す、少し休めば大丈夫だと思います⋯⋯」
「わたしもすぐは動けなさそうです⋯⋯」
「それなら今のうちに軽いストレッチを教えておこうか」
リサさんはそう言うと僕達に運動後のストレッチのやり方を教えてくれた。
ストレッチで身体のケアは出来ても疲労感は消えないから、それでもクタクタになってるんだけど。
「ストレッチもこれで良しっと」
「「ありがとうございました⋯⋯」」
「二人ともお疲れ様。
まだまだ拙い部分はあるけれど、大分形にはなってきたね」
「本当ですか!?」
「そう言って貰えると頑張った甲斐がありました⋯⋯」
「後は時間の問題だから空いた時間に動画見るとかやってね? 頭に少しでも多くの情報を詰め込むの」
「「はい!!」」
そうして約2週間にも及ぶ地獄とも言えるレッスンが終わり、とうとうコスプレサミットの予選の日がやってきた。
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