237:白姫ゆりのお披露目配信

「とうとうこの日が来ちまった⋯⋯」


 四月ももう後半に差し掛かり、俺、姫村優斗は頭を抱えていた。 それもその筈、今日は白姫ゆりの新モデルのお披露目の日だからだ。


「ノリでやった事とはいえ、こんな事になるとは⋯⋯」


 そうは言っても配信をやっている最中は意外にも楽しくて、終わるまでは良いんだ。 ただ、始めるまでの間は物凄い憂鬱になってしまう。


「楽しいと思っている自分自身が怖いって言うのもあるんだがな⋯⋯」


 そして、もうすぐ配信の時間と言う事もあり、マネージャーと最終の打ち合わせをしているとふと、背後に視線を感じた。


「⋯⋯ん?」


 後ろを振り返ってみても、誰も居ない。


「気のせい⋯⋯か?」


 居たとしても希美だけだし、大丈夫だろう。



『皆様お久しぶりです、白姫ゆりでございます』


:きたあああああああああ!!!!!

:待ってた!!!!

:久々のゆりちゃんだあああ!!!

:信じられるかお前ら、これ、男なんだぜ?

:嘘だッ!!!!!


『ここまで良い反応をされるとなんとも言えない気分になりますね⋯⋯』


:皆、シュバルツさんの配信も好きだからね!?

:いじけるゆりちゃん可愛い

:ゆりちゃんかわいい!!!!!

:だから可愛いって言っても本人は複雑なんだって!!!でも可愛いよな


『⋯⋯良いですよー、どうせ私はゆかちゃんと同じバ美肉が似合う一族なんですよー』


:ゆり虐はやめろって言ったろ!!

:だってあのシュバルツさんがこうなるんだよ!!!???やるでしょ!!!????

:わからんでもない

:わかる


『はぁ、まぁ良いですよ。

 今日はお知らせがあったのでそろそろ本題に入らせて頂きますね』


:お知らせ?

:何だろ?

:気になります!!


『実は、新モデルがとうとう完成してしまったので、今日はそのお披露目なんですよ』


:完成してしまったwww

:してしまったって何ですかw

旋風のナイトハルト:ROMってようと思ったっすけど草を解禁してしまったっす

紫電の秋夜:先輩流石に草です

:二人も来て草

殲滅のエミリー:ゆかちゃんのそっくりさんになるデス?

:エミリーちゃんも来たwww


『はぁ、あなた達配信は良いんですか⋯⋯って今日の予定20時からになってるじゃないですか』


殲滅のエミリー:問題ナッシングデース!

旋風のナイトハルト:俺っち達は知ってたっすから

紫電の秋夜:先輩の晴れ舞台、見ない訳無いじゃないですか

:秋夜くん、なんか重い子化してない!?

:お前ッ!それ言ったらダメッ!!

紫電の秋夜:おや、どうやら仕舞われたい子がいるようですね

:ヒエッ

:ヒィッ


『とりあえずそこのヤンデレもどきは置いておいてですね』


紫電の秋夜:先輩⋯⋯?酷いですよ⋯⋯?

:なんかガチ感出るのやめてくれwww

:ネタなのは分かってるけどさぁw

:そ、そうだね!!!

:期待してるやついなかったか?


『あんまり勿体ぶっても仕方ないですし、ささっと発表しちゃいましょうか』


:きたああああ

:楽しみ!

:わーい!!!!

:ゆりママの真の姿!!!


『だからゆりママはやめてくださいって!』


:ママァァァァァァァ‼︎‼︎

:おぎゃああああ!!

:おぎゃあ

:ばぶううううううう


『とりあえずヤバそうな人たちは放っておいって新モデルに着替えますね』


:しょぼん

:これが放置子ですか

:放置子は草

:モデルって着替える物なのか...?


『それじゃあ行きますよー』


:はーい

:はーい!


 そして”私“は新モデルに切り替えると、画面には今まで使っていた汎用モデルは無く、白姫ゆかの顔立ちを大人にしたような清楚な美人が現れた。


:綺麗だ⋯⋯

:可愛いって言うよりも美しい⋯⋯

:衣装は和服かと思ったら今回は違うのか

:ゆかちゃんが黒のドレスがメインだからドレスかそのまま和服かと思ったのに⋯⋯


 視聴者の言う通り、今回の衣装は和服では無く、普通の洋服。

 フリフリな物では無く、大人びた印象のシックな黒をメインとしたクロークに白がメインの百合の花があしらわれたミディスカートとシンプルな格好。


柿崎ゆる:ゆかちゃんのパパがママになると言う事でママみを強めてみました、追加衣装は可愛い系もありかなと思います!

:ゆるママGJ‼︎‼︎‼︎

:ゆるママ流石!

:良い仕事しますねぇ!!


『うぅ、またママ言われました⋯⋯』


:諦めて、どうぞ

:ゆりママァァァァァァァ!


『とりあえず、これで義務は果たしました!

 普段通りの配信に戻しても良いですよね!?』


Vライブマネージャー:だめです

:草

:草

:草

:草

:草


『鬼ですかぁ!?』


Vライブマネージャー:シュバルツさんのお姉さんボイスが聴けるなら鬼にだってなってやりますよ!!!!!!

:マネージャーwww

:欲望隠せwww

:お腹痛いwww

:流石Vライブ、ライバーもだけどマネージャーもおかしいwww


『鬼でした⋯⋯』


:草

:草

:草


『まぁ今に始まったことでは無かったですね⋯⋯とりあえずマシュマロ消化していきましょうか⋯⋯どうせママネタで一杯でしょうけど⋯⋯』


:良くお分かりでw

:それ以外無いだろうね今はw

Vライブマネージャー:私も送りましたよ!

:マネージャーwww


 そんな感じで配信は進んで行き、配信は大盛り上がりを見せて新モデルのお披露目は終わった。


「ふぅ⋯⋯」


 配信が終わり一息ついた俺は、飲み物でも取りに行こうかと思い椅子から立ち上がった。


「あっ⋯⋯」


 ドアへ身体を向けると、そこにはカメラを構えてニヤニヤしている希美の姿があった。


「希美⋯⋯何をやってるんだ⋯⋯?」

「ほ、ホームビデオの撮影、ですかね?」

「まさかさっきの配信全部⋯⋯?」

「そ、ソンナコトナイデスヨー?」

「絶対やってるよな!?!?

 恥ずかしいからマジでやめてくれ!!!」

「恥ずかしがってる優斗さんも可愛いですねぇー」

「だめだ希美もマネージャー達と同類だった!!??」



「あっ、お父さん知らない間に新モデル発表したんだ⋯⋯」


 切り抜きがピヨッターやYouTubeに投稿されているのを見た僕はお父さんの今日の配信の大体の内容を理解した。


「皆からママ、ママ言われてるお父さんなんだかシュールで面白いかも⋯⋯そうだ!」


 せっかくだから、新モデルのお父さんと一緒にコラボなんかしても面白いかも!早速連絡してみよう!


 その後優希から連絡を貰った優斗はまた頭を抱えることになったとか、なってなかったとか。

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