232:先輩からもお祝いが!?

「あっ、優希くんおかえり」

 僕が部屋の前に着くとそこにいたのは先輩だった。


「先輩⋯⋯? どうしてここに?」

 僕は思わず先輩にそう聞いてしまった。


「んー、どうしてって言われても困っちゃうんだけど、今日って優希くんの誕生日でしょ?

 折角だからお祝いに来たんだ」

「え、えっと、ありがとうございます⋯⋯」

 余りにも突然の事で驚きを隠せない。


「と、とりあえずあがっていきますか!?」

「えっ、い、良いの!?」

「外でって言うのも近所迷惑になっちゃうとあれなので⋯⋯」

「じゃあお邪魔させてもらおうかな?」

「は、はい!」

 僕は急いで部屋の鍵を開けると先輩を部屋に入れた。


「おじゃまします⋯⋯」

 先輩はそう言いながら玄関に入ると、周りをキョロキョロとし始めた。


「凄く綺麗にしてるんだね」

「あんまり汚い部屋は好きじゃないので暇な時とかにパパッと掃除とかしてるんですよ!」

「なるほど⋯⋯流石、女子力高いね」

「先輩!?」

「ふふっ、冗談だよ冗談」

「むぅ⋯⋯」

「あっ、怒っちゃった⋯⋯?」

「そんな事ないですけど⋯⋯」

「ごめんね、優希くんとお話出来て嬉しくてつい⋯⋯」

「そう言われると怒るに怒れないです⋯⋯」

 先輩の言い方はなんだかずるい⋯⋯


「あっ、そうだ。

 スリッパあるので出しますね!」

「あっ、ありがとう!」

 そう言って僕はなかなか出す機会の無かった新品のスリッパを開けて先輩に渡した。


「⋯⋯ねこさんスリッパ」

「先輩? どうかしました?」

 僕がそう聞くと先輩は少し焦った様子を見せた。


「ううん、何でもないよ!?」

「なら良いですけど、てっきりサイズに問題あるかと思いました⋯⋯」

「ほんとに大丈夫! 大丈夫だからね!」

「あはは、先輩焦りすぎですよ」

「う、うん⋯⋯じゃあ改めておじゃまします!」

「じゃあこっちの部屋で⋯⋯」

 そう言ってリビングに先輩を案内して、テーブルの椅子を引いた。


「先輩、どうぞ!」

「う、うん。 ありがとう」

「とりあえず、何かお茶でも飲みますか?」

「あっ、だったら良いもの持ってきたんだ!」

 そう言って先輩は来る時に手に持っていた紙袋を僕に手渡した。


「はい優希くん、お誕生日おめでとう!」

「あっ、ありがとうございます!」

 誕生日プレゼントと言って渡された紙袋の中には僕の大好きなあの果物の絵が描かれていた。


「これって⋯⋯」

「優希くんって苺が大好きでしょ?

 だから苺に関するお菓子とかの詰め合わせだよ。

 それと前わたしが飲んで美味しかった苺のフレーバーティーも一緒に入ってるよ」

「苺のフレーバーティーですか!?」

「うん、美味しかったからおすすめだよ」

「じゃあ折角なのでそれを淹れますね!」

「良かったら場所貸してくれたらわたしが淹れるよ?」

「先輩は気にせずに座っててください!」

「う、うん⋯⋯」

 僕は先輩にそう言うとキッチンへ行き、フレーバーティーを淹れる準備を始めた。


 鍋を一つ使ってお湯を沸かしてポットとカップを温めている間にケトルでお湯を沸かす。

 そしてポットとカップが温まったら二杯分の茶葉をポットに入れて沸騰したお湯を入れる。

 大体三分ほど蒸らしてから中をスプーンで一回くるっと混ぜてから準備しておいた砂糖などを持って先輩の待つテーブルへ持って行くよ。


「先輩お待たせしました!」

「優希くんありがとう、って凄い本格的だね⋯⋯」

「折角なので手の込んだ淹れ方しました!」

「ありがとう、味も気に入ってくれると嬉しいんだけど⋯⋯」

「じゃあカップに入れますね!」

「ありがとう」

 先輩のカップに茶こしで茶葉が入らないように丁寧に淹れると、ふわっと苺の良い香りが広がった。


「ふわぁ⋯⋯良い香りですね⋯⋯」

「香りだけで良い反応してくれるね優希くんは」

 先輩が僕の顔を見てそう言うと、少し恥ずかしくなってしまった。


「お、お砂糖必要だったらこれ使ってくださいっ!」

「ふふっ、照れてるのかな?」

「そ、そんなことないです!」

「そう言う事にしておこうかな」

 先輩が意地悪な顔をしてそう言った。

 絶対照れてるのバレたよねこれ!


 そして紅茶を淹れ終わった僕は少しだけお砂糖を入れようとした時にふと、思い出した。


「あっ、そうだ」

「ん? 優希くんどうかしたの?」

「ちょっと待っててください!」

 僕は冷蔵庫に行くと、一昨日作ったお菓子が残っていたから冷蔵庫からそれを取り出して先輩にも出すことにした。


「先輩、お茶菓子にこれどうぞ!」

「これはシフォンケーキ?」

「はい! 少し前に練習で作ってみたんですけど、結構美味しく出来たんですよ!」

「ゆ、優希くんの手作りケーキ⋯⋯」

「それじゃいただきます!」

「い、いただきます!」

 僕はシフォンケーキを一口食べると、すぐに紅茶を一口飲んだ。


「ふぁぁ⋯⋯苺の良い香り⋯⋯」

「あっ、シフォンケーキ美味しい⋯⋯」

「やっぱりこう言うお菓子には紅茶ですよね!」

「う、うん。 そうだね」

 それからケーキを食べ終わると、残っている紅茶を飲み干した。


 苺の香りが最後まで楽しめて本当に良い発見、先輩に感謝だね!


「ごちそうさまでした!」

「優希くん、ごちそうさま」

「いえいえ! 先輩も紅茶ありがとうございました! 凄く美味しかったです!」

「わたしも喜んでくれて嬉しいよ」

 先輩がそう言うと、時計で時間を見て先輩は少し慌てた様子になった。


「あっ、いけない。

 そろそろ帰らないと⋯⋯」

「何かあったんですか?」

「一応門限があるからそろそろ帰らないと⋯⋯ね」

「なるほど⋯⋯」

「(もういっその事一人暮らししちゃおうかな⋯⋯そうしたら優希くんの部屋の近くとかに引っ越したらもっとお話出来るんじゃ⋯⋯)」

「先輩?」

「な、何でもないよ!

 あっ、そうだ帰る前に聞きたかったんだけど、前言ってたコスプレのやつだけど、採寸とかまたしたいから優希くん近いうちに時間作れたりしないかな?」

「えっと、都合の良い日教えてくれたら合わせますよ?」

「うーん、だったら⋯⋯

 に、日曜日のお昼くらいからとか、どうかな?」

「お昼からだったら大丈夫ですよ!」

「良かった、じゃあ今週の日曜日にまたここに迎えに来るからね」

「はい!」

 先輩はそう言うと帰る支度を始めた。


「よし、それじゃ優希くん改めてお誕生日おめでとう、シフォンケーキもありがとね!」

「いえいえ! 僕こそありがとうございました!」

「それじゃあ“また”日曜日にね!」

「はい! 先輩おやすみなさい!」

 そして先輩が部屋を出て行くと、僕は寝支度を始めた。


 みんなからいっぱいプレゼントを貰っちゃって、今年の誕生日はなんだか特別な一日だった気がするね。


 ちなみに、再び優希と約束出来た事に嬉しくなった遥はルンルン気分で家へ帰っていったのだとか。

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